「団信」で回避できない住宅ローンのリスク

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借主の死亡時などに本人に代わり債務を支払ってくれる「団信」

住宅購入の際、ほとんどの人が住宅ローンを組みます。そして、民間金融機関の多くが、住宅ローンを引き受ける条件として「安定した収入があること」以外に、「団体信用生命保険への加入」と「保証会社の保証が受けられること」を求めてきます。

「団体信用生命保険」とは、住宅ローンの借主が亡くなったときなどに、本人に代わって保険会社が債務を支払ってくれるというものです。一家の大黒柱である夫が、本人名義で住宅を購入し、本人名義の住宅ローンを組むのが一般的だと思いますが、その夫が死亡、あるいは所定の障害状態になった場合などに、ローンを「チャラ」にしてくれるのが「団体信用生命保険」、通称「団信(だんしん)」です。

団信に入っていたおかげで、残された遺族、奥さんや子どもは、夫の死後に住宅ローンを支払っていく必要がなく、これまで通り自宅に住み続けることができます。また、最近では、死亡・高度障害以外にも、癌・脳卒中・心筋梗塞といった三大成人病、糖尿病や肝臓・腎臓の病気なども含めた八大生活習慣病も保障の対象にしている団体信用生命保険があります。


「代位弁済」されても住宅ローンがなくなるわけではない

次に「保証会社の保証」ですが、これは住宅ローンの借主が何らかの事情により返済不能になった場合、保証会社が借主に代わり債務を銀行に返済してくれるシステムで「代位弁済」と言います。

住宅を購入してローンを組むのは、おおむね働き盛りの人でしょう。しかし、「収入が伸びない」「退職を余儀なくされた」「勤務先が倒産した」、あるいは「癌や脳卒中などの病気になり、働くことができなくなった」「共稼ぎの夫婦が、二人の収入を前提に住宅を購入したものの妻が働けなくなった」「妻と離婚した」など、さまざまな理由で返済不能になることもあります。

毎月の返済が滞った場合、借主に代わり保証会社が金融機関へ残債の支払い、すなわち「代位弁済」をしてくれるわけですが、このとき借主の債務は減ったり消えたりするわけではなく、肩代わりしてくれた保証会社に対して債務を返済する義務が生じます。代位弁済がされても、自分の住宅ローンがなくなるわけではありません。単にローンの支払先が変わるだけなのです。


代位弁済した後に借主が亡くなると借金が遺族に残ることに

代位弁済をした場合、団体信用生命保険契約が「解除」されるということも頭に入れておきましょう。住宅ローンは、銀行との金銭消費貸借契約によるものですが、代位弁済をした場合、この契約も終了してしまうため、それを元に契約した団体信用生命保険も同時に効力が失われます。

代位弁済した後に借主が亡くなると、住宅ローン債務、すなわち「借金」が奥さんや子どもに残ることになります。特に、闘病生活を余儀なくされ「生きているけれど働けない」という状況の中、代位弁済をしてしまうと、万一に備えていた「保険」もなくなってしまうことを覚えておきましょう。

このような状況を避けるためにも、事前に生命保険を充実させておきましょう。ただ、むやみにたくさん掛ければ良いというものでもありません。長く継続できる、納得できる「買い物」をしてほしいと思います。


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