かつて瀬戸大橋のたもと、岡山県の児島半島を走った下津井電鉄の廃客車をよみがえらせるプロジェクトが始動しました。クラウドファンディングで事業資金を募集中です。

旧下津井駅からの移設費用を調達

 下電ホテル(岡山県倉敷市)は2017年1月17日(火)、「鷲羽山下電ホテル」(同)が2020年に創業90周年を迎えるにあたり、記念事業の一環として、旧下津井電鉄の客車を同ホテル敷地内に移設するプロジェクトを開始、その費用の一部をクラウドファンディングで募ると発表しました。

旧下津井電鉄の客車クハ24。右はレトロ調デザインの2000系「メリーベル号」(写真出典:下電ホテル)。

 下津井電鉄は、かつて児島半島の茶屋町〜下津井間21.0kmを結んだ軽便鉄道。瀬戸大橋開通後の1991(平成3)年に全廃され、以後、会社はバス事業をおもに手掛けており、下電ホテルはそのグループ会社です。

 プロジェクトは、下津井駅跡(岡山県倉敷市)に現存する下津井電鉄の客車「クハ24」、および貨車「ホカフ9」を、鷲羽山下電ホテルの駐車場に移設するもの。運送費用約440万円と設置費用、駐車場改修費用約300万円の一部を、インターネット経由で資金を募るクラウドファンディングで調達します。これらの車両は現在、下津井電鉄や「下津井みなと電車保存会」によって保存されています。

将来的にはカフェに

 出資への返礼品として、下津井電鉄のポストカード・復刻乗車券セットや、オリジナルの車両模型、ジオラマセットなどが提供されます。

出資者には、復刻乗車券や車両模型などの返礼品が用意される(写真出典:下電ホテル)。

 移設後は内外装を修復し往時の状態を復元。さらに一般公開やイベント展示などを行い、将来的にカフェ、イベントスペースなどとして活用することが目標とされています。

 下電ホテルの永山久徳社長によると「下津井電鉄運行当時の事を知りたい、車両を間近で見たい」との声が廃線から25年が経過した今でも多くあることから、創業90周年の記念事業のひとつにしたとのこと。クラウドファンディングは、資金調達よりもファンへの呼びかけの意味合いが強いそうです。永山社長は「今後の修復や活用にも参加していただき、一緒に盛り上げていきたい」としています。

【地図】下津井駅跡の位置

1972年の部分廃止後、下津井電鉄は鷲羽山中腹を経由して児島駅(JR駅とは位置が異なる)と下津井駅のあいだを結んでいた(国土地理院の地図を加工)。