写真は「ボディピロー」/ロフテーでは、太田睡眠科学センターとの共同開発で、仰向けになりにくい設計のユニークな「横向き寝促進枕」も販売中。

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「抱き枕」と聞いて思い浮かべるイメージは? 子どもや女性が抱き枕を使う場合、「リラックス」「落ち着く」「快適」というものが多い気がする。
でも、それが、成人男性となると、一気にイメージが変わってくる。
「萌え系アニメキャラ」や、「ちょっとHなもの」の意味合いが加わり、なんとなくヘンな目で見られることが多いと思うのだ。

これってなぜ? 海外では抱き枕って、どう使われているの? ロフテー快眠スタジオ・上級ピローフィッター・矢部亜由美さんに聞いた。
「日本では確かに、男性が抱き枕を使うと言うと、ちょっとヘンな顔をされることもありますよね。でも、世界では、抱き枕は、年齢性別にかかわらず広く使用されているんですよ」

そもそも抱き枕の始まりは、中国説、百済説など、諸説あるようだが、もともとは竹や籐で編んだ筒型の細長い籠だったと考えられているそう。もともとは寝苦しい夜に、涼しく寝るために用いられていたようだ。
「東南アジアの国々では『抱き枕』は非常に一般的に使われています。若い人ばかりでなく、幅広い年代で愛用されています。近年では、『涼しく寝るために』というよりも、冷房をかけながら抱き枕を抱えて寝るという使い方が多いようです」
また、タイではショッピングセンターなどで、筒型のやわらかな抱き枕が、シーツなどの寝具とセットで売られている様子が見かけられるそう。

ところで、日本の抱き枕は、江戸時代に伝わったとされるが、当時はあまり受け入れられなかったようで、ポピュラーな存在になったのは90年代かららしい。
「弊社で抱き枕を発売したのが、1996年。当時は抱き枕というものがあまり知られていませんでした。『抱きついて寝ると安心感があって気持ちが良い』ということで評判になり、爆発的に売れたようです」

ちなみに、「萌え系アニメ」のような日本ならではの抱き枕が登場したのは、1996年、元『ファミ通』編集者が初めて自主制作したものと言われており、企業モノが作られるようになったのは2000年代後半頃からのよう。
さらに、2009年7月には、こうした日本の「萌え系」抱き枕を愛用する熱狂的アニメファンの存在がNYタイムズで報じられ、記事の内容には否定的なコメントが続出していた。

ところが! 2013年には、韓国の掲示板で「【クールジャパン】世界で大人気な日本の『抱き枕』」というスレッドが立ち、日本の抱き枕が海外でも「Dakimakura」としてポピュラーになっていることが取り上げられたり、「海外でも腐女子が増加中」として、女性向けの男性キャラ抱き枕がネット上で多数紹介されていたりした。

「涼しさ」から「リラックス」などへと目的が変わり、さらにアニメ系などへと日本独自路線の発展も続ける「抱き枕」だが、いつの間にかそれがさらに世界にも広がりつつあるようだ。
(田幸和歌子)