すでに「辞任」を前提にされてしまった猪瀬都知事

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さあ、次の都知事は誰だ――猪瀬直樹都知事が徳洲会からの資金提供問題で窮地に追い込まれる中、早くも「ポスト猪瀬」がささやかれ始めている。

舛添要一元厚労相に石原伸晃環境相、あるいは菅直人元首相、はたまた小泉純一郎元首相……さまざまな名前が浮上するが、カギを握る安倍・自民の「意中の人」は誰なのか。

「知事の言葉信じる都民はいない」

「現在の知事の言葉を信じる都民がいるとは、考えられないのです」

2013年12月5日。東京都議会代表質問。壇上で厳しい言葉を飛ばすのは、自民党の宇田川聡史都議だ。

「説明責任を果たしていないうえに、都民の皆さんの疑問は晴れるどころか深まる一方です」

猪瀬都知事は発言の機会もないままに、いつもの仏頂面でこれを聞いている。

自民は12年の選挙戦で猪瀬都知事を支援しており、一応は与党の立場だ。その自民さえこうだから、今や議会は「針のむしろ」に等しい。9日からの総務委員会では最大計12時間という「徹底審議」が予定され、共産党からはさらに厳しい「百条委員会」の設置も提起される。

徳洲会をめぐる一連の問題では、すでに徳田毅衆院議員の母・秀子容疑者らが公職選挙法違反の疑いで逮捕されるなど、関係者が続々と検挙されている。本人は否定するものの辞任論は日に日に高まり、J-CASTニュースが11月27日以来実施しているウェブアンケートでも、5日午後時点で64.9%(4415票中)が「辞任すべき」と回答している。

こうした状況を受け、メディアでは早くも、「ポスト猪瀬」論争が巻き起こっている。今週発売の「週刊朝日」「週刊現代」「週刊ポスト」といった大手週刊誌はそろって、「次の都知事」を占う特集を掲載した。

名前の挙がったところを見れば、「前知事の息子」石原伸晃環境相、11年の都知事選で次点だった東国原英夫衆院議員、12年の都知事選で苦杯を舐めた宇都宮健児弁護士や松沢成文参院議員、このほか小池百合子元環境相、鳩山由紀夫元首相や菅直人元首相、はては「珍説」として小泉純一郎元首相、安倍昭恵首相夫人といったところまで飛び出す。

舛添氏「今の日本に気概のある人どれだけあるか」

そうした中で本命視されるのが、舛添要一元厚労相だ。2010年に自民を離党、「新党改革」を旗上げしてからはやや存在感を低下させたものの、かつては「総理候補」と目された実力者でもあり、1999年には都知事選に挑戦した経験もある。何より、13年の参院選に立候補せずに議員を退いたため、今は「フリー」だ。

政治評論家の有馬晴海氏も、「猪瀬辞任なら、次は舛添氏しかないでしょう」と断言する。

「自民としても担ぎやすいし、イメージもいいから浮動票も取れる。まさにうってつけの候補者です。伸晃氏はまだ総理総裁を諦めきれないでしょうし、自民も舛添氏がいる以上無理に、とは言わないでしょう。東国原氏では、出ても舛添氏に勝てないのでは」

その舛添元厚労相だが、各誌の直撃を「何も考えていない」などとかわしている。その一方で、3日に出演した「Nスタ」(TBS系)では、特定秘密保護法案問題に絡み、不敵に笑いつつこう漏らす一幕があった。

「昔のように政治家も公務員も、『国士』というか、どんなことをしても、私生活捨ててでもこの国を守るんだっていう気概のある人が、どれくらいいるかなあ」

間接的ではあるものの、政治への意欲が消えていないことをうかがわせる発言だ。

もっとも舛添元厚労相がやる気でも、自民が「はしごを外す」可能性もある。有馬氏は、自民の「真の本命」をこう推測する。

「自民としては変な奴に当選されるよりも、『弱った猪瀬』が一番扱いやすい。結局は、猪瀬都知事をやめさせないのではないでしょうか」