高齢運転者が運転免許更新の際に受ける「認知機能検査」、実際にはどのような内容なのでしょうか。

高齢運転者の免許更新が厳格に

 2017年3月12日(日)から道路交通法が改正されたことによる運転免許制度の変更にともない、75歳以上の高齢運転者の免許更新がより厳格になります。

 かんたんに言ってしまえば「認知機能検査」で成績が悪いと、専門の医師による診断が必要になり、そこで認知症と診断されると運転免許取り消し・停止となるようになりました。75歳以上の人に対する免許更新時の認知機能検査は従来から実施されていましたが、これまでは注意喚起にとどまっており、成績が悪くても免許の更新は可能でした。しかし、これからは、そうはいかなくなるのです。


2017年3月からの新制度において75歳以上の運転者は、認知症と診断された場合、運転免許の更新ができなくなる(警察庁の資料をもとに乗りものニュース編集部で作成)。

 ポイントは認知機能検査です。

 このテストで76点以上を獲得できれば、「記憶力・判断力に心配ない者」となり、49〜75点で「記憶力・判断力が少し低くなっている者」と判定されます。そして、48点以下になると「記憶力・判断力が低くなっている者」として、医師の診断が必要になってしまいます。つまり49点以上、ざっくり半分以上を正解できないといけません。

 では、実際に認知機能検査とは、どのようなものなのでしょうか。誰もが簡単にクリアできるのか。それとも意外に難しくて、年輩の人が苦戦してしまうようなものなのでしょうか。

認知機能検査、その中身とは?

 実のところ、認知機能検査の内容は公表されています。警察庁のサイトをチェックすると、テスト用紙さえ公開されています。それを見てみると、テストは3部構成となっていました。「時間の見当識の点」「手がかり再生の点」「時計描写の点」のみっつです。

「時間の見当識の点」は、現在の時間をどれだけ認識しているかを問われます。「手がかり再生の点」は記憶力。そして「時計描写の点」は実際に時計を描くというテストです。そして、このみっつの中で、約6割の点数を配分するのが「手がかり再生の点」です。

 最も比重が置かれている「手がかり再生の点」ですが、具体的にはどのようなテストなのでしょうか。以下は実際に出題されている内容です。厳密にいえばほかのふたつのテストで挽回することも可能ですが、75歳以下であればここで軽々と合格ラインを超えておきたいところです。


認知機能検査「手がかり再生の点」の出題イラスト、全部で4パターンあるうちのひとつ。左上、右上、左下、右下の順で提示される(画像:警察庁)。

 まず、この画像に示したような、1枚に4点の絵が描かれたパネルが4枚提示されます。実際のテストでは、パネルは1枚ずつ提示されます。このパネル1枚につき1分で絵柄を覚えてください。そして、数分間(おおむね2分)の時間をおいたら次に進んでください。

若年層でも意外と苦戦するかも?

 次に、16枚の絵がなんだったか、すべてを答えてください。答える順番は問いません。制限時間は3分です。

 続いて、ヒント(手がかり)のある中で、16の絵柄を思い出してください。画像に示したように、解答用紙にヒントが記載されています。こちらも制限時間は3分です。


認知機能検査「手がかり再生の点」の、ヒントが記載された解答用紙(画像:警察庁)。

 そして答えあわせです。ヒントなしでの正解は2点。ヒントありでの正解は1点。ヒントなしで正解している問題は、ヒントありで正解しても加点なしです。これで最高32点となります。本番の検査では、これに1.94の係数をかけて、100点中の62.08点として取り扱われます。

 正解率が半分以下であれば、「記憶力・判断力が低くなっている者」になってしまう可能性大。貴方は免許を返上しなくても大丈夫でしょうか。

 いずれにせよ、75歳以上になれば、このようなテストを受ける、もしくは受けていることを知るのは損にならないでしょう。逆にいえば、これからの75歳以上のドライバーは、このようなテストをクリアしているということ。運転に支障のあるドライバーが排除されるということで、高齢ドライバーの信用度も高まることになるでしょう。

【画像】「もみじ」と「よつば」


高齢運転者標識。2011年2月より、それまでの通称「もみじマーク」(左)から、通称「四つ葉マーク」へ変更された(警察庁の資料をもとに乗りものニュース編集部で作成)。