重責を担った両チームの4番打者

  56年ぶりの東海大会を戦う伊勢は1回、エースで4番・滝 誠(2年)の適時二塁打などで3点を先制。滝は、下手投げから繰り出す変化球を武器に、3回まで関商工打線を封じ込めた。

 関商工は4回に1点差に追い上げると、5回に4番・平田瑞貴(1年)が3ラン本塁打を放ち逆転に成功した。1点を追う伊勢は9回表、県大会でも見せた土壇場の粘りを発揮。3番・奥野貴(2年)の適時三塁打で同点に追い付いた。

 しかし関商工は9回裏、一死満塁から途中出場の日比野拓海((2年)が決勝のスクイズを決めサヨナラ勝ち。粘る伊勢を振り切った。

「4番の責任を感じて固くなるより楽しもうと思った」。身長167センチで、小柄だがパワーはピカイチ。関商工の平田は4番の貫録を見せた。 初回から3点を追いかける展開。「私も含めチーム全体が受け身になっていた」と北川英治監督。そんな沈滞ムードを払拭したのがレギュラーでは唯一の1年生・平田。

 第1打席はセンターの頭を越す適時二塁打。第2打席は内角の直球に力負けしサードゴロに打ち取られた。 一死一、二塁のチャンスで登場した第3打席。「前の打席で詰まった真っ直ぐを打ち返してやろうと思っていた」。2ストライクに追い込まれたが、前打席しびれた手の感触を思い出し直球に的を絞った。「内角のボール球に手を出させようとしたが、ど真ん中の失投になってしまった」と伊勢の捕手・村岡 樹(2年)。狙い通りの球を弾き返した平田の打球は、レフトフェンスを越える逆転本塁打となった。平田は最終回にもチャンスを広げるヒットを放ち5打数3安打4打点。4番打者としてチームに逆転勝利をもたらした。

 背番号1を付け4番打者。まさに投打の大黒柱である伊勢の先発・滝は、5打数3安打3打点と打撃でチームを牽引。投手としても苦しみながら6回までゲームを作った。

 7回からリリーフの森下航希(2年)にマウンドを譲ったが、最終回無死一、二塁の場面で再び登板。伊勢の前川光司監督は最後の場面はチームの大黒柱に託した。

 今年春までは野手。夏から投手になり、秋にエースナンバーを付けた滝。普段の生活では大学進学を目指し、毎日の練習から帰宅後2時間、机に向かう。限られた時間の中で努力して掴んだ東海大会だった。

「高いレベルでも自分たちの粘り強い野球が出来たのは自信になった」と滝は敗戦の中から収穫を感じていた。

(文=加藤千勝)