不安である。U−22日本代表の今後の強化プランが、である。

 3月31日にリオ五輪1次予選を終えた日本は、マレーシア、ベトナム、マカオとのグループリーグを首位で通過した。ベトナム戦の2対0、マレーシア戦の1対0というスコアは、本大会でのメダル獲得を目指すチームとしては物足りない。とはいえ、3連勝での最終予選進出は予定どおりだ。

 1次予選はすべてのグループが、同じタイミングで試合を行なった。テロ予告で延期されたグループBを除いて、9つのグループが全日程を終えている。オーストラリア、イラク、イラン、UAE、韓国、サウジアラビアらが、最終予選を開催するカタール行きを決めた。昨年のアジア大会で準優勝した北朝鮮、同4位のタイも、1次予選を勝ち抜いた。

 アジアの出場枠は「3」である。日本代表の現在の立ち位置は、本大会出場の絶対的な候補ではない。組み合わせによって、予選突破の可能性がかなり上下する。不安定な立場と言っていい。
 
 今回の1次予選に備えて、手倉森誠監督のチームは昨年12月にタイとバングラデシュへ遠征し、今年2月にはシンガポールにも足を運んだ。1次予選で対戦する東南アジア勢を意識したもので、高温多湿の気候に身体を馴染ませる目的も含んでいた。
 
 タイもシンガポールも予想以上に穏やかな気候で、暑熱対策の意味合いは薄いものとなってしまった。それでも、1次予選へ向けた強化を「点」ではなく「線」にすることで、手倉森監督の目ざすサッカーを浸透させる機会となった。

 来年1月の最終予選へ向けた準備は?

 現時点で決まっているのは、7月のテストマッチだけである。それも国内だ。12月にはまとまった時間を確保できそうだが、もはや直前である。最終予選までの9か月の猶予期間は、ほとんど空白のままだ。

 リオ五輪を目ざす世代は、U−20W杯出場を逃している。21歳以下で臨むアジア大会でも、ベスト8に終わった。U−20W杯は知らないもののアジア大会で優勝したロンドン世代に比べても、アジアにおける優位性は低い。
 
 それにもかかわらず、最終予選への強化スケジュールは「点」でしかない。本当に大丈夫なのか、と思ってしまう。

 少し古い話になるが、アテネ五輪出場を目ざしたチームが思い出される。

 2003年5月にアジア2次予選(今回の1次予選に相当)を戦ったチームは、5月に神戸でニュージーランドと、7月に東京で韓国と対戦した。8月にはエジプトへ遠征する。同地ではエジプトだけでなくヨルダン、パレスチナのA代表とも対戦した。
 
 9月にはアウェイでシンガポールのA代表と対戦し、ソウルで韓国と二度目の試合を組んだ。10月には香港のA代表とアウェイで激突し、そのままドーハへ移動してカタールのA代表と戦った。

 最終予選を目前に控えた2004年2月には、イランとロシアのA代表と相次いでマッチメイクをした。仕上げは韓国である。2次予選から最終予選までの間に、実に12試合を消化したのだった。

 当然のことながら、当時もJリーグは行なわれていた。アテネ世代はすべて国内でプレーしていた。それでも、これだけの時間を強化に注いだのである。
 
 マレーシアで行われた今回の1次予選で、手倉森監督のチームは成長を示したと思う。3月11日のミャンマー戦前からほぼ3週間にわたって活動をすることで、「攻撃の崩しのツボは、選手たちの頭にしっかり入っている」と指揮官は言う。キャプテンの遠藤航も、「監督のやりたいサッカーは、かなり浸透している」と話す。
 
 そうは言っても、鮮度の高い刺激は必要だ。それも継続的な刺激が。
 
 6大会連続の五輪出場は、ロシアW杯での巻き返しにもつながる大切な通過点である。同じチームの選手が五輪に出場し、逞しくなった姿でクラブへ戻ってくることで、次世代の選手も五輪への渇望を膨らませる。自分も同じ舞台に立とうと誓う。日本サッカーの成長を「線」としていくためにも、五輪には出なければいけない。出場権を逃してはいけないのだ。