台湾メディア・東森新聞雲は5月31日、世界で人気のある日本発のゲーム「ポケットモンスター」(ポケモン)の中国語表記を巡って、香港で30日に抗議デモが行われ、日本領事館に陳情書が提出されたことを報じた。(イメージ写真:タイのバンコクでのイベントの様子、(C)SIRAWUT WISUTIPAITOON/123RF)

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 台湾メディア・東森新聞雲は5月31日、世界で人気のある日本発のゲーム「ポケットモンスター」(ポケモン)の中国語表記を巡って、香港で5月30日に抗議デモが行われ、日本領事館に陳情書が提出されたことを報じた。

 記事は、今年2月末にポケモンの正式中国語名称を「精霊宝可夢」とし、それまで香港で親しまれてきた「神奇宝貝」を用いないことが、ポケモンカンパニーより発表されたと紹介。「精霊宝可夢」は中国大陸で使用されてきた名称であるとした。また、これに合わせて統一された151種類のモンスターの名称のうち、一部「ピカチュウ」などで従来香港で用いられてきた物とは異なる名称が用いられることになったと説明した。(編集部追記:台湾メディアの同報道では「神奇宝貝」と表記されているが、香港では「寵物小精霊」がポケモンの正式名称。)

 この措置に対して香港の一部ファンたちは「標準中国語の発音と広東語の発音が異なること」、「幼いころの記憶が塗り替えられてしまう」、「世代間でコミュニケーションの溝が生じる」といった理由で反発、30日に20人あまりが「10万ボルトの特大デモ」を実施。「改めなければ永遠に関連製品の購入をボイコットする」という強硬な態度を示すファンらが、陳情書を携えて日本領事館に向けて行進したという。

 記事は、デモの背景には「政治的な要素」もあると分析。採用された名前が主に中国大陸で使われていたものであり、大陸と香港の間で生じている各種軋轢も相まって「大陸市場ばかり重視し、香港市場を尊重していない」、「文化洗浄ではないか」との不満につながったのではないかと論じた。

 その一方で、激しい抗議活動が起こったことで香港におけるポケモン関連のオフィシャルイベントが中止に追いやられたことから、「改称を受け入れている香港のファンからの不満が逆に高まっている」とも伝えている。

 外来語の漢字表記は、大陸・香港・台湾で統一されていない。特に香港地域では広東語の発音をベースに文字を充てるため、大陸や台湾とは大きく異なる表記になることが多い。例えばタクシーの「的士」など、香港の表記が大陸に浸透するケースも少なくないが、標準語読みするとタクシーの音訳からは遠く離れてしまう。

 広東語圏の外来語表記を標準語ベースで統一するかしないか、という話は、われわれが思っている以上にデリケートな問題のようである。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真:タイのバンコクでのイベントの様子、(C)SIRAWUT WISUTIPAITOON/123RF)