職人技が光る″デザインマンホール″! 工場見学でその製造過程が明らかに

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マンホール。マン(人)とホール(穴)でマンホール。ひとかけみこすりサンポール……と、その名前から無意味な想像を巡らせるだけでも面白いマンホールだが、冷静に観察してみても面白い存在だ(当たり前だが)。

そして近年は、地域の名産などをモチーフに華やかな彩色を施した「デザインマンホール」が増加し、SNSで愛好家同士の交流が活発化したことなどもあり、マンホール鑑賞を趣味とする人が急増中。マンホールの蓋の写真を投稿するサイトや、愛好家が集うイベントなども盛り上がりを見せているのだ。

そんなイベントの代表格であるマンホールナイトが、マンホール工場の見学ツアーを実施すると聞き、マンホール初心者の筆者も参加。栃木県大田原市にある、日之出水道機器の栃木工場に行ってきた!

工場最寄りの東北本線野崎駅に到着すると、すでに20人近い参加者が集合中。予想以上の女性比率の高さと、改札を出てすぐに路上の蓋の撮影をはじめる参加者たちのマンホール熱に驚かされ、「これはスゴい集まりに来てしまったのでは……」と戦々恐々としながらも工場へと向かった。

工場では日之出水道機器の広報担当者、工場の担当者に出迎えていただき、研修室での概要説明からツアーがスタート。「地上の鉄蓋は『グラウンドマンホール』と呼ばれるマンホールの一部分で、地中の縦穴部分までをマンホールと呼ぶんですよ」という基礎中の基礎の話に「知らなかった……」と感心したり、展示室で大田原市ゆかりの那須与一のマンホールを見て歓声を上げたりしてから、実際に生産工場の中へ!

最初に見学したのは、鉄蓋の材料となる素材を溶かし、その成分を調整する「溶解工程」。驚いたのは、材料の7割がスクラップ(廃金属)ということ。そこにマグネシウムや硫黄などを加え、鉄蓋にふさわしい強度や耐食性を持った素材を作っていくのだそうだ。

次に見たのはほぼ自動化されている造型の工程で、溶かした鉄が流し込まれた砂型が、次から次へとライン上を流れていく様子。なおマンホールの蓋にさまざまデザインがあることはみなさんもご存じだろうが、この工場で保管している蓋の型は、なんと5000パターンもあるのだそうだ!

そして処理、加工の工程で厳密な品質チェックが行われている様子を見学して、最後の塗装の工程へ。あのマンホールの蓋の真っ黒な色が、「電着塗装」という方法で着色されていることが分かったが、注目はその後のデザインマンホール用の黒以外の色の着色の工程。なんと、この部分は職人の手作業なのだ!

着色を担当している方いわく、「面積の狭いところの方が塗るのは簡単で、広いところに均一に塗るのがむずかしい」とのこと。ホットドッグ屋のケチャップ容器のようななものに入った塗料を、素早く正確に流し込んでいく作業はお見事! そして塗料を充填した部分をガスバーナーで加熱すると、表面はピカピカに。この一連の作業には、見学者からも歓声と拍手が上がっていた。

その後は地中のレジンコンクリート製品の製造過程や、試験の様子を見学させてもらったが、そこではマンホールの知られざる機能や進化も発覚した。

たとえば集中豪雨の際に、マンホールから垂直にブシャーっと水しぶきが上がっている場面はニュースでもよく見るが、あれは圧力の高まったマンホール内部の排気・排水のために「あえて」やっていることなのだそう。しかも昔のマンホールでは、蓋もろとも吹き飛ぶ危険もあったそうだが、自動錠のついた現在のマンホールでは、蓋を外さずに10〜20ミリほど浮き上がらせて排気・排水がされているのだ。

また、濡れた路面のマンホールでタイヤがスリップする……というイメージがある人も多いと思うが、最新の車道用マンホールには特殊な構造の突起がついていて、耐スリップ性が格段に上昇したとのこと。デザインだけでなく、機能の面でもマンホールは進化しているというわけだ。

マンホールについての知識と興味も高まり、大満足で工場見学は終了。終了後の打ち上げでは、「この間、蓋の撮影で沖縄に行きましてね」「私は新潟に行きましたよ」「僕はあと11市町村で全国のマンホール蓋の撮影が完了します」なんていう会話のレベルの高さにまた驚きつつも、マンホール熱の高まりを実感。なお日之出水道機器では「今後は一般向けの見学会なども行っていきたい」とのことなので、気になる人は公式サイトをチェックしておこう!
(古澤誠一郎)