智辯和歌山vs報徳学園 どちらが、どうやって流れを食い止められるか?
中村誠投手(報徳学園)
どちらが、どうやって流れを食い止められるか?
18安打16失点で8回コールドゲーム。 準々決勝で福知山成美を完封したエースの中村 誠(2年)が智辯和歌山に打たれる。追いついても、追いついても突き放されたゲームに、敗れた報徳学園のナインは悔しさと力不足を噛みしめていた。
18安打のうち、本塁打2を含み、長打は7本。打つチームが少ない兵庫県だけでなく、近畿大会に入っても、これだけ打たれることはなかった。 中村だけでなく、二番手でマウンドに上がった岸田 行倫(2年)も打たれる流れを止めることはできなかった。「(少しでも)甘いコースになると、簡単に長打を持っていかれる。自分でもわかっていたのですが、甘いコースにいって打たれてしまった」と岸田。マウンド以外ではキャッチャーとして智辯和歌山の打者に対しただけに、打たれることを防ぎきれない歯がゆさを誰よりも感じていたようであった。
勝負のポイントに繋がるエラーが出るなど、守りも乱れた。
「エラーが絡んでの失点は一番してはいけない。ことごとく打たれたが、大切にしていた守りが崩れてしまった」と永田裕治監督も冬場の課題が明確になったことを話した。
東妻勇輔投手(智辯和歌山)
一方で智辯和歌山は打撃で目立ったものの、公式戦初先発で前半に5失点した東妻 勇輔(2年)が中盤に報徳学園打線を食い止めたことが、大勝へのポイントとなった。
1回、2回と味方が取ってくれた分だけ失点をした。「点をとってもらった分、浮ついた気持ちがあった」という東妻は、2回のピッチングが終わった後に、林守部長とじっくり話す姿がベンチであった。「いつの練習通り、低めに集めることを意識しろと言われました」。高嶋仁監督からも、「力み過ぎ」という言葉をもらったという。
報徳学園打線を食い止めるきっかけになったのが3回のマウンド。ヒットと守備のミスで二死ながら一、二塁とピンチを背負い、報徳学園の2番大畑幸平(2年)にセンター前へと運ばれた。勝ち越されることを覚悟した東妻だったが、二塁走者の報徳学園エース・中村が、三塁を回る際に、本塁突入を迷い、クロスプレーでタッチアウトに。相手指揮官の永田監督は、「仕方ない」と話したが、投げる東妻にとっては大きなプレーであった。
続く4回にようやく三者凡退に打ち取り、相手打線の勢いを食い止めた。最後に3失点を喫したものの、大量得点に守られた東妻に高嶋監督は、「今後のためにも代えるつもりはなかった。良い経験になったでしょう」と言葉をおくった。
打撃に目が行きがちがゲームだったが、ピッチャーが打たれた時に、“どちらが、どうやって”流れを食い止められるか。それを実感したゲームでもあった。
(文=松倉 雄太)