中京大中京vs岐阜聖徳学園 攻守にソツのなさ見せ、会心の勝利
本塁打を放った伊藤寛(中京大中京)
攻守にソツのなさ見せ、会心の勝利!
愛知県大会を3位で通過してきた中京大中京。準決勝では、豊川に思わぬ大敗をして3位決定戦に回ったのだが、「あの負けで、悪い膿(うみ)はすべて出せました」と、高橋源一郎監督が言うように、そこからもう一度立て直して、東海大会へ向けての調整がスムーズにいったという印象である。
1〜3回までは、チャンスはあってもいくらか単調な感じだった中京大中京打線だったが、4回に先頭の3番小林君が三遊間を破って出塁すると、4番山下君は迷うことなくバント。一死二塁から伊藤寛君がセカンドのグラブをかすめるセンター前ヒットで二塁走者を返して先制。なおも、続く楠君がショートの横へヒットを放ち一、二塁。垣内君のライトフライで一、三塁となると、ここで秋季大会で初スタメンの齋木君が起用に応えて、追い込まれながらもセンターへ弾き返して2点目。さらに、9番粕谷君がライトオーバーの二塁打で二者が還ってこの回4得点。中京大中京は、完全に主導権を握った。
このリードで、先発の粕谷 太基君(2年)はこの秋一番の投球というくらいに、安定した内容だった。ヒットこそは許すものの、連打されない安定感。走者を出しても踏ん張り切れるところに、精神的な部分の強さも感じさせた。
そして、粕谷君が0に抑えている間に、それをリードするキャッチャーの伊藤寛君が8回にレフトへソロ本塁打。差を広げた。両翼99・1メートルで、センターは126メートルもありフェンスも高い岡崎市民球場で文句なしのホームランだったが、1年生ながらそのパワーは素晴らしい。9回にも中京大中京は内野安打で出塁した齋木君がバントとライトフライで三塁まで進み、相手パスボールで決定的ともいえる6点目を貰った。
中京大中京・粕谷太基投手
粕谷君は、必ずしも100パーセントの力で投げるというよりは、上手に抜いた感じで柔らかく投げられたのは大きな成長ともいえよう。ヒットこそ9本打たれたものの、慌てることなく、二度の無死一、二塁も落ち着いた投球だった。
高橋監督も粕谷君の投球は、この秋一番の投球内容だと評価していた。「力まないで投げられるようになったということが成長だと思います。ヒットは打たれてもその後をまとめられればいいと思います。投手陣は、他にも投げられる者がいますから、大分仕上がってきたと思います。広い岡崎球場でもありますから、足のある齋木を起用したのですけれども、それに応えて、守りでもいいところを見せてくれました」と、初起用の齋木君が攻守に働いたことにも喜んでいた。
欲を言えば、初回の相手失策で貰った無死二塁や、2回の伊藤寛君の二塁打と内野ゴロで作った一死三塁で得点できなかったことで、いくらか歯がゆさもあったかも知れない。それでも、0行進が続いていくと苦しくなっていくというところで、4回に下位打線が集中打することが出来たのも好材料と言えよう。
一方、9安打しながら、なかなか得点に結びつかず、結局8回に1番藤井君が放ったライトへのソロ本塁打の1点のみに終わってしまった岐阜聖徳学園。田中龍次監督は、「点を取られても、打って返して最終的には打ち勝つ野球を目指したい」と話した。結果的には、「(先発の)瀧瀬は粘れる投手なので、3〜4点をめぐる試合を予想していました。だから、それ以上を取られてしまったらしょうがないですね」と、4回に一気に守りもいくらかバタバタした感じでその4点を取られてしまったことには、ある意味では納得したともいえる様子だった。
(文=手束 仁)