「「黒人のミレニアル世代」に特化したメディア「Blavity」の舞台裏」の写真・リンク付きの記事はこちら

オバマ政権初期、モーガン・デボーンがセントルイス・ワシントン大学の学生だったころ、彼女と数人の友人はよくキャンパスのカフェテリアの決まったひとつのテーブルにいた。ほかのテーブルが長く四角かったのに対し、それは大きな丸テーブルで、彼女たちにとっては、どんなテレビ番組を見ているか、どんな音楽を聴いているか、世間やキャンパスでどんなことが起きているかなどを話して過ごすのにうってつけの場所だった。

白人が多いキャンパスのなかで、彼女たちは数少ない黒人学生であり、そのテーブルは神聖な祝賀の場になった。やがて、ほかの黒人学生たちもふらふらと集まってきて、会話に加わり始めた。それはほとんど引力のように感じられた。デボーンは、黒い引力(black gravity)だと考えるようになった。

ユーザーによるユーザーのためのジャーナリズム

これは6年前のことで、デボーンはいま「ミレニアル世代の黒人のためのBuzzFeed」と称される設立3年目のメディア・テクノロジー企業BlavityのCEO、共同設立者である。LAのオフィスに17人の常勤スタッフを擁するBlavityは「トレイヴォン・マーティンからアルトン・スターリングまで──決して乾かぬ涙」や「なぜ『アトランタ』はいまテレビで最も真に現代的な黒人体験なのか」というような記事を発表している。

サイトの核になっているのは、デボーンが大学の丸テーブルで見つけたコミュニティだ。「わたしたちの読者は話すのが好きなんです」と彼女は言う。「『ビヨンセがアルバムを出した』と言うだけでは物足りない。それについて話し合いたいんです。では、そういうやり取りをわたしたちはどうやって手助けできるでしょうか?」

彼女の戦略のひとつは、ユーザーが作成するコンテンツに頼ることだ。サイトの記事や動画のおよそ60%が、読者が投稿し、のちにBlavityのスタッフが編集したものである。デボーンにとって、これは読者を編集プロセスに招き入れた単なる無料コンテンツではない。ターゲットユーザーによってつくられる、ターゲットユーザーのためのジャーナリズムなのである。

「InstagramやTwitterで最高のコンテンツを生み出しているのはたいてい黒人です」と彼女は言う。「Blavityでわたしたちは、そのクリエイティヴィティを披露するプラットフォームを築いたのです」

ドナルド・トランプの選挙戦勝利後、人種差別的なメールがペンシルヴェニア大学の黒人学生に次々と送られたとき、Blavityは、たとえば、『フィラデルフィア・インクワイアラー』(スタッフの86%が白人)の報道にリンクしたり頼ったりしなかった。代わりに、「ペンシルヴェニア大学のレイシズムを考える──最前線からの行動の要請」という記事を発表した。

これは同大学の黒人文化センター所長が書いたもので、事件とその余波について現場から見た詳細が綴られていた。「黒人は制度レヴェルで攻撃を受けています」とデボーンは言う。「Blavityが尺度をもち、彼らの話を広められるというのは、本当に大きなことでしょう。特にいまは」

テクノロジー業界で働く黒人のためのサミット「Afrotech」を2016年11月にサンフランシスコで始めたBlavityは、ジャーナリズムと同様に有色人種がひどく軽視され続けている別のコミュニティにも活動範囲を広げている。デボーンと、成長を続けるBlavityのチームは、もうひとつの未来を頭に描いている。

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