【全文掲載】仙台首位快走に追い風。完全復活でチームに貢献する梁勇基【小林健志】
梁は試合後「今日をきっかけにしてどんどんアシストやゴールでチームに貢献できれば良いかな、と思っています」と語った。懸案だったキックの部分も復調し、完全復活を思わせる活躍ができたことで今後への自信を見せた。
■活躍の場はサイドハーフ?ボランチ?
5月26日第13節川崎戦ではケガ人が続出したことから試合中2つのポジションをこなすことになった。前半は4-4-2の左サイドハーフとして先発出場し、攻守に奮闘。フリーキックからもあわやという場面を演出していた。しかし前半チーム全体としては攻守共にうまく機能していないと見るや、手倉森監督は布陣を4-3-3に変更し、梁は3ボランチの前目のポジションでプレーした。
残念ながらその後DFの負傷者が相次いだ上、「前半後手を踏んだツケが後半に来た」と梁が語る通り疲労が見られ、いつものような守備の堅さを見せることができず、チームは逆転負けとなってしまった。しかし4-3-3の3ボランチの一角に梁が入るという新たなやり方は、今後もオプションとして見られる可能性が高いのではないかと思わせた。この布陣ならポゼッションが向上する上に、関口が復帰してきたとしても太田、関口を3トップの両翼として起用することで、梁との共存も可能になる。無論、そうなるとウイルソンと赤嶺のどちらかを外さなければならないという新たな問題も浮上するが、今後FW陣にケガ人が出た際は採用される可能性もあるだろう。
■夏場を見越したポゼッション向上には不可欠の存在
仙台は現在夏場を見越して、豊富な活動量とカウンター攻撃のサッカーのみならず、ポゼッションをして相手を動かすやり方にも挑戦しており、開幕直後と比べて徐々にポゼッションの時間が長くなっている。川崎戦の後半見せたサッカーはまさに丁寧にボールを繋いで相手を動かすサッカーで、「深く攻めた辺りでのウイルソンの2点目というものは、ああいう攻撃ならではの得点」と手倉森監督もポゼッションによる攻撃にある程度自信を見せている。まだ攻撃が単調になる時間があることから「もう少しカウンターもどこかで織り交ぜなければ」と手倉森監督はあくまで時と場合に応じてカウンター攻撃も織り交ぜたい意向だが、夏場は体力の消耗を避けるため、ポゼッションで相手を動かして、相手の方を疲れさせてゴールを狙うスタイルへと転換が図られるのは確実だろう。
そうなってくると、梁はポゼッションの向上のためには不可欠の存在と言えるだろう。ボランチに入るにしても、サイドハーフに入るにしても、相手を動かすパス出しや動きができる梁が夏場のキーマンになってくると思われる。4-4-2でも4-3-3でもどちらの布陣でも対応してプレーできるのも大きい。さらにはカウンター攻撃に切り替えた場合でもしっかり対応できる。梁の存在は仙台にとって今後ますます大きいものになるだろう。
シーズン序盤は豊富な活動量、激しいプレスで快進撃を見せた仙台。チームとしてさらなる進化を見せるためには、梁の存在は極めて重要だ。梁が今年の仙台をどう変えていくのか、大いに注目したい。
■著者プロフィール
小林健志
1976年静岡県静岡市清水区生まれ。大学進学で宮城県仙台市に引っ越したのがきっかけでベガルタ仙台と出会い、2006年よりフリーライターとして活動。ベガルタ仙台オフィシャルサイト・出版物や河北新報などでベガルタ仙台についての情報発信をする他、育成年代の取材も精力的に行っている。
Jリーグに特化したウエブメディア。リーグを深く掘り下げる情報を提供中