エペルネーのメルシエ社に展示してある巨大な樽。1889年のパリ万博の時に出展されたものでボトル20万本分のシャンパンが入ったという。

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年末年始に向けて飲む機会が増えそうなシャンパン。そこでシャンパンの豆知識を本場フランスのエペルネーとランスで聞きつつ、コネタ的におさらいしてみた。

まずシャンパンというのは、定められた製法に従ってフランスのシャンパーニュ地方で作られた発泡ワインを指す。シャンパーニュ地方以外の発泡ワインはシャンパンと呼称できない。種類は白とロゼの2種類。シャンパンの元になる果汁は白。ゆえにピンク色のロゼの場合、黒ブドウの果皮を加え後に取り出す方法、もしくは赤ワインを加えて色付ける方法を用いる。

シャンパンで真っ先に思いつくのが、“ドンペリ”の呼び名で有名な高級シャンパン、ドン・ペリニヨン。現在はモエ・エ・シャンドン社のブランドだが、以前はメルシエ社という会社の傘下にあった。しかし1970年にモエ・エ・シャンドン社がメルシエ社を買収後、ドン・ペリニヨンのブランドを自社に移行させ、現在に至っている。

このメルシエ社、日本ではモエ・エ・シャンドン社と比べて馴染みは薄いが、フランスでは同様に知名度があり、歴史的にも面白いイベントを催している。例えば1889年にパリで開かれた万国博覧会にて、メルシエ社は自社のパビリオン内でリュミエール兄弟によって発明されて間もない映画技術を使い、世界で最も早い広告ドキュメンタリーフィルムの一つを上映した。内容はブドウ畑から段階を経て生産されるシャンパンのプロセスを描いたもので、約300万人もの人が訪れたという。ちなみにエッフェル塔が建てられたのも同年の万博だ。
また1950年にはルノーの協賛でシャンパーニュ・ラリーをおこなっている。使用された車はルノー4CVという小型乗用車。見所はシャンパンが並べられたメルシエ社の地下貯蔵庫を走るコースだ。しかし一つとして割られたボトルはなかったそうだ。

モータースポーツといえば、表彰台でおこなわれるシャンパンファイトも思いつく。F1では1999年まではモエ・エ・シャンドン社のシャンパンが使われていたが、2000年からはマム社にスポンサーが変わっている。このマム社、じつは日本とも関係がある。フランスで活躍した日本人画家、藤田嗣治は当時マム社社長だったルネ・ラルーと親交が深かったのだ。ゆえにマム社の敷地には、藤田嗣治によって描かれたフレスコ画が内部一面に広がる礼拝堂も建てられている。

豆知識をおさえたら最後にシャンパンの注ぎ方をおさらい。提供する際の温度は6℃から8℃がベスト。グラスに注がれると温度は上がるので、テイスティングに最適な8℃から10℃になる。グラスの種類は、アロマを十分に楽しむためフルートと呼ばれる細長いグラスか、チューリップというフルートより少し膨らんでいるタイプが良い。そして手元のグラスにシャンパンが注がれたら……乾杯!
(加藤亨延)