話題作の陰に真野恵里菜あり! ハロー!プロジェクト卒業から4年、走り続けて切り拓いた女優の道
「そろそろ、新しいスニーカーを買わなくちゃ…」。最近、ハマっていることは? という問いへの、真野恵里菜の答えは筋トレ、ランなどによる「体づくり」。それに続けて冒頭の言葉をつぶやいたのだが、ハロー!プロジェクト(以下ハロプロ)を卒業して、まもなく4年。女優業を活動の中心に据え、全力で走り続けてきた彼女を象徴している言葉のようにも思える。映画、ドラマ、舞台への出演を積み重ね、“元アイドル”という枕詞が必要のない“女優”としての地位を確立した。映画『君と100回目の恋』でも、これまでにない役柄で、演技の幅の広がりを見せてくれている。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



恋する等身大の女子大生役に、喜びと不安…?



――映画では、時間を遡ることができる不思議なレコードを持つ長谷川 陸(坂口健太郎)と、その幼なじみの日向葵海(あおい/miwa)の純愛、仲間たちとの青春模様が描かれます。最初にオファーが届き、脚本を読んだときはどのような印象を持ちましたか?



原作ものの映画が多いなかで、完全オリジナル脚本の作品に携われることにワクワクしました。当然、何も知らない状態で脚本を読み進めていくんですが、「え? 嘘でしょ!」「どうなるの…?」って感じで、あっというまに読み終わり、すぐにもう一度、読み返しました。

――物語に引き込まれた?

時間を戻れるというのも面白いし、そこで運命を変えようとするとどうなるのか…? 「あぁ、なるほど!」と思わされたり、すごく魅力的な物語でした。

――真野さんが演じたのは、葵海の親友の相良里奈ですね。陸や葵海と一緒にバンドを組んでいる松田直哉(竜星 涼)に想いを寄せていて…。

でも、直哉は葵海を見ていて…という、ちょっと切ない恋をしていて、こういう役はいままでなかったんですよね。ちょっと変わった役を演じることが多かったので(笑)、私で説得力があるのかな? 等身大の女子大生をナチュラルに演じられるのかな? という不安もありました。



――実際に演じられてみて、ご自身に近い部分は見えてきましたか?

けっこう、私に近いって思いましたね。私も里奈のように、友達に思ったことを言っちゃうんですよ。里奈が「陸とこのままでいいの?」と葵海を煽るようなことを言うんですけど、同じようなことを友達に言ったことがあって(笑)。私って、こういう性格なのか! と気づかされました。

――葵海を強気で煽る一方で、自分の直哉への想いに関しては…。

いざ、逆に葵海から直哉のことを言われると照れちゃうんですよね(笑)。お姉さん的な雰囲気で、普段は強がって大人ぶってるけど、実は女の子なんだなって。そういう、ギャップやかわいらしい雰囲気も出せたらいいなと思いながら演じていました。



――意外な気もしますが、こういう等身大の恋、甘酸っぱい青春物語に当事者として参加することは、これまであまりなかったんですね。

これまでは、想いを寄せているけど、嫉妬に狂っちゃったり、恋敵とか悪役的な立ち位置が多かったり…(苦笑)。こういうピュアな感じがなかったので(笑)、うれしかったです。私にもこういう役が来るんだ! って。

――映画では、セリフではなく、ちょっとした表情や仕草で里奈や葵海たちの愛情や不安など、心情が伝わってくるのが印象的でした。

目線で見せたり、バンドメンバーの中村鉄太(泉澤祐希)だけが里奈の気持ちを見抜いていたり。言葉にしない感情のやり取りが切なくもあり、面白いですね。 直哉に「里奈、(ライブの)看板いいじゃん」ってほめられて、うれしいのに直哉の前で変に女の子っぽくする自分がイヤで、そっけない態度で返すムズがゆさとか…勉強になりました!(笑)



――先ほど、ご自分と近いとおっしゃっていましたが、どのように里奈を作り上げていったんですか? 軸となったものや、ご自身の経験はありましたか?

葵海の存在が大きかったですね。葵海の明るさや「里奈ぁ…」って泣きついてくるところだったり。葵海と里奈はわりとキャラが違うんですよ。服も葵海は原色系のポップな感じなので、里奈は、誰もが憧れるようなカッコいい女子大生をテーマにしたり。髪形もネイルも、葵海との対比の中で見えてきたなと思います。

――冒頭の大学の講義のシーンは、物語上も重要な意味を持ちますが、並んで座るふたりの対比が印象的です。

見るからにタイプの違うふたりだってことがわかりますよね。里奈のあの帽子は、講義中に被ってたらダメでしょ! と思いますが…(笑)。



恋愛よりも女の友情が大事? 女子の意外な本音



――そんな一見、タイプの違うふたりが、親友同士っていうのも「そうそう、そういうもんだよね」と感じさせるリアリティがありますね。

そうなんですよ! 重ならないからこそ、互いの話が面白いし、言いたいことを言い合えて、互いに満足するんだろうなぁって。女子あるあるですね(笑)。miwaちゃんとも、撮影しながら「わかるよね!」って話してました。

――里奈は、直哉が葵海のことを好きなのを知っていて、自身の直哉への想いを葵海にも言えずにいますね。普段は遠慮なく何でも話すのに、友情に関わる部分では気を遣って…。

そういうのも、けっこう私の周りにもあるなって思います。女の友情って大事なんですよ。自分が誰かを好きになることで、親友と気まずくなるなら我慢しようって気持ちもわかります。切ないですね…。



――女の友情というと、“ドロドロ”としたイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、案外、女性は友情と恋愛、どちらかを選ぶことを迫られたら、友情を選ぶのかも…。

結果として、そうかもしれませんね。女同士って仲がいいと何時間でも一緒にいられるんですよ。私にも親友がいますが、昨日も昼の12時過ぎに合流して、一度、美容院に行くからと別れたんですけど、「終わるの待ってるから、夕飯も一緒に食べよう」って。結局、夜の11時半くらいまで一緒にいました。

――いったん別れてから再合流するというのは、男同士だとなかなか…。

それができちゃうんですよね、女子は(笑)。じゃあ、一緒にいて何を話すかっていうとTVのことや欲しいもの、食べたいものとかどうでもいいことばかり。それでも、女の子ふたりで時間が過ぎていくのって楽しいんです。それを失うってかなり大きいことなんです。



――恋愛をあきらめるほど?

私自身、恋愛にドライなのか…(笑)。友達を失っちゃうと、またそこまでの関係性を別の人とゼロから築いていかなくちゃいけなくて、それは大変じゃないですか。でも恋愛は「まあ、また別の出会いがあるかな」って思えちゃうかも(笑)。里奈にとっても、それだけ葵海の存在が大きかったんでしょうね。

――勉強になります!(笑)

なかなか、男性にはわかんないですよね? きっと「女の子たちは、カフェで何時間も何してるんだよ?」って(笑)。