ドイツでよく見かける電源スイッチ。この状態が、ONなのかOFFなのか、一目でおわかり頂けたらドイツ人。

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師走に入り、日本各地で開催中のイルミネーション点灯式。「3、2、1、スイッチ オン!」の決まり文句を聞いて思い出したのが、いまだに悩んでしまうドイツの電源スイッチの表示。日本で一般的な電源スイッチのように、「切と入」、または「ONとOFF」のように単語で表示してくれれば一目でわかるのですが、ドイツでは、「−と◯」のように記号で表示されていることが大半なのです。

当然ながら、「−か◯」のどちらかが「切る」で、もう一方が「入る」を表すわけですが、これがなかなか頭の中のイメージと結びつかないのです。例えば、台形と平行四辺形を見せられて、どちらかが「切る」で、もう片方が「入る」ですよと言われているくらい、判断に悩む選択です。あえて言うならば、「−」は消えているイメージ、「◯」は電源が入っているイメージを抱きがちですが、ドイツではちょうど逆。「−」は「点灯」で、「◯」が「消灯」を表す記号です。

「◯」という形を見たドイツ人は、日本人のように「丸」とか「円」ではなくて、数字の「ゼロ」を思い浮かべるようです。確かにドイツでは、血液型のO型も「ゼロ型」と呼ばれていますから、「◯」は即座に「無」を連想させる記号なのでしょう。しかも、選挙の投票用紙にしても、アンケートにしても、該当する欄に記入するのは、◯印ではなくて×印。テストの解答が正解でも、丸は決してつけません。つまり、×印こそが「正しいもの」なのであって、◯印に対してポジティブな印象は持たないわけです。

「−と◯なんて、本当にわかりにくい電源表示ですね」と皮肉こめてを言おうものなら、日本通のドイツ人がすかさず猛反撃してくるはずです。「日本の、ホテル予約状況画面の◯△×の方が、はるかに判りにくいですよ」と。◯印に対してポシティブなイメージを持たないドイツ人にとって、◯印=空き部屋有りだとは、とうてい想像できないことのようです。ましてや、三角形などは言うに及ばず。逆に、親しみのある×印がついている日付は、部屋が予約できそうな気がするらしいのです。
実際、ドイツ人向けの日本語講座の授業中に、「◯印の日と、二重丸の日では、どちらの方が空き部屋が多いと思いますか?」と質問してみると、大半の生徒が「◯印の日だと思う」と回答しました。二重丸はゼロがふたつ重なっているわけで、負のイメージが倍増するだけなのでしょうか。

日本の◯はドイツの×。記号に抱くイメージを国別に比較してみるのも、なかなかおもしろそうです。
(柴山香)