日本文理vs地球環境 苦い経験から成長の兆し

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バントの構えで揺さぶる地球環境

苦い経験から成長の兆し

「決めてくれ」。延長10回裏、一死一、二塁とチャンスを作って、ネクストバッターズサークルに入った日本文理のエース・飯塚 悟史(2年)は願った。

打席の6番池田 貴将(2年)が1ボールからの2球目を叩き、打球はセンター後方へ。エースの願いが叶い、二塁走者の星 兼太(1年)がサヨナラのホームを踏んだ。「嬉しかった」とネクストの飯塚は、歓喜の輪に加わった。

今大会、ここまで18イニングで失点1のエースも、準決勝では苦しんだ。攻撃がしつこい地球環境打線に対し、終始耐えるピッチング。中でも、最大のピンチは5回だった。

1点をリードしていた日本文理だが、味方守備のミスが続き、一死二、三塁と走者を背負った。中軸に打順が廻る地球環境ではあったが、羽鳥均監督はマウンドの飯塚を見て、揺さぶりに出る。打席の3番横沢時臣(2年)は、執拗にバントの構え。スクイズを匂わせるが、三塁走者の星野晃太(2年)はスタートを切る素振りはほとんどない。完全に飯塚の投球心理を狙った策だった。

羽鳥監督の読み通り、飯塚はストライクが取れなくなる。横沢をストレートの四球で歩かせて、満塁となった。次の4番上吹越翔大(2年)にも、羽鳥監督は横沢と同様の策を取る。日本文理はキャッチャーの鎌倉航(2年)がマウンドへ行き、エースの動揺を何とか鎮めようとするが、飯塚はまたもストライクが入らない。一死満塁で、本塁でフォースプレーという状況でスクイズは考えにくい場面なのだが、バントの構えに飯塚は翻弄されていた。結局、上吹越にも1球もストライクが入らず、押し出しで地球環境が同点に追いついた。その瞬間思わず手を叩いて、してやったりの表情を見せた羽鳥監督。

しかし、これまで何度もこういう苦い経験をしてきた飯塚が、ここで踏みとどまる。続く5番の津田直輝(2年)に対し、ようやく1ストライクを取ると、2球目はショートゴロ。ショートの黒䑓 騎士(2年)からセカンドの新井充(2年)、そしてファーストの小太刀 緒飛(2年)へと渡って、ダブルプレーが完成。「打たせれば、バックが守ってくれる」と、最少失点で凌いだことが、終盤の勝負の分かれ目に繋がった。

飯塚投手は苦い過去からの成長を見せる

ゲームは6回に地球環境が1番小川啓太(2年)のタイムリーで勝ち越すが、8回に日本文理が追いつく。この8回が第2のポイントだ。

日本文理は先頭の4番小林 将也(2年)がセンター前ヒットで出塁。そして一塁ベースを回った所で、走路にいたファーストの中祐斗(2年)と接触した。二塁打にするには厳しい当たりではあったが、接触したことで走塁妨害(オブストラクション)が認められ、打った小林は労せずして二塁に進むことができた。

その後、5番小太刀が歩いて一、二塁とチャンスを広げた日本文理は、続く6番池田が二塁ベース付近へのショートゴロを放つ。これをショートの横沢がファンブル。そして二塁ベースに向かってきた走者の小太刀と接触し、横沢が倒れてしまった。この間に、二塁走者の小林が一気に本塁を目指し、同点のホームベースを踏んだ。

このプレー。通常ならば守備妨害かと思われるケースであるが、ショートの横沢がファンブルをしたため、『守備機会を終えた後の、流れの中でのプレー』と判断され、小林の生還後にプレーが一段落した所で審判団からタイムがかけられた。もし横沢が捕球をした上での走者との接触ならば、併殺を取れる場面だっただけに、守備妨害がとられていたかも知れない。その前のオブストラクションとともに、日本文理にツキがあり、勝負の分かれ目になった。

「飯塚が最少失点で踏ん張ってくれていたので、勝ち越されても、もう一度必ず流れが来ると思っていました」と話した日本文理の池田主将。8回の場面では、「このチャンスをものにしないと」と流れが来たことを感じていた。

苦しみながらも必死に耐えた飯塚は、「(昨秋の北信越大会や夏の甲子園などで)これまで色んな経験をしてきたのが、生きたと思います」と話す。苦い過去を相手指揮官に突かれたが、1点で踏みとどまったのは成長した部分を見せたれたのではないだろうか。

「準決勝を勝ったが、目標はあくまでも北信越で優勝して神宮大会に行くこと」と、決勝へ向け、大井道夫監督や選手が口を揃えた。

(文=編集部)