足立西・小畑君

関東一が初回の先制攻撃で突き放し、7回コールド勝ち

 前日の台風から一転、台風一過秋晴れの好天に恵まれた。スケジュールそのものは、前日の試合が翌週に回り当初の予定通りの試合が行われた。

 この秋の東京都大会は都立校各校に有望投手が多く、そのことも話題になっているが、都立足立西の小畑君は同じく8強まで勝ち上がっている注目の都立小山台の伊藤 優輔君と、中学時代には同じクラブチームで競い合っていた仲だ。 そして、高校になって学校は別になったが、ともにエースとなって、チームをベスト8まで導く原動力となっている。小畑君は都立足立西でエース兼4番で主将と、まさにチームの大黒柱である。

 就任2年目で、27歳と若い山崎大輔監督が率いる都立足立西だが、山崎監督自身が都立校で躍進をしていきたいという思いは非常に強い。 1999(平成11)年に城東を甲子園に導いた有馬信夫監督(現総合工科)が城東から都立保谷に異動した年に入学。

 そこで、有馬監督の「気持ちで負けない野球」という意識を叩きこまれた。そして今、自身が指導者となって、そんな思いをチームに反映させている。

「グラウンドに恵まれていなかったり、条件だって決してよくないことが多いですけれども、それでも都立校でも気持ちがあれば決して恵まれている私学にも負けません」そんな熱い思いで、ブロック予選では拓大一を下し、本大会でも3回戦では、この夏東東京大会を制した修徳を下してベスト8まで進出してきたのだ。

 しかし、この試合では関東一にいきなり4点を奪われ自分たちのペースで試合を運ぶことが出来なかった。 初回、都立足立西は3者凡退でその裏の守り、先頭の熊川君の打球は左中間に飛んだが、中堅手は追いつきながらグラブをかすめる形で三塁打となる。このあたりは、グラウンドが狭く外野手の練習が豊富とは言えない都立足立西のハンデが現れたのかもしれない。続く、大川君が左前打して関東一はあっさりと先制した。さらに四球後、4番山口君も右前打で無死満塁。森山君の中前打で2点目が入り、まだ無死満塁が続く。暴投で3点目が入り、さらに内野ゴロの間に4点目の走者が生還した。 

熊井君(関東一)が4回に5点目のタイムリーを中前に放つ

 さすがにいきなりの4点は都立足立西には堪えた。 関東一は4回にも失策の走者を盗塁などで進めて、熊井君の中前へのタイムリー打で5点目を挙げる。そして、6回にも失策の走者をバントで進めるなどして、8番篠田君の左前打で還し、さらに牽制悪球もあり走者が進むと、大川君が三遊間をゴロで破って7点目の走者を還した。

 結果的には完敗となってしまって、さすがに山崎監督もやや肩を落とし気味だった。「修徳戦では、相手の隙を突くことが出来ていい形で理想通りの試合が出来たんですけれども…、今日はエラーが出たら負けだと思っていたんですけれども、それが出てしまいました」

 それでも、夏休みの練習を通じて、小畑君を含めて、チームとしても集中してランニングなどで体作り、下半身強化も出来て、結果としてそれがチーム力アップにも繋がって行ったのだ。「ボクは、古いタイプなので、やはりランニングが一番体を作ることが出来ると思っています」というように、走ることで精神的な強さも作っていくという、「気持ちで負けない野球」は、これから冬を過ごしてさらに強化されていきそうだ。

 ベスト4進出を決めた関東一の米澤貴光監督は、「秋の大会は、ウチなんかもそうですけれども、試合をしながら成長していかないといけないと思っています。今日は、必ずしもベストという状態ではないですけれども、羽毛田はよく投げてくれたと思います」と、まずは羽毛田君の安定した投球での完封を評価した。そして、「立ちあがり、向こうの投手もちょっと単調になってしまっていましたね。2回、3回と厳しく投げられると、なかなか攻略できませんでしたから、初回は大きかったです」と、上手く先制攻撃がハマったことで勢いに乗れたことを振り返っていた。

 関東一は2年ぶりのセンバツへ向けて、次の準決勝へ向けて、もう一度気持ちを上げていくことになる。スケジュール的には、これからの2週間の調整もまた、今大会のテーマである。この秋からは、準決勝は神宮球場となり、まさに、試合をしながらさらなる成長をしていく舞台が用意されているのだ。

(文=手束 仁)