──確かに。僕らメディアは、そういう見方に陥りがちです。

「でも、GKの種類って二つじゃない。そういう概念でGKが見られていたときから、それだけじゃないんだよっていうのを、分かってもらいたいと思っていて。自分としては、安定感を売りにしているわけじゃないですし、ミスをしても止めまくるタイプでもない。両方の面を持つGKがいてもいいだろうし、その二つとは違う新たな見方が生まれてもいいかもしれないし。自分が三つ目の概念を生み出すとか、自分はこうですと言うつもりはないんですけれど、何かを考えてもらえるきっかけになれたら、と思います」

──自戒を込めて言えば、日本はヨーロッパに比べてGKの理解度が低い。そういう意味でも、川島選手はヨーロッパでプレーするのが合っていると思います。GKとしてはもちろん、人間的にも。コミュニケーションのスキルも高いですし。

「向こうにいると、より自分らしくいられるかなあ、というのはありますね。こういう自分でいなきゃいけないとか、こういう自分でいたいとかっていうよりは、その時々で自分らしくいられるようになったかな。でも、日本はもちろん好きですよ。向こうも向こうで、いまは好きですけどね」

──来るべき12−13シーズンは、どこでプレーすることになりそうですか? 「イングランドかイタリアで」というコメントもありましたが?

「まだ、分からないですね。まあでも、その二つのどちらかに行けたらいいというか、ぜひ行きたいですね」

 言うまでもなく、GKは1チームでひとりしかピッチに立つことができない。試合中の交代も、試合ごとの交代も基本的には起こり得ない。レギュラー争いは、どのポジションよりもシビアだ。しかもGKは、敗戦の責任を背負わされることが少なくない。“助っ人”としプレーする外国人選手には、とりわけ厳しい視線が向けられる。

 そうした環境下において、川島はリールセSKのゴールマウスに君臨してきた。異国の地で、揺るぎない信頼を勝ち取ってきた。

 新天地はまだ決まっていないが、どんな舞台でも戦う準備は整っている。世界的なGKを輩出してきたイタリアでも、GKフォクトリーと呼ばれるイングランドでも。


取材・文/戸塚啓(スポーツライター)

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