2016年の来日が考えられている英空軍の戦闘機「ユーロファイター タイフーン FGR.4」(2013年7月、関 賢太郎撮影)。

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「世界で二番目に強い」とされ、日本も導入する可能性があったイギリス空軍の主力戦闘機が、今年中にも来日する可能性が高まっています。いったいどんな性能を持ち、「二番目」なのでしょうか。

日本も導入する可能性があった「タイフーン」

 2016年1月、ファロン英国防相は日英防衛相会談において、今年中にイギリス空軍の新鋭主力戦闘機「ユーロファイター タイフーン」を日本へ派遣、航空自衛隊と共同訓練を行う意向を明らかにしました。

「タイフーン」の来日時期については未だ明らかにされていませんが、もし実現すれば20年ぶりになるイギリス軍戦闘機の来訪で、航空自衛隊の戦闘機F-15J「イーグル」やF-2と異機種戦闘訓練が行われることになるでしょう。

「タイフーン」はイギリス、ドイツ(当時は西ドイツ)、スペイン、イタリアの4か国によって共同開発された戦闘機で、2011年に行われた航空自衛隊の「次期主力戦闘機選定(F-X)」においても、導入が検討されたことがあります。最終的には、米・ロッキード・マーチン社のF-35「ライトニングII」に敗北してしまいましたが、売り込みを担当したイギリスのBAEシステムズ社は「タイフーン」について、空中戦能力ではF-35を遥かに凌駕する「世界で二番目に強い戦闘機」を自称。最後まで「F-X」における有力候補のひとつでした。

「世界No.2」を自称、その根拠は?

「タイフーン」が「世界で二番目に強い」と自称した、その根拠は何でしょうか。

 まずは抜群の機動性です。滑走路上での静止状態から高度1万メートルへ上昇し、マッハ1.5に達するまでの所要時間はわずか150秒。さらに、高度9000mでのマッハ0.9からマッハ1.5までの加速所要時間はF-35の3分の2であり、マッハ1.5での旋回性能(維持旋回率)はF-35の2倍にも達します。

 これは航空自衛隊に所属する全ての戦闘機を上回り、そしてBAEシステムズ社も認める「世界で一番強い」ロッキード・マーチン社のF-22「ラプター」に次ぐ能力を誇ります。

 現代戦闘機にとって機動性よりさらに重要な、レーダーなど「戦闘システム」の能力も非常に優れており、特に相手へ電波妨害を仕掛ける「電子戦」についてはトップクラスの充実ぶりが特徴です。

「タイフーン」の各種電子戦装置において特に面白いものが、右主翼端に格納された「曳航式デコイ」です。これはおよそ100mの有線で繋がったデコイ(囮)を空中で放出するもので、放出されたデコイは敵の戦闘システムに侵入。実際は存在しない飛行機を敵のレーダー上へ大量に発生させ撹乱したり、電子的に「タイフーン」を真似し、接近するミサイルを引き寄せるなどの役割を担います。こうした高度なシステムは全自動で動いており、パイロットは「タイフーン」の高い機動性を発揮し、敵を攻撃することに集中できます。

 また攻撃手段においても、「ミーティア」と呼ばれる新型の空対空ミサイルを搭載。「ミーティア」はF-35やF-22で使用されるAIM-120C「アムラーム」の最大5倍ともいわれるノーエスケープゾーン、すなわちほぼ命中を見込める射程を持ち、200km先の敵機を攻撃できるともされます。さらに短射程ミサイル「アスラーム」は、敵機とすれ違いざまに射撃しても背後に回りこんで命中する、という高い誘導性能を持ちます。

「タイフーン来日」、その意義とは 日本と英国、その関係

 世界で二番目に強い「タイフーン」が来日し、航空自衛隊と共同訓練を行うその意義は、練度向上が期待できることはもちろんですが、日英の関係強化に繋がることが大きいといえます。

 現在、日英は「ミーティア」ミサイルを発展させた次世代型空対空ミサイルの共同研究を行っており、将来においてミサイルの共同開発も期待されます。

 またここ数年、日本はイギリスで行われる世界最大級の航空ショー「ロイヤル・インターナショナル・エアタトゥー」に海上自衛隊のP-1哨戒機などを派遣、飛行展示を行っており、その「返礼」として「タイフーン」がその高い機動性を活かしたアクロバットを日本の航空ショー、私たちの目の前で披露してくれることも十分に考えられます。

 日本とイギリスは太平洋戦争において矛を交えた過去こそありますが、歴史的には友好な関係であった期間が長く、この先、航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」が初めて欧州へ派遣される、反対にイギリス空軍アクロバットチーム「レッドアローズ」が初来日し、さらに友好を深めるということもあるかもしれません。