内野ノックの最中に気合を高める選手たち(今治西)

今治西、明徳義塾を「圧倒」!4年ぶり秋季四国大会決勝戦進出!

 試合前の「準備段階」として重要なパーツである7分間のシートノック。振り返ればこの時点から今治西は明徳義塾を圧倒していた。

 今治西は1週間前のぎこちなさが嘘のように気迫と元気を全身から漲らせ、実戦に即した精度の高い守備を繰り広げていたのに対し、明徳義塾はいつも通りの流麗な処理のように見えて、各所でノッキングが見られた。

 試合に入ると、その差は如実に現れる。「初回はピンチになりかけたが、杉内(洸貴・1年・右投右打・171センチ62キロ・立花中出身)が素晴らしいプレーをしてくれた」と今治西・大野康哉監督も評したように、まず今治西は愛媛県東予地区代表決定戦以来の9番三塁手スタメン抜擢となった杉内が、二死一塁から明徳義塾4番・岸 潤一郎投手(2年)が放った強烈な三塁ゴロに身を挺して処理。 2失策で退いた屈辱を晴らす同時に、立ち上がりが課題の左腕・神野 靖大(2年)リズムを自らに大きく引き寄せる。

 その裏、「今週はグラウンドでの練習が台風でできなかったが、かえってやることがはっきりできたし、選手たちの疲労も取れた」(大野康哉監督)今治西はさらなる引き出しを開けた。各打者のバットはそろって寝し気味。

 昨夏甲子園で松井 裕樹(桐光学園3年・東北楽天ドラフト1位指名)から22奪三振を奪われた恥辱をばねに、安樂 智大(済美2年)を中心とした直球投手対策として編み出した「ヘッドの先を走らせる」新打法の封印を「ストレートしか打てないと思っていた」岸対策として解いたのである。

 よって得点こそならなかったが二死からの連続出塁で先発・岸の出鼻を狂わせた今治西は、4回裏、一気呵成に出た。 3番・越智樹捕手(2年)、4番・福原健太右翼手(2年・右投右打・172センチ70キロ・角野中出身)の連続安打に続き、5番・神野の三塁線バントが投前安打となって迎えた無死満塁。7番に代打を送るなど執念の采配を見せるベンチに二死から8番・秋川優史一塁手(1年・右投右打・177センチ68キロ・東予東中出身)が応える。

4回裏二死満塁から中越3点二塁打を放った秋川(今治西)

 143キロストレートに2連続空振りの後、139キロの1ボールを挟み迎えた4球目。「空振りの仕方を見てゆるいボールの方が合いそうと思った」岸の読みと、「しっかり来た球に食らいついていこうと思った」秋川の気持ちが交錯した時、岸の140キロストレートは今夏甲子園準々決勝・日大山形戦同様にバットの届く高めに浮いた。

 アウトコース高めのストレートを捉えた打球はセンター越えの満塁走者一掃二塁打。失策が重なった二死一・三塁から1番・田頭寛至遊撃手(2年主将・右投左打。169センチ61キロ)も二塁手のグラブを送球前に弾く内野安打。

 「あの1球で流れが変わった」明徳義塾・馬淵史郎監督が試合後、うめくように言った試合のポイントは「『思い切って投げろ』と監督さんからアドバイスを頂いて、インコースとアウトコースの出し入れができた」神野を攻略するには、あまりに重い点差であった。

 明徳義塾の焦りは「左投手に苦手意識があった」(藤山晶広コーチ)攻撃にも波及する。

 5回表一死から連続四球で得た反撃機にも1番・大谷真希中堅手の打球は遊撃ゴロ。さらに三進のランナーが「練習から試合につながるプレーをやってきた」田頭の一塁送球動作から三塁送球を行う明徳義塾の練習でもよくおこなっているプレーに誘い出されタッチアウト。6回以降に出た走者は9回二死から失策の1人のみ。勝敗は決した。

 完勝。そして越智樹は坂出戦で掴んだ「あの言葉」を口にする。

 「伝令でも『大胆にいって構わない』と言われたので、これまでは繊細に外へ構えていたのをインコースに持ってくることができました」 徹底した練習に基づく「大胆さ」のアレンジ。明徳義塾のお箱を完全に奪い、4年ぶりの秋季四国大会決勝戦進出を果たした今治西は、その時と同じ坊っちゃんスタジアムでの歓喜に向け、池田にも心を1つにして闘っていく。

(文=寺下 友徳)