2004年に知る人ぞ知るで売られたOVA『コゼットの肖像』。『まどか☆マギカ』の監督、新房昭之の異色の作品が、映画にあわせてデジタルリマスターでBD化されました。どの作品よりも新房度100%な、濃すぎる作品です。

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ついに発売されたんです。
『コゼットの肖像』のデジタルリマスター版ブルーレイが。
2004年の、知る人ぞ知る新房昭之監督のOVA。でも残念ながら、あまり日の目を見なかったOVA。
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』にあわせての発売という名目で、なんですが、それでもVol.0から買っていた身としては、「やっとでたかー」だよ!

たまごまご:『魔法少女まどか☆マギカ』を見ているような十代とか二十代の子たちに『コゼット』を見せたら、絶対面白がるだろうなと思うんです。
新房:あれね、レンタルも出てないんですよ。レンタル出して欲しかった。
今野:再発したらどうですか? ブックレットを付けてボックスにして。
新房:ねえ。言ってはいるんですけどね。まあブルーレイにするほどの画角はないんですよ
(『夜想bis+ー特集 新房監督マル秘インタビュー番外篇』より)

新房監督にインタビューした2011年、当時はほとんど入手できない商品でした。UMD版は一応ありましたが。
BDの帯には「「魔法少女まどか☆マギカ」の原点がここに」と書かれています。
正直、物語的な原点ではないです。というか「まどか」だけの原点ではない。
『まどか☆マギカ』や『絶望先生』『化物語』など、新房演出の原点的作品です。
当時アニメスタイルが書いていた「純度100%の新房作品」という表現が的確です。

簡単に物語を説明します。
ミステリー作品ですので、ネタバレを避けて表面だけさらっと。
骨董品店「香蘭堂」でアルバイトをしている青年、倉橋永莉。
彼はあるベネチアングラスに、狂ったように魅入ります。周りの人がドン引きするくらい。
他の人にはグラスしか見えないけど、永莉の目に見えているのは、金髪碧眼の少女。
少女の名前は、コゼット。一体彼女は何者なのか? 永莉はとりつかれているのだろうか。

演出が特徴的なこの作品。『まどか☆マギカ』をはじめとした新房作品を見ていた人なら、「あっ、これはあのシーンの……」という演出が多数含まれています。
グラスに恋をする永莉の目、裸マントで呪いの言葉を述べるコゼット、入ったら出て来られなさそうな骨董品店、そっと飾られたコゼットの肖像画、そしておなじみ、シャフト的アングル。(※「コゼットの肖像」はシャフト作品ではないです)
音楽は梶浦由記。新房昭之とのタッグは、そのまま『まどか☆マギカ』に引き継がれます。

個人的にこの作品は、最も新房昭之色が色濃く出ている作品だと思います。
というのも、絵コンテ、演出と全部やっている作品はこの『コゼットの肖像』だけだから。
ミステリー、芸術、サブカルチャーなど、沢山の新房昭之が好きなモチーフを凝縮。後のたくさんの新房昭之作品に伝承されていきます。
例えば骨董品店の位置。これは『まどか☆マギカ』のほむらの家と同じ配置になっています。

新房:Y字路は好きですね。横尾忠則さんの『Y字路』シリーズが好きなので、それっぽくしたいなと。
(中略)
たまごまご:阿佐ヶ谷ですよね。
新房:阿佐ヶ谷ですね。まあ奥はああなってないです。途中までは。あとは骨董品屋自体が髑髏に見えるように作ってます。
今野:B・シュルツが描く町を思い出したりもしますね。
たまごまご:(中略)『まどか』の9話では、蛾が……。
新房:あれもそうですね。虫がたむろしているんだから、何かの形に見えてほしいなあと思って。やっぱりダリとかシュルレアリスムの作家の影響はあって。だまし絵というかね。あれが非常に好きで。
(『夜想bis+ー特集 新房監督マル秘インタビュー番外篇』より)

物陰からキャラクターを見守る演出、キャラをあえて画面からはみ出してカットする描写、あちこちに貼られた変なポスター、人形、異空間。とにかくぎゅうぎゅう詰め。
OVA三巻に入れるには濃すぎるんですよ。一度見ただけでは飲み込むの大変な作品です。
原点じゃなくて、新房昭之の原液なんです。

元々新房昭之が、アニプレックスから「ゴスロリもので」と依頼を受けて作ったのがこの作品。
10年前、ゴスとロリータが対立していた時代の記録的作品でもあります。
どういうイメージなのかは、人形作家の三浦悦子の作ったコゼットの球体関節人形を見るとイメージが膨らむと思います。
ゴスってなに? ロリってなに? ゴスロリってなんか違うの?
2004年時と今ではまた違うので、なんとも言えないのですが……コゼットは、ぼくは「ゴス」だと思います。

元からのファンにはもちろんオススメですが、やはり今まで見たことがない『まどか』のファンには、一度は見て欲しい作品。
なんでVol.0とUMD版を入れなかったのかな?という疑問はあるのですが、物語と映像を楽しむ上では特に必要はないとは思います。
「早すぎた作品」とも言いたくなってしまうのですが、このゴス感覚は2004年にしかできなかった。
まさか『まどか』がここまでヒットし、映画になることで、高画質で日の目を見るとは……何が起きるかわからないものです。

にしてもやっぱり、金髪少女は本当にいいよね。

『コゼットの肖像』
『夜想bis+ー特集 新房監督マル秘インタビュー番外篇』

(たまごまご)