「花火サラウンド 自宅で愉しむ日本屈指の花火大会 厳選8大会」/シンンフォレスト

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夏の涼みは両国の出船入り船屋形船
上がる龍勢星くだり玉屋が取り持つ縁かいな

花火大会は、江戸の遺風ともいえる行事であり、嬉しい夏の風物詩でもある。
私の体験で恐縮だが、母方の実家は九州地方のとある温泉地で呉服商を長く営んでおり、夏の花火大会では自店の提供で何発かの花火を上げていた。幼いころはどの花火が自分のうちのものかと見極めようと一生懸命に空を見たものだが、もちろんそんなことができるはずもなく、次から次に打ち上げられる空の華に、いつしか心を奪われていたものである。

橋の上玉屋玉屋の声ばかりなぜに鍵屋と言わぬ情なし

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そんなわけで花火大会と聞くと心が騒いでしようがないのだが、いざ出かける段になると二の足を踏んでしまう。
花火は大好きだが、人混みは大の苦手だからだ。
この暑い中、人いきれに打ちのめされながら長い時間待ち続けることを想像しただけでも気分が悪くなる。この週末には、おそらく日本でも最も有名な花火である隅田川の大会がある
が、到底出かけていく気にはなれないのである。なにしろ大人気だ。隅田川花火大会の地元、浅草ビューホテルには「隅田川花火観覧宿泊プラン」というものがあり、抽選でないと予約がとれないほどの人気ぶりであるという。また、今年開業したスカイツリーに入居したレストランも、隅田川花火観覧を大いにアピールして席の予約を呼びかけているようだ(スカイツリーの展望台は特別料金の4,000円で予約制。すでに完売している)。しかしまあ、それも人混み遭遇は必須だろう。

そんな不精者にご提案したいのが、屋形船の利用である。汗にまみれて地上をとぼとぼ歩くのではなく、川風を浴びての花火見物は気持ちのいいものだ。何より予約さえしておけば、並んだり場所取りをしたりといった当日の苦労が皆無であるのが嬉しい。私も何回か川面の上から花火見物を楽しんだことがある。あれは気持ちいいものですよ。

では、実際に屋形船を使って花火見物に臨もうという方に注意事項である。いくつか気をつけたほうがいいポイントがあるのだ。

その1【乗る前の注意】乗り合い船なので、遅刻厳禁
チャーターで船を借りられる、という豪気な人以外は乗り合いでの利用ということになる。釣り船タイプよりは、大規模な屋形船タイプのほうが初心者には使いやすいはずだ。
船宿への集合は意外なほど時刻が早い。暗くなって花火大会が始まるのが午後7時くらいだとしたら、4〜5時間前に集合しなければいけないのが普通である。船宿のある場所から花火大会の現地まで船で移動するのにある程度かかるのは当然として、前もってその水域の場所取りをするから、船は相当早く出発するのである。当日仕事がある、という人はたぶん無理。午後半休をとって船宿に午後2時前には着いている必要がある。当然だが遅刻は厳禁で、有無を言わせずにキャンセル扱いとなる。ご注意を。
なお、ある程度の規模がある船宿なら定期便でバスの送迎をしてくれる。集合時間からさらに少し余裕を見て、この送迎バスを利用しよう。

その2【設備の注意】できれば屋上デッキのある船を
屋形船にもいろいろあるが、できれば利用したいのが「屋上デッキつき」を売り物にしている船だ。何もさえぎるものがない場所で、デッキの上から眺める花火というのはやはり気分がいい。なお、屋形船内の席はほとんどは指定制のはずだが、畳敷きのものと掘りごたつ形式のものがある。長時間乗っていることになるので、できれば掘りごたつ式を選ぼう。畳敷きのもののほうがいざとなったら寝転がったりできるイメージがあるのだが、花火大会当日はたぶん満員状態である。足を伸ばす余裕があるのは掘りごたつタイプのほうだ(寝転がりたくなるまで飲まないようにしようね)。特に浴衣を着て参加したいという女性にはお薦め。また、畳敷きのタイプは詰めこもうと思えば客を詰めこめてしまうので、掘りごたつタイプに比べて窮屈になることが多いように思う。
トイレはだいたい水洗を売り物にしているはずだが、男女別であるか、数が何基あるかは要チェックポイントである。

その3【飲み食いの注意】江戸前の天ぷらを楽しもう
ビールはだいたいの屋形船で出してくれる。別料金の場合もあるが、最初から総額に含まれているところも多いので自分たちで買い込んでいく必要はない。第一、船に乗る前に購入したらビールだってぬるくなってしまうし。買いこんでいったほうがいいのは、ノンアルコールの飲料やスナック、かわきもののたぐいだ。暑い日であれば、凍らせるタイプのペットボトルは重宝するはずである。
食事に関しては、できれば天ぷらや深川飯などを出してくれるタイプの船を利用したい。松花堂弁当などが出る船もあるが、天ぷらを出す船の場合は作りおきではなく出航してからの揚げたてを出してもらえる。きすやはぜの天ぷらで一杯やりながら、午後のひととき(たぶんまだ日は暮れていないはず)を過ごすのは乙なものだ。

その4【あまり書かれていない注意】雨天順延ができないことがある
ほとんどの屋形船サイトでは明らかにされていないことがある。荒天時の予約の扱いだ。花火大会が翌日順延になった場合の対応は船宿によってまちまちである。屋形船のほうも予約を繰り越してくれればいちばんいいのだが、そのためには船の予定を翌日まで空けておかなければならない。ゆえに、雨天で花火大会が順延になったとしても船を出す業者がいるのだ。つまり通常のクルーズにしてしまうというわけである。花火見物は通常よりもかなり割り増しの値段をとるのだが、そこで割引になるか、それとも申し込んだときの料金をそのまま取るかは、これまた船宿によって対応が違う。運だから仕方ないと諦められる人は別にいいのだが、自分が雨男・雨女だという自覚がある人は、予約前に雨天順延時の扱いを確かめて置く必要がある。
また、長時間船に乗らなければいけないということから、小学校低学年以下を客にとらないところがほとんどのはずである。乗船名簿を作る関係上前日までにその点は確認をとられるはずだが、予約前の電話などで聞いておくべきポイントである。
あ、あと船はけっこう揺れます。乗り物酔いする人は注意が必要。

今確認してみたところ、まだまだ空席はある模様だ。相場でいうと隅田川花火大会と東京湾華火祭の相場が高く、それ以外であれば大人なら1人1万円台で参加できるところが多い。上記のような注意点について確かめた上で、楽しい花火の夜を満喫してください。
以下に、屋形船での観覧が可能な花火大会の一覧を挙げておきます。
7月28日(土)第35回隅田川花火大会
7月28日(土)第34回浦安市花火大会
8月1日(水)第30回江東花火大会
8月1日(水)第26回神奈川新聞花火大会
8月4日(土)第37回江戸川区花火大会
8月4日(土)第53回いたばし花火大会(第59回戸田橋花火大会と同時開催)
8月11日(土)第24回東京湾大華火祭
10 月13日(土)第34回足立の花火大会

(杉江松恋)