赤線が圏央道の今回開通した区間(画像提供:国土交通省)。写真は圏央道内回りから東名へ分岐する様子(2015年3月、清水草一撮影)。

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3月8日に圏央道の海老名JCT〜寒川北間が開通し、ネットワークが充実しました。しかし大きなボトルネックがあります。「欠陥設計」ともいえる構造で、渋滞が恒常的に発生している海老名JCTです。どうしてそのような構造になってしまったのでしょうか。

海老名JCT、2パターンの渋滞

 2015年3月8日(日)に圏央道の海老名JCT〜寒川北間が開通し、圏央道が藤沢までつながりました。さらに2020年度中には横浜横須賀道路の釜利谷JCTまで完成する予定で、そうなれば東名・新東名の交通が容量に余裕のある首都高湾岸線南端へ直結され、首都圏の高速道路ネットワークは一気に充実することになります。

 ですが、喜んでばかりはいられません。その圏央道と東名とが接続する海老名JCTがとんでもない欠陥設計で、すでに恒常的に渋滞が発生しているからです。

 圏央道の海老名JCT以南は現状、藤沢が終点なので交通量はわずか。多くのクルマは東名の上下線と圏央道の北側とを行き来していますが、そこで連日、ひどい渋滞が起きています。パターンは以下の2つです。

(A)午前中/圏央道内回り(南行き)から東名方向への渋滞
(B)午後/東名上りから圏央道外回り(北行き)方向への渋滞

 その原因は、海老名JCT内の連絡路が一部1車線しかないこと、そして(B)側の合流部があまりにも短く、強い減速波が発生することにあります。

 まず「(A)午前中/圏央道内回りから東名方向への渋滞」について解説しましょう。圏央道内回りを走行してくるクルマは現状、約8割が東名の上下線へと向かいます。つまり大部分のクルマがJCTの連絡路へ入るわけですが、この連絡路が1車線しかないため、追越車線を走行してきたクルマが左へ一斉に割り込み、流れが滞っています。

 仮に連絡路が東名上り・下り方面へそれぞれ1車線づつ、計2車線確保されていれば流れははるかにスムーズで、混雑は大幅に緩和されていたでしょう。

大問題の東名上りから圏央道外回り

 ただ「(A)午前中/圏央道内回りから東名方向への渋滞」は、今回の海老名JCT〜寒川北間開通である程度緩和されました。しかし「(B)午後/東名上りから圏央道外回り方向への渋滞」はそのままで、はるかに状況が深刻です。

 東名上り線および小田原厚木道路上り線から圏央道へ向かうクルマは、2車線の贅沢な連絡路で相模川を渡り、海老名JCTへ。そして1車線ずつ圏央道外回り、内回りへ分岐するのですが、まずここで約9割のクルマが圏央道外回り側へ向かうため、流れが滞ります。

 そしてにこの先、きつい左カーブの直後に東名下り線からの連絡路と合流しますが、この合流部が極端に短く、しかもカーブの途中で、さらに下り勾配から上り勾配へと変わるサグ部(窪地)のすぐ先にあって、やはり流れを大きく妨げるのです。

 この東名下り線からの連絡路と合流する部分より先が2車線確保されていればまだよかったのですが、1車線なので最悪です。おかげで流れが非常に遅くなり、上流側では歩くほどの速度でしか進みません。渋滞長はわずか1キロでも、通過に10分から15分を要します。

 いったいなぜ国交省およびNEXCO中日本は、海老名JCTの連絡路を一部、このように1車線にしたのでしょうか。2車線にするには、現状より3メートルほど幅を広げるだけ。現場は相模川の河川敷にあり、用地に強い制約があったとは到底思えません。

 同じ圏央道の八王子JCT(中央道と連結)は連絡路内が2車線あるため、なぜ海老名JCTは1車線なのか理解に苦しみます。これまでさんざんJCTを建設し、経験を積んでいるはずの建設当事者が、どうしてこれほど愚かな設計をしたのでしょう。

海老名JCT、NEXCOの驚く見解

 NEXCO中日本広報部にその点を質問すると、驚くべき回答が返ってきました。

「JCTは基本的にスピードを落とさせて合流させるという、安全性を第一に考えて設計しました」

 渋滞させるのが安全なのでしょうか。ではなぜ八王子JCTの連絡路は2車線なのでしょう。まったく説明になっていません。久しぶりに日本道路公団時代の親方日の丸体質を思い起こしました。

「今後ネットワークが充実して行けば、クルマの流れが変わるのではないでしょうか」(NEXCO中日本広報部)

 付近の海老名南JCTには、2018年度に新東名(伊勢原北〜海老名南間)が接続される予定です。そちらを通れば、方面によっては海老名JCTを迂回できるようになりますが、わざわざ迂回しなければならないようなJCTを作った意味がわかりません。

 国交省およびNEXCO中日本は、早急にこの欠陥について協議し、対策を打っていただきたいと思います。しかし圏央道の内回り、外回りとも連絡路の一部を3メートルほど拡幅する必要があり、手続きを含めると最低数年は必要でしょう。

 高速道路でこれほどの欠陥設計を見たのは、1987(昭和62)年に開通した首都高の小菅JCTおよび堀切JCT以来です。

 首都高の堀切JCTは、中央環状線内回りが1車線狭まる欠陥設計により、開通以来28年間渋滞しています。現在ようやく拡幅工事が始まっていて、3年後に完成しますが、ひとつの欠陥設計により渋滞が31年間続くわけです。

 海老名JCTは、同じ愚を繰り返してはなりません。