桐生第一vs佐野日大 苦悶
左足を負傷しながら投げ続けたエース田嶋
苦悶
佐野日大のエース・田嶋 大樹(2年)。3日連戦となるこの日は先発をせず、リリーフとしてブルペンで待機した。
しかし1回表、先発した背番号10の稲葉恒成(2年)が、バックの守備のミスも絡んで4点を失った。ベンチの松本弘司監督は早々に、稲葉から田嶋に代える決断。1回途中からエースがマウンドに上がり、残ったピンチを凌いだ。田嶋は2回にアウト3つを三振で奪うなど、快調なピッチングに見えたが、続く3回にエラー絡みで1点を失った。そしてその裏、アクシデントが襲う。
このイニングの先頭打者として打席に立った田嶋は、セカンドゴロを放ってアウトになった。この時、一塁ベースを踏む際に、左足を前のめりに突くような形になってしまい、全体重がかかって痛めてしまった。捻挫に似たような症状で、苦悶の表情を浮かべた田嶋。
3回の攻撃が終わった後も、ベンチで応急処置を受け続けた。守備陣は不安そうな表情で見つめ、ライトの小泉奎太(2年)がブルペン前で、リリーフ準備をした。
だが「代わるつもりはなかった」と、田嶋は左足を引きずりながらもマウンドに戻った。松本監督も、「投げさせたくはなかったが、ウチにとっては厳しい状況(展開)だった」と勝負にこだわった心境を話す。
敗れた佐野日大ナイン
左腕の田嶋にとって、痛めたのは軸足になる。マウンド上で何度も足をさすったが、投げる時は『関係ない』という表情で、キャッチャー・佐川昌(2年)のミットをめがけた。
走者が出て、相手の桐生第一が送りバントをしてくる場面もあったが、「バックに任せました」とバント処理を極力控えた。二塁に走者を背負った際にも、軸足を回転させる牽制はできなかったという。
明らかにピッチングの幅が狭まった田嶋。それでも、足を痛めて以降は無失点に抑えたのだから不思議なものである。時には上体だけで投げるなど、投球フォームが変わった球もあった。
「上半身だけで投げても、リリース(ポイント)だけ同じであればコントロールはつく。それだけをしっかりやれば、0に抑えられると思った」と心境を語ったエース。痛みに耐えながらも、気持ちだけは折れなかったことが、自身にとって救いだっただろう。
試合の結果は完封負け。でも、コールドゲームまで持っていかれなかったのは、エースの苦投があったから。負傷した状態のエース。賛否は様々であるが、投げ続けなければいけない時もある。【勝利至上主義】ではなく、【勝負】だからだ。
田嶋の「代わるつもりはなかった」という言葉には、『降りた時点で勝負に敗れる』という強い気持ちが感じとれた。試合には敗れたが、勝負には負けなかった田嶋。今年の公式戦を終え、今はまずじっくりと治して来年へと向かってほしい。
(文=編集部)