『SMAP×SMAP』にも登場し、再びじわじわとその知名度を上げているBOOMER!(右・伊勢浩二、左・河田キイチ)

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いまやすっかり定着し、TV番組でも特集されるようになった“一発屋芸人”。

しかし、ブームを築き、低迷という同じ道筋を辿(たど)っても、その枠組みに入れなかったのがBOOMERだ。

彼らは一発屋をどう見ているのか。そして、彼ら自身の現在は――。

―BOOMERさんといえば、『タモリのボキャブラ天国』で爆笑問題に続いて、2代目名人になったんですよね。

伊勢浩二(以下、伊勢) そうですね。僕らが出ていたのは、若手芸人がネタを投稿する10分くらいの「ザ・ヒットパレード」というコーナーだったんですけど、それが拡大されて、最終的には全体がネタ番組になりました。コンビを組んで3年くらい経った1995年頃のことですね。

河田キイチ(以下、河田) その頃に爆笑問題やネプチューン、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ、現・くりぃむしちゅー)なんかと一緒に出てました。

伊勢 『ボキャブラ天国』の人気が上がるにしたがって、僕ら若手のお笑い芸人が注目を浴びるようになったんです。

河田 だから、僕らがというよりもボキャブラに出ていたみんながブームだったという感じですね。

伊勢 それに、僕らにはこれだというお決まりのフレーズがないんです。一発がない。

河田 一発屋より地味だから、僕らは一発屋と呼ばれるのはイヤじゃない(笑)。

―でも、当時は相当な人気があったんですよね。

伊勢 それまでキャーキャー言われたことがなかったので、平常心を失って少し天狗になってたかもしれないです。

河田 九州に行っても、北海道に行っても、みんな僕らのことを知ってるんです。それはすごかった。でも、僕はこのブームが長く続くとは思ってませんでしたから、なんとかしなくちゃいけないと思っていた。でも、具体的に何をすればいいのかわからないし、忙しいことを理由に新しいネタとか作らなかったんですよ。

伊勢 ブームが去ると、仕事がだんだん減ってくるんですけど、それでも週に1、2個はあった。だから、それでなんとなく生活はできてしまう。それで慢心していたんです。

河田 有吉弘行が再ブレイクする前に「人気が落ちてここが底だと思っていたら、さらにもうひとつ底があった」と言っていたんですけど、その気持ちはわかります。

伊勢 仕事がまったくなくなってしまったんです。

河田 僕なんか毎日、競馬場通いですよ。一時期は競馬で生計を立ててました。

伊勢 ショーパブに出たりもしたんですけど、なかなか昔のようには稼げません。

河田 おかげさまで今はお笑い養成所の講師などをしていますが、まだ裏方に回るのは早いかなと思って時々、ライブにも出ています。

―自分たちより若い芸人が注目されている時はどう思ってました?

河田 TVを見ながら「今はキャラクターものがきているのか」とか「今は歌ネタが人気なんだ」という流れはチェックしていました。時代が求めているものに合わせなきゃいけないと思って、僕らもそういう要素を取り入れてネタを考えたりしてました。

伊勢 でも、それが勝負ネタにはならないんです。やっぱり、ボキャブラで人気が出た頃に作っていたネタのほうがしっくりくる。

河田 僕らはシンプルでベタなコントが勝負ネタなんです。50歳を超えたおじさんがやるコントなんで、ヘンに時代に合わせたりすると薄っぺらくなる。だから、自分たちが面白いと思うものをやっていこうと決めました。

伊勢 それで去年くらいから昔のスタイルで新ネタを作ったら、知り合いから「よくなった」って言われたんですよ。

河田 「ボキャブラ時代の芸人がひと回りして面白くなってる。BOOMERの泥くさいネタは、今の若いコには新しく感じるんだよ」って。

伊勢 それに、これもボキャブラつながりなんですけど、去年、ヒロミさんに呼ばれて『SMAP×SMAP』に出たんです。

河田 俺らがスマスマに出るなんて、考えられないでしょ。

―じゃあ、今は再ブレイクを目指しているという感じですか?

伊勢 目指してはいないですけど、頑張ってはいます。

河田 体が動くうちは頑張ろうと。今までは女子高生にウケようとか時代に合わせて考えすぎていた部分があったんです。そういうことよりも自分たちのできることをちゃんとやろうと。

伊勢 考えてみると、僕らよりも先輩の芸人さんってたくさんいるんですよね。そういった方々は今でも演芸場などに立っているんです。

河田 そういったところのお客さんは、ブレイクして落ちたとか、芸歴何年とか関係なく純粋にネタを見ていると思うんです。だから、僕らもそうした先輩たちに負けないように頑張ります。

伊勢 その結果、再ブレイクできれば嬉しいですけどね。

河田 僕らが言うのもなんですが、一発屋といわれている芸人はすごいやつらなんです。芸人になってもTVに出られない人間がたくさんいる中で、一年を通じて同じギャグで世間を楽しませる。その精神力はすごいですよ。

伊勢 ぜひ、温かい目で応援してあげてください。

(取材・文/村上隆保 撮影/本田雄士)