「ETC2.0」、何ができる? 導入には数万円 料金支払いだけでないメリットは?
「ETC2.0」は、高速道路料金の支払い機能だけでなく、さまざまな情報が提供されたり、一部の路線で料金が割引になったりします。そのサービスはどのようなもので、サービスを受けるにはどうしたらいいのでしょうか。
運転支援サービスが受けられる
高速道路料金所におけるETCレーンのイメージ。「ETC2.0」には、料金支払いだけにとどまらないさまざまな機能がある(画像:写真AC)。
大きな特徴は、従来のETCが高速道路の料金支払いのみに特化していたのに対し、「ETC2.0」ではカーナビやスマートフォン、あるいは「ETC2.0」車載器の発話機能を通じ、渋滞回避支援や安全運転支援といった運転支援サービスが受けられることです。
これらの情報は、全国の高速道路および一般道路上約1600か所に設置されている「ITSスポット」と呼ばれる装置から、クルマに自動的に送信されます。たとえば、行く先に渋滞がある場合に、それを回避するルート案内が提供されます。
最大1000kmぶんの道路交通情報から最適ルート提示
カーナビなどに提供されている「VICS」(道路交通情報通信システム)の渋滞情報はこれまで、都道府県単位の情報しか受信できなかったため、都道府県境をまたぐルート検索で目的地付近の渋滞情報が反映されないことがありました。しかし、この「VICS」情報の伝達方法に「ITSスポット」が加わったことで、「ETC2.0」対応車には最大でおよそ1000kmぶんの道路交通情報が提供されるようになりました。より広域な道路網のなかから最適なルートが割り出されるほか、渋滞回避ルートの簡易図、道路上から撮影した渋滞箇所の状況画像なども表示されます。
「ETC2.0」対応機には、渋滞情報や運転を支援するための情報が音と画像で提供される(画像:国土交通省)。
前方の事故多発地点や急カーブ、落下物などの存在も画像と音声で伝えられるほか、高速道路を走行しているあいだに災害が発生した場合には、そのとき取るべき行動や、通行可能なルートなどが案内されます。また、高速道路SAや「道の駅」に設置されている「ITSスポット」付近では、周辺の観光情報なども提供されます。
高速道路の料金割引、「街なか」での料金決済も
現在、「ETC2.0」搭載車は、圏央道を約2割引きで利用できます。たとえば平日の日中に神奈川県の海老名IC(神奈川県海老名市)から埼玉県の白岡菖蒲IC(埼玉県久喜市)まで圏央道を利用した場合の料金は、通常で3070円、ETC利用で2850円、「ETC2.0」利用で2590円です。この圏央道における「ETC2.0」限定の割引について、国土交通省は次のように話します。
「都心を避けた圏央道への迂回を政策として促進していることと、『ETC2.0』の普及促進というふたつの観点から実施しています。現時点では、この割引の他路線への適用は未定ですが、『ETC2.0』によって走行経路の把握が可能になることから、目的地までの道路状況に応じてルートを選択することで、料金に流動性を持たせることも検討しています」(国土交通省高速道路課)
従来の渋滞情報の提供範囲と、「ITSスポット」による提供範囲のちがい。画像はイメージ(画像:国土交通省)。
今後さらに、「ETC2.0」の走行経路情報を活用し、高速道路を走行中に渋滞を避けたルートを通行した際に、利用料金が割引になる制度や、前方が通行止めの場合にICをいったん出て一般道に迂回し、再度高速道路に進入した際に、連続した走行とみなされる措置などの導入も予定されています。国土交通省はすでに、「ETC2.0」搭載車が高速道路から一般道の「道の駅」など休憩施設への一時退出を可能とする試行を、関越道の高崎玉村IC(群馬県高崎市)で2017年5月27日(土)から開始しています。
また道路だけにとどまらず、駐車場や、飲食店のドライブスルー、ガソリンスタンドなどでの料金を、「ETC2.0」で決済できるサービスなども登場すると、国土交通省ウェブサイトで公表されています。
利用するには何が必要? 費用は?
「ETC2.0」のサービスを受けるためには、「ETC2.0」に対応した車載機を導入する必要があります。車載機には、各種情報がカーナビに表示される“カーナビ連動型”、車載機のスピーカーで音声のみ情報サービスを受けられる“発話型”、そして「ETC2.0」対応アプリをインストールしたスマートフォンと連動するタイプがあります。
カー用品店「オートバックス」を運営するオートバックスセブン(東京都江東区)によると、車載器の価格帯は「おおよそ2万円前後円から、4万円台中盤くらいです。車載器単体で利用できる発話型のものと、カーナビ連動型が人気です」といいます。
車載器の購入と同時に、ナンバープレートなどの車両情報を暗号化して車載機に登録する「セットアップ」作業、そしてその車載器をクルマに取り付ける作業も必要です。
「セットアップ費用は、『オートバックス』全店一律で税別2850円、取り付け工賃は店によっても異なってきますが、およそ5000円です。カーナビと連動させる場合、既存のカーナビを一度取り外して車載器とつなぐため、さらに取り付け工賃がかかるので、車載器とカーナビの同時購入がおすすめです」(オートバックスセブン)
なお、2014年に「ETC2.0」に名称統一される以前の、「DSRC」「ITSスポット」マークが記載された車載器でも「ETC2.0」のサービスを利用することができますが、2015年6月30日以前にセットアップしている人は、再セットアップが必要です。
高速道路の渋滞情報、「ETC2.0」でないと表示されなくなる?
現在、高速道路で提供される「VICS」の渋滞情報はおもに、道路上に設置された旧来の2.4ギガヘルツ帯電波ビーコンと、「ITSスポット」を通じてクルマへと伝達されていますが、前者については2022年3月いっぱいでサービスが終了する予定です。VICSセンター(道路交通情報通信システムセンター)によると、「2022年4月以降、高速道路上では『ETC2.0』非対応のカーナビでは、VICSによる渋滞情報が表示されなくなる」といいます。
導入に費用がかかり、高速道路料金以外の決済機能など「ETC2.0」ならではの機能も一部まだ利用できない状況ですが、今後、そのメリットはより広がっていくかもしれません。
【画像】街なかにも利用範囲が広がる「ETC2.0」
ガソリンスタンドや駐車場での料金決済なども、「ETC2.0」で可能になる予定。画像はイメージ(画像:国土交通省)。