勢いに乗る大成、大泉に大勝

 1回戦で、夏の東東京でベスト8に進んだ都立江戸川を破った大成は、次は夏の西東京でベスト16に進んだ都立大泉と対戦。 初回打撃戦かと思われた試合は、2回以降、一方的な展開になった。

 まず1回表、大成は一死から2番佐藤凌太の四球、3番関口健太、4番池上 輝の連打で満塁。続く石井 智也の三ゴロで本塁封殺されたものの、7番篠田珠暉がレフトオーバーの走者一掃の二塁打を打ち、3点を先取した。

 その裏、都立大泉は、2番斎藤拓実の二塁打と2四死球で満塁とし、6番西泰佑の一ゴロは、二塁手との連携が悪く暴投となり、二者が還り1点差とした。

 大成の先発、背番号18の竹内 優貴雄は2回以降持ち直したのに対し、都立大泉のエース有吉達見はピリッとしない。2回はヒット4本打たれ2失点、3回は打者一巡の猛攻で7安打され、7点を失った。

 大成の勢いはそれでも止まらず、4回には1番林 遊之介、2番佐藤凌太の連続長打などで、2点を加え、14対2と大量リードを奪った。

 都立大泉のエース有吉は、夏は3年生の熊谷崇志とともに、先発2本柱としてベスト16進出の立役者となった。 しかしこの日の有吉には、夏のような溌剌さが感じられない。都立大泉の増子良太監督は、「夏からメンバーのほとんどが入れ替わり、守備のミスも多かった。(有吉には)守備が崩れた時に踏ん張る力はまだない」と語る。大成の18安打の中には記録はヒットでも、内野手がもうひと踏ん張りすれば処理できる打球がかなりあった。

 野手で夏のレギュラーだったのは主将で三塁手の古田龍将のみ。地に足がつかないうちに大量点を奪われた形だ。

 都立大泉は今グラウンドが工事中で使えない。「それは言い訳にならない」と増子監督。その工事も、11月中には終わる見込みという。 旧チームは秋春の都大会出場を逃しながらも、夏は旋風を起こした。「僅差で負けるより、むしろ良かったかもしれない」と増子監督が言うように、まずは大敗の口惜しさを、しっかいと胸に刻むことから、次への一歩が始まる。

 一方の大成は、大物打ちはあまりいないものの、コンパクトで鋭い振りが目立った。 特に下位打線は、グリップの握りを余しながらも、鋭い打球を飛ばしていた。 1番林、3番関口、4番池上、それに8番佐藤功輝の3安打をはじめ、先発全員安打。「振る方は調子がいい」と大成・五島徹也監督が語る猛攻であった。もっとも、五島監督は「うちはシニアで補欠だったりして、中学生の時にレギュラーだった子はほとんどいないんですよ」と言う。雑草軍団が旋風を起こすことができるか、今後の戦いに注目した。

 この試合、珍しいシーンがった。14対2で大成リードの5回表、大成は5番右翼手の石井に代えて代打に松本功輝を送った。 そして、その裏の守りでは、先発竹内はライトにまわり、松本に代えてマウンドには背番号1の池島来夢が上がっていた。ところが審判への伝達ミスで、竹内はライト、代打の松本がそのままマウンドにあがることになっていた。一度交代を告げた以上変更は認められず、マウンドで投球練習をしていた池島はいったんブルペンに戻り、マウンドには投手経験が全くないない、松本が上がった。松本は一人を右飛にきっちり抑え、池島にマウンドを譲っている。

 試合経験の少ない、秋季大会らしい光景であった。

(文=大島裕史)