【F1日本GP直前プレビュー】 今年のスズカはセナvsプロスト以来の“ニコ・ハミ”険悪バトルが熱い!
いよいよ今週末に迫った日本GP。注目は、シーズン終盤までもつれることになったニコ・ロズベルグ(ドイツ)とルイス・ハミルトン(イギリス)、この29歳同士の天才「ニコ・ハミ」によるチャンピオン争いだ。
最初に理解してほしいのは、今年のF1が「超格差社会」のシーズンだというコト。複雑な仕組みの新エンジン開発にエンジンメーカー各社が苦戦するなかで、初戦から驚異的な強さを見せつけたのが上位チーム筆頭のメルセデス勢だった。
第14戦のシンガポールGP終了時点でハミルトンが7勝、ロズベルグ(ドイツ)が4勝をマーク。同じチーム内での熾烈な闘いぶりは、あのマクラーレン・ホンダ時代のセナVSプロストを彷彿(ほうふつ)させる。
本誌F1解説委員のタキ・イノウエ氏が説明する。
「ともかく、ハミルトンとロズベルグといえば、ゴーカート時代からのライバルで、子供の頃からバチバチに戦ってきたふたり。そんな生意気な兄ちゃんふたりが、銀色のメルセデスに乗ってコース上でブイブイ言わしているというのが、今年のF1の『頂点部分』の景色ですね」
予選でのポールポジション獲得数もハミルトン6回にロズベルグ7回と、両者の速さはほぼ互角! シーズンが進むにつれてライバル関係が過熱し、8月のベルギーGPではコース上で2台が接触! ロズベルグが故意に事故を起こしたと批判されるなど、チームメイト同士の「険悪ムード」もかつての「セナ・プロ」並みに高まっている。
「ドイツでのF1人気がいまひとつ盛り上がらないので、親会社のメルセデスはドイツ人のロズベルグに勝たせたい。一方、F1チームの本拠地があるのはハミルトンの母国イギリスです。メルセデスにとってはアメリカのリッチな黒人層が重要な顧客層ですから、北米販売の担当者はハミルトンに勝たせたい……。チーム内はかなり複雑な気分でしょうね」(タキ氏)
前戦、シンガポールGPではロズベルグがマシントラブルで無念の0周リタイア&ノーポイントとなり、優勝したハミルトンがポイントランキング首位の座を奪還。残り5戦で両者の差はわずか3ポイントとなり、これ以上ないほどバチバチにヒートアップした状態でF1屈指の難コース、鈴鹿サーキットでの決戦を迎えるのだから見逃せない!
また、エースのセバスチャン・ベッテルを差し置いて、ここまで3勝と、メルセデス勢以外でただひとり勝ち星を挙げているレッドブルのダニエル・リカルドを筆頭に、シーズン後半に入って少しずつメルセデスに追いついてきたフェラーリ、そして今季好調の名門ウイリアムズ勢が、「ニコ・ハミ」ふたりの争いにどれだけ食い込めるのかにも注目だ。
ちなみに、本人たちは「否定」しているものの、フェラーリのフェルナンド・アロンソとレッドブルのべッテルには、「超大物トレード」のウワサも流れており、来シーズンの移籍をめぐる動きからも目が離せない。
今年のF1はレギュレーションが大きく変わった激動の年。エンジンは1.6リッターターボにERS(減速時の運動エネルギーや余分な熱エネルギーを回収し、電気モーターでエンジンをアシストする一種のハイブリッドシステム)を搭載。そのため、シーズン開幕当初は、「エンジン音の迫力がなくなった」「オ○ンチンのような形のマシン先端部がカッコ悪い」……と、散々な評判だった。
しかし、結果的には、「ニコ・ハミ」のデッドヒートに代表されるように、新レギュレーションの導入で昨年までの勢力地図が大きく塗り替えられ、なかなか面白いシーズンとなっている。
今年は久々にフジテレビ系列による地上波放送(録画だけど)もあるとのコト。「最近、F1を全然見てないわ」という人も要注目、ぜひ観戦してみてほしい!
(取材/川喜多 研)
■週刊プレイボーイ41号「今年のスズカの見どころは『セナ・プロ』以来のチーム内ガチンコバトル!」より(本誌では、小林可夢偉や消滅危機のチーム事情も紹介!)