龍谷大平安vs履正社 難しい継投・・・
力投した永谷暢章投手(履正社)
難しい継投・・・
「私の継投ミスでした」。 敗れた履正社・岡田龍生監督はそう切り出して、勝負のポイントを振り返った。
今大会初めて、背番号10の永谷 暢章(1年)が先発した準決勝。チームの期待に応え、188センチ82キロの恵まれた体格を生かし、力強い投球を披露していた。 4回に一度崩れた永谷であったが、5回、6回と三者凡退に打ち取る。特に6回は全て打たせて取り、わずか9球でチェンジとなっていた。「6回があまりにもポンポンと抑えていたので、もう1イニングいけるかなと思いました」と話す岡田監督。
その裏の履正社は、4番中山翔太(2年)がタイムリーを放ち、差を2点に広げる。その間に指揮官は、球数が100球を超え、継投のポイントにきていることを考えながらも、次のイニングを期待に応えてきた永谷に託すことを決めた。
しかし7回表、岡田監督の決断が裏目に出る。 先頭の龍谷大平安8番石川 拓弥(2年)にヒットを打たれ、送りバントで二塁に進まれた。さらに1番徳本 健太朗(2年)のレフト前ヒットで一、三塁となり、2番大谷司(2年)を迎える。1ボールからの2球目、一塁走者の徳本がこの日二度目の盗塁を決めた。 二、三塁と失点ピンチが広がり、マウンドの永谷はストライクが取れなくなった。結局、四球を与えて満塁となる。継投のタイミングを常に考えていた岡田監督は、ここで永谷を降ろすことを決めた。「本当は7回の頭から代えてあげないといけなかった。欲が出た私のミス」と岡田監督。二、三塁になっての四球も痛かった。
2つ目のポイントは継投の順番。 ここまで2試合完投のエース・溝田 悠人(1年)は、終盤に備えてブルペンで肩を作っていた。先に出来ていたのは、左腕の本城円(1年)と右の林津花咲(2年)。打席は3番で右打者の姫野 大成(2年)。岡田監督は、「ある程度は決めていたのですが、あそこ(の場面)では2年生かな」と思い、林を起用することを決めた。7球の投球練習が終わり、あえてタイムをとってまで慎重に入った履正社陣営。しかし、林はストライクが取れない。ストレートの四球を与え、押し出しで同点となる走者がホームを踏んだ。林はここで降板し、左の本城がマウンドへ向かう。だが、4番河合 泰聖(2年)に勝ち越しタイムリーを浴び、5番中口大地(2年)には押し出し四球。指揮官はついに、エース溝田を投入せざる得なくなった。 その溝田も代わりっぱなに押し出し四球を与えて、もう1点を失う。最後はダブルプレーに打ち取って何とか守りを終えたが、6対4が、気づけば6対8となっていた。
「ああいう場面で他の投手を出してやるのもかわいそうだったのですが」と岡田監督はほんの一瞬の判断と流れ、継投の難しさを悔やんだ。
3安打の石川拓弥(龍谷大平安)
逆に勝った龍谷大平安は、原田英彦監督の打順変更が当たった。 この日、これまでの2番から8番に下がった石川が、3安打2打点と活躍。4回の逆転打、7回先頭でのヒットなど、相手マウンドの永谷を崩すきっかけを、ことごとく石川が作りだした。「この前の試合では、体が開き気味だったので、今週は徹底的に練習してきた」と石川はチームに貢献できたことを喜んだ。
ただ、打順変更は単に調子ではないことを原田監督が明かす。「相手の先発が永谷投手であることを読んでいました。足のある1番の徳本が出れば、今日は走れる。左バッターの大谷を2番に置いて大きく構える。(配球が)外中心になるので、キャッチャーにとっては投げづらくなる。となると、内が主体になるので、徳本が走って大谷が引っ張る。そういうゲームプランでした」。
指揮官は打順が下がる右打者の石川を含め、チーム全体にも左打者の大谷の特性を考えたものであるという意図を伝えていた。実際、1番の徳本は1回に盗塁を決め、勝負所の7回も見事に成功させた。そして、結果的に打順が下がった石川がポイントゲッターとなったのだ。
今大会3試合目で初めて1年生左腕の高橋 奎二が打たれ、追いかける苦しい展開になったが、14安打で7人が打点を挙げた打線が、6年ぶりの決勝進出へと導いた。
(文=松倉 雄太)