今日もベム・ベラ・ベロが、みんなの街の平和を守っています(?)。

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12月24日放送分最終回を好評で終えたドラマ『妖怪人間ベム』。

その素晴らしさの1つには、アニメ版の有名な主題歌の歌詞があると思う。

「♪ひとにすがた〜をみせられぬっ、けもののぉようなこ〜のか〜らだっ」
「♪はやく人間にっなりた〜い!」

どこかコミカルに悲哀を描くことで、かえって悲しさが増す見事な歌詞だが、いったい誰が書いたのだろうと、改めてふと思った。

調べてみると、作詞のクレジットは個人ではなく、「第一企画(株)」とある。
第一企画と旭通信社の合併したアサツーディ・ケイに、作詞当時の状況などを聞くべく、問い合わせたところ、こんな答えが……。
「作った人間はもう会社にいないので、すぐにお答えできません。個人が特定されるものではなく、当時はスタッフみんなが作っていたといわれていますが、そのこと自体をお話するつもりもありません」

ちなみに、個人でなく会社名が作詞のクレジットに入っている例は、他にも多数あるよう。
調べてみたところ、確かに、昔の有名なアニメソングで会社名義の歌詞となっているものは、意外なほど多い。一例を挙げてみよう。

・アタックNo.1/バン・ボ・ボン
・エースをねらえ!
・天才バカボン
・オバケのQ太郎
・ルパンIII世主題歌II
・ガンバの冒険/ガンバの唄
・侍ジャイアンツ
(以上、東京ムービー企画部)
・カムヒア! ダイターン3
(日本サンライズ企画室)

そういえば、仮面ライダーシリーズや、「コンバトラーVのテーマ」などでよく見かける「八手三郎」は、個人ではなく、東映映像本部テレビプロデューサーの共同ペンネームだということは、有名な話。

昔のアニメの場合、原作者自身が作詞をしているもののほか、会社名、共同ペンネームなどが多数あるけれど……。
いったいなぜ? アニメに詳しい編集者に聞いた。
「大きな理由としては、昔のアニメ主題歌は、今のようにレコード会社が歌手を売り出すためのタイアップではなかったから、ということがあります。曲中にアニメ作品のタイトルやキャラクター名が登場しているものも多数でしたし。また、職業作詞家のほかに『シンガーソングライター』というものが市民権を得た頃から、徐々に“個”を出すようになっていったということもあると思います」

ただし、「スタッフみんなで」作っていたのかというと、そうでないケースは多かったよう。たとえば、『ザンボット3』『ダイターン3』の主題歌作詞は「サンライズ企画室」とクレジットされているが、実際には富野由悠季氏自身が作詞を行っていたということが、『スーパーロボットジェネレーション〜ニュータイプ100%』の「富野由悠季インタビュー 21世紀への再生」で語られている。
かつてはクレジットがサンライズ企画室になっていたものの、『ガンダム』ではじめて
「井荻麟」というペンネームを使ったことに対し、こんなコメントをしているのだ。
「というのは、個のアーチスト、個の独立性を認める会社でなければ会社自体が存続しないのではないか、それがサンライズ企画室という言い方をしていると組織全体がクリエイトしているという誤解を生むからペンネームを使ったんです」

今のように、アニメ作品に全く関係ない「愛」だの「恋」だのを連発するわけではなく、きちんと内容に即したオリジナルの歌が作られていた時代。それでも、作詞の背景には、いろいろ複雑な事情があったようです。
(田幸和歌子)