大型左腕・田中好投、芝「想定外」の快勝

 1回戦で帝京を13対3の6回コールドで下し勢いに乗る日大二と、身長188センチの大型左腕・田中 裕貴を擁する芝の一戦は、試合後芝の田中 央監督が「全く想定外」と語る、芝の快勝に終わった。

 田中監督が想定外と語る背景には、選手のコンディションの悪さがあった。 実際「力が入ってしまった」と語るエースの田中は、前半ストレートがなかなかストライクにならない。ただ田中投手は、1回戦で猛打をみせた日大二打線に対し、「入りの3回をしっかり抑えることを考えていた」と語るように、悪いながらも、変化球主体に丁寧に投球を組み立てた。

 1、2回は、走者は出したものの無得点に抑え、3回は四球とエラーによる二死一、二塁のピンチで、日大二5番但野真一に右前安打を打たれ、1点を失った。しかし、ここから田中はストレートが決まり出し、徐々に投球のリズムが出てきた。長身だけに、球速以上の威圧感があるのは確か。7回、日大二の2番上原和人を三振に仕留めた内角低めの直球には力強さがあった。

 もっともこの日の田中は、威力のある直球は非常に少なく、奪三振は4。芝の田中監督が、「バランスが良くない」と指摘するように、課題の多い内容だった。それでも田中投手は日大二打線を、被安打5、失点1に抑えたのだから、潜在的な力は持っている。 帝京に圧勝した日大二打線を抑えたことにより、「芝に田中あり」として、注目されていくことになるだろう。未完の大器だが、大きく成長することを期待したい。

 一方、芝の打線は「こんな打ったのは初めて」と田中監督が語るように、調子が今一つの日大二のエース船岡 直人に13安打を浴びせ、4点を奪った。

 芝は1回、3番村田是水のスクイズで1点を先取。 3回は二死から、左前安打の村田が盗塁し、4番田中が中前安打で還し2点目、その裏、日大二に1点を返されたものの、4回には、二死二塁から9番杉浦 輝の左中間安打で突き放した。

 6回には、一死満塁の場面で8番清水悠貴が外角に大きく外れた球に飛びついてスクイズしたが、三塁走者のスタートが遅れ、併殺に。 流れが日大二に傾きかけたが、8回先頭打者である3番村田が左前安打で出塁すると、「あそこは、追加点がどうしても欲しかった」という芝・田中監督は、4番の田中に送りバントをさせた。村田は、6番西田燎平の中前安打で還り、勝負を決定付けた。

  田中はエースで4番という文字通りの大黒柱であるが、前後の打者の安打で得点した意味は大きい。単打ばかりの13安打。威圧感には欠けるが、うるさい存在になりそうだ。 1回戦大勝した日大二は、試合の入りが悪く、リズムをつかめないまま点差を広げられた。油断はなかっただろうが、甘さがあったことは否めない。トーナメントは一戦一戦、新たな気持ちで臨むことが重要だ。帝京戦にしても芝戦にしても、ちょっとした流れで、勝負は思わぬ展開になることを実感したことは、良い経験になるはずだ。

(文=大島裕史)