八重山商工vs名護 島のために戦った5人の助っ人も活躍!八重山商工、ベスト8進出!
塁上で叫ぶ八重山商工・田盛恭平
4安打3打点4得点。4人の打者が1回戦でマークした立派な数字だが、これが6番から9番までの下位打線から生まれた、と言ったら少しは驚くだろうか。 だがそれもほんの序の口。実はその4人を含む5人が野球部に所属するものではなく、他の部活者たちの、いわゆる助っ人なのだ。
八重山商工はこの秋、僅か12名で県大会を勝ち抜いて3位となり、第133回九州地区高校野球大会に出場。 初戦で鹿児島県の指宿商に勝利し、続く2回戦で延長12回の末、惜しくもサヨナラで早稲田佐賀に敗退してしまったが、島の子たちが佐賀県1位の私学校と堂々と渡り合う大健闘を見せたといえよう。
その九州大会出場を決めた高校には、推薦校という立場で1年生中央大会出場の権利が与えられるのだが、2年生を除く同校の1年生部員は僅か5人。 合同チームとして八重山農林へ打診したが、向こうはチームとして成り立つ人数がおり、「仲間と単独で予選を戦いたいとのことで断られた」(伊志嶺監督)。諦めるしかないのかとの思いが指揮官の頭を駆け巡った。
先制される苦しい展開もすぐに逆転!初回、3点目のタイムリーを放った八重山商工・小浜 涼
「真玉橋が勧誘してくれました」(伊志嶺監督)。 現在は他の部活に属しているものの、中学まで野球部に所属していた同級生に声を掛けたキャプテン。その熱意に打たれ、島のため、友のためにひと肌脱ぐか!と5人が集まったことで合計10人となった八重山商工は無事、この大会へ出場を果たすこととなるのだが、冒頭で触れたように先発で出場した4人の活躍もあり、なんと南風原を8対2の大差で下して勝利を収めたのだった。
この日迎えた名護は、北部地区大会全勝で1位通過してきており実力は申し分ない。 伊志嶺吉盛監督も「昨日は勝っちゃったけど、まぐれでしょ。コールドで負けなければいいよ」と試合前に苦笑い。
相手の隙を見抜いて犠打やエンドランなどを絡めてくる伊志嶺野球も、助っ人にそこまで求めるわけにもいかず、「自由に打たせる」(伊志嶺監督)ことしか出来ない。無類の負けず嫌いの指揮官ではあるが、半分近く本音というか、しょうがない言葉なのだろう。事実、この名護戦でもそれが如実に表れたシーン(6回)があった。
試合は初回から動く。 名護打線は、連投の八重山商工先発・具志堅忠憲(ただのり)に対し一死から内野安打で出塁すると3番真栄田伊織が左中間を破る先制のタイムリー三塁打。 だがここで具志堅が踏ん張って後続を斬り最小失点で食い止めると八重山商工はその裏、1番主将の真玉橋樹(まだんばし・たつき)がレフトへ二塁打。犠打で三塁へ進めると3番宮良雄太がライトへ二塁打を放ちすかさず追いついた。
八重山商工助っ人5人衆
さらに具志堅がレフト前ヒットで繋ぎ、大城秀平がライト前へ逆転タイムリー。だがまだ終わらない。 6番に座ったサッカー部の小浜 涼がセンターへはじき返し3点目を迎え入れたのだ。その小浜は6回にもヒットを放ち、1回戦に続く2安打をマークした。
逆転してもらった具志堅は2回以降立ち直り、6回まで三者凡退と名護を完全に手玉に取る。
そして6回裏、八重山商工はノーアウトから二者が連続ヒットを放ちチャンスを作るが、ここで名護ベンチが先発の左腕當山昌平から右の大城有生へスイッチ。 7番からとあっては、バットを振っていけ!としかタクトをふるえない指揮官。結果は連続三振とサードゴロで走者を進めることも叶わなかった。だがこれも計算の内というかしょうがないのだ。 というのも、先発の助っ人4人はあっぱれかな。守備機会でもノーエラーを記録してくれてこの日の勝利に大いに貢献してくれたのだ。
最後はエースが二桁となる10個目の三振で締めて4年振り4度目のベスト8進出6回、二番手大城有生がマウンドへ上がり集まる名護内野陣
最終回のマウンドは左腕の大城がマウンドへ。 一死を取ったがそこから四球を出してしまい、プレッシャーを感じたのか、腕だけで振っている棒球になってしまう。
続く打者にも簡単に見極められ連続四球でピンチを拡大。だが後続の打球はピッチャーゴロ。これでゲームセットとなるはずだった。 だが、「普段から守備練習が疎かだからあんなことになる」と試合後の伊志嶺監督が、大城のふがいないピッチング以上に辛口だったグラブ捌き。記録はピッチャー強襲ヒットとなったが、常日頃から「投手は9番目の野手でもあるんだよ。投げたら構えて次に備えること」を、口酸っぱく言っておいても、普段から心して取り組んでいないことからの準備不足という意味での「あれは捕らなきゃ」のセリフだった。
満塁とされ、さらに腕がふれなくなった大城は2ボール(0ストライク)としてしまう。 ここでベンチが動き再び具志堅がマウンドへ。8回まで好投していたエースとはいえ、しかしそこはまだ1年生。押し出しの四球を与えてしまい、1点を失うがここまで。
最後の打者を、この日10個目となる三振に斬ってとりゲームセット。見事4年振り4度目のベスト8へ進出した。
今はソフトボール部へ入っているという阿次富亮貴君(ライト)と仲松 柊(セカンド)君は、この2試合で高校野球の楽しさを痛感しているものの、実はソフトボール部もギリギリ9人で、予選大会前でもあったとのことだが、先輩たちも了承してくれて快く送り出してくれたのだという。
どうしても少人数になってしまいがちの離島の高校。みんな思いは同じなのだが、頭数というどうすることも出来ない事実も突きつけられている。そんな中で小浜 涼君、米盛裕時君(以上サッカー部)、そして田盛恭平君を含めたこの大会に出場した5人の決意と行動は、間違いなく多くの人の心を震わせたに違いない。
(写真・文=當山 雅通)
仲松 柊名護TEAM八重山商工守備位置氏名打順守備位置氏名遊撃[player]古我知 拓也1番遊撃真玉橋 樹二塁比嘉 勇麻2番三塁平安名勇太中堅真栄田 伊織3番捕手宮良 雄太一塁比嘉 悠樹4番投手具志堅 忠憲右翼島袋 太志5番一塁大城 秀平三塁大城 卓巳6番左翼小浜 涼左翼比嘉 諒弥7番中堅田盛 恭平捕手山城 陸8番右翼阿次富 亮貴投手當山 昌平9番二塁仲松 柊