トレーニング期に向けた準備
オフシーズンのトレーニングは土台をつくるための練習の一つ
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
日が暮れるのもすっかり早くなりましたね。夕方から練習する頃には外は真っ暗、と実感することも多いのではないでしょうか。本格的な冬が近づいてきました。まだまだボールを握って練習を行う一方で、基礎体力作りをメインとしたトレーニング期を迎えるチームも多いと思います。今回はオフシーズンのトレーニング期に入る前に、準備しておきたいことなどについてお話をしてみたいと思います。
【不安部位を取り除こう】つい最近まで公式戦があったチームもあるでしょう。痛みや違和感などを抱えたまま、プレーをしていた選手が中にはいるかもしれません。また試合や練習などでケガをしてしまい、満足にプレーすることが叶わなかった選手もいるでしょう。オフシーズンは基礎体力作りももちろんですが、ケガを抱えている選手は、まずケガを克服することを最優先にしましょう。一度も病院を受診していなければ、まず病院で医師の診察を受けて、ケガの原因や状態を調べてもらい、必要に応じて検査を受けるようにします。その後、自分でできることとやってはいけないことを確認し、できることをまず行うようにしましょう。
【ケガの原因別・できること】ケガにいたるまでにはさまざまな原因が考えられます。
●ケガの原因が機能的な損傷によるもの(骨折など特定の部位が損傷している状態)骨折などの突発的なケガでは、ケガをした部位の組織が修復するまでにある程度時間がかかります(参考コラム:組織修復の目安)。捻挫なども靱帯や関節内を損傷していることが多く、まずはその部位が治癒するまで、大きなストレスを欠けないようにすることが大切です。治癒を促進させるための医療機器や施術などもありますが、選手個人で判断するのではなく、医師やトレーナー、治療院の先生など専門家に相談するようにしましょう。
●ケガの原因が柔軟性の低下や筋力不足コンディション不良が原因であるものについては、指摘されたことについて、しっかりと取り組んでいくことが最優先となります。下肢の柔軟性が低下したことによる腰痛、筋力不足による肉離れ等、適切なストレッチやトレーニングを行うようにしましょう。
●ケガの原因が野球のフォームにある場合投球フォームなどが肩・肘に負担をかけているケースも多く、こうした場合は指導者の方と相談しながら再発しないフォームの習得を目指しましょう。
●ケガの原因が複合的に存在する場合ある意味これが一番多いかもしれません。組織は損傷し、身体のコンディションについても改善すべき点があり、なおかつフォームにも問題があるといったケースです。優先順位はまず組織の修復を目指すのが一番であり、そこから痛みのない範囲でコンディションレベルを上げつつ、フォームの修正などにも取り組むことが求められます。
現状を把握し、なりたい自分を明確にしてトレーニングに取り組む
【現状を把握する(形態・体力測定)】身体のコンディションに関して、特に不安部位がない場合は、本格的なトレーニング期に入る前に形態・体力測定を行いましょう。以前のコラム「なぜ体力測定をするのか」でも書きましたが、現在の自分の形態・体力などを把握することで、これから先の目標が明確になり、どのような体力をより強化していくかといった方向性がわかるようになります。簡単なところでいえば、体重や体脂肪の測定、メジャーなどを使った周径囲の測定(形態)、ウエイトを使ったトレーニング種目によるMAX測定(筋力)などが挙げられます。
【なりたい自分をイメージする(目標設定)】現状把握をしたところで、今度は三ヶ月後、半年後の自分の身体がどのように変化したいかという目標設定を行うようにします。高校野球選手の多くの悩みが「体重が増えない、身体を大きくしたい」といったことではないでしょうか。身体を大きくするためにはトレーニングはもちろんですが、食事をキチンととることも重要になってきます。トレーニングと栄養、そして休養のバランスを考えながら、実現可能な範囲で少しずつ数値を上げることを目指しましょう。ただやみくもに体重だけ増やしてしまうと、筋力が追いつかず、自分の身体を支えられなくなって足首や膝、腰背部など荷重関節(体重を支える関節)を中心に、ケガをしてしまうことも考えられます。1ヶ月に1〜2kg程度を基本とし、短期間で体重を極端に増やすことは避けましょう。
オフシーズンのトレーニングを充実したものにするためにも、その準備段階として自分の身体をチェックすることから始めましょう。
【トレーニング期に向けた準備】●不安部位の解消をまず心がけること●必要に応じて医療機関を受診し、ケガの原因を把握する●ケガの原因には特定部位の機能的損傷、身体のコンディション不良、負荷のかかるフォームなどがある●本格的にトレーニングを行う前に形態・体力測定を行おう●形態・体力を数値で表すことで、具体的な目標を設定することができる●非現実的な目標を立てず、体重を増やすときは1〜2kg/月のペースにしよう
(文=西村 典子)
次回、第81回公開は11月30日を予定しております。