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2013年10月22日、文化庁は、「和食:日本人の伝統的な食文化」が「無形文化遺産」に登録される見通しになったことを発表した(12月4日、アゼルバイジャンで行われる政府間委員会で正式登録が決定する見込み)。正式に決まれば、食をテーマとした無形文化遺産としては、「フランスの美食術」、スペインやギリシャなど4カ国が提出した「地中海料理」、「メキシコの伝統料理」、トルコの「ケシケキ(麦がゆ)の伝統」の4件に続く登録となる。

今回の「ユネスコ」無形文化遺産登録が正式に決定されると、「日本料理」「日本酒」に、これまで以上の世界的な注目が集まることは必至。日本も国を挙げて、「海外輸出コンテンツのひとつ」としての「和食」の普及啓発にさらなる力を入れていくものと思われる。

そこで今回は、世界の食が集まる最先端の街「ニューヨーク」と、歴史的な美食の街「パリ」において、「日本料理」「日本酒」がどのように受け入れられ、今後どういった可能性を秘めているのか? 宝酒造が伝えるレポートを紹介しよう。

○アメリカでますます高まる日本酒人気 - ニューヨークの最新事情

ニューヨーク在住のジャーナリスト・片山晶子氏によると、2001年に7,052キロリットルだった清酒の年間輸出量が、2012年には14,131キロリットルに倍増するなど、日本酒の海外輸出量は増加の一途。そのトップをゆく輸出先がアメリカで、全体の輸出量の28%がアメリカ市場向けになっているという。

日本酒がアメリカで急速に浸透してきた背景にあるのは「和食人気」。和食の持つ健康的なイメージの後押しも受け、今や和食はアメリカ食文化の一部となり、その価値は高く評価されている。

ニューヨークの和食人気 〜高級店からIzakayaまで〜
こうした和食人気の原点のひとつにあるのが、1994年にニューヨークに開いた創作和食店<Nobu>。俳優のロバート・デニーロ氏を共同経営者に持つオーナーシェフの松久信幸氏は、コリアンダー、唐辛子、フォアグラなどといった、伝統和食にないラテンや欧米の素材をふんだんに取り入れて和食を親しみやすくし、さらに「和食はスタイリッシュで華やかで、高級感のある料理」というステータスを構築した。

しかし高級店ばかりが和食人気の主役ではない。「鮨」が今や「Sushi」と英語化し、スーパーのテイクアウトや学食の定番となっているのをはじめ、ラーメン、「Izakaya」、「Robatayaki」など、カジュアルな和食もニューヨークの食文化にすっかり定着している状況となっている。

■広がる日本酒普及・啓発の機会 - 消費者の好みも多様化
こうした和食人気の後押しだけではなく、和食店以外のメニューで日本酒が目立つようになっていることも興味深い。そして、レストランに限らず、小売店での日本酒人気も見逃せないところ。ワインショップにおける日本酒の扱いも増えており、少なくとも数種の日本酒が置いてあることが普通となっているほか、日本酒に注力する店も目立ちはじめている。

さらに、イベントの場で日本酒に親しむ機会も増加。毎年秋にニューヨークで開催される、350以上の銘柄を揃えた日本酒試飲会<Joy of Sake>は、開催初回以来10年間毎年大盛況を収め、2013年には95ドルというチケット価格にも関らず、800人もの参加者を集めたという。

そんなニューヨークにおける売れ筋の日本酒について、日本酒専門店<Sakaya>のオーナーであるリック・スミス氏は「一般的には、ヨーグルトのような酸味のあるにごりと、シャンパン感覚のスパークリング清酒が親しみやすく、アメリカ人の日本酒初心者に人気といわれています。しかし弊店では、辛口の純米や純米吟醸もよく売れますし、どのタイプが人気とは言い難いですね」と話している。

また、アルコールの大手輸入・卸業者<Southern Wine & Spirits>で、日本酒の魅力をプロモートする「大使」役となる「Sake Ambassador」の肩書きを持つモニカ・サミュエルズ氏は、「5年ほど前は、甘くクリーミーなにごり、それに次いで香り豊かな吟醸や大吟醸が一番人気を得ていました。でも今は、日本酒は多くのレストランで親しみやすいワイングラスで提供され、注がれた日本酒のラベルの写真を撮って覚えておこうとするお客の姿も目立つような時代。以前に比べ、日本酒はこの街にさらに深く浸透しています」とし、うま味感の強い日本酒を好む消費者が増えていると語る一方、最近市場に入ってきたスパークリング清酒については、「カジュアルなイメージで、ランチ時や、夏の暑い時期にビール感覚で飲まれたり、カクテルのレシピに使われたりと、伝統的なタイプの日本酒とは異なる、独自の楽しみ方がされているようです」と語り、日本酒への理解が深まるに伴い、消費者の好みは多様化している様子を紹介している。

○美食の街パリにおける「和食&和酒」の楽しまれ方 - パリの最新事情

一方、独創性の高い日本料理と、カウンター越しのユニークな接客サービスで来客の心を魅了する「枝魯枝魯」の店主・枝國栄一氏。2008年にワイン大国であるフランスのパリ18区に「GUILOGUILO PARIS」を出店し、以降、京都にひと月滞在し、翌月はパリにひと月滞在するという、店主自らが二カ国の板場を移動するというレアな営業スタイルを取っている。

枝國氏は、日本でワインが一般に浸透している理由について、「フランスに渡り、フランス料理の修業をして帰国した日本人シェフたちの影響が大きかったのだと思います」と語り、「日本酒が世界にもっともっと広がるためには、外国から日本へ来て、和食を学びたいという人を国内へたくさん受け入れて、修業できる制度の整備が必要だと思っています。やがて彼らが自国に戻り、日本料理を出す店を開けば、自ずと日本酒も世界へ羽ばたくことができるでしょう」と分析する。

フランスは税率が高いため、日本酒の場合、どうしても販売価格が上がってしまうのが難点で、「GUILOGUILO PARIS」でも、日本酒が飲めるのは富裕層に限られてしまうという枝國氏は、「もっと広く一般の方にも楽しんでもらえる売値でお出しできるようになれば、もっともっと日本酒を飲んでいただける人口は増えて行くのにと、少し残念に思うところです」と語る。

そんな枝國氏は、「GUILO GUILO PARIS」において、2年前から「松竹梅白壁蔵『澪』(MIO)」を提案しているという。「澪(MIO)」は、さわやかな甘味を持つスパークリング清酒のため、好みにもよるが、大変良く冷やして、アペリティフとして楽しむのに最適とのことで、豚肉を焼いて栗のソースを添えた料理など、肉料理や甘いソースにも合うという。

ニューヨーク、パリなど、世界でも親しまれだした日本酒。そして、その中でもトレンドとなりつつあるスパークリング清酒だが、枝國氏もすすめる「松竹梅白壁蔵『澪』(MIO)」は、宝酒造が2011年6月より発売を開始したスパークリング清酒で、米と米麹に由来するほのかな甘さと爽やかな泡立ちを楽しむことができる。「浅瀬の水の流れ」や「船の通ったあとにできる泡の跡」という意味がある商品名の「澪」だが、"浅さ"を低アルコール、"泡の跡"を発泡性に例えており、清酒の新しい流れを作るという思いがを込められており、さらに、イタリア語で"MIO"が「私の」という意味を持つことから清酒にあまり馴染みのない人にも「私のお酒」として楽しんでほしいという願いも込められているという。