地元名古屋の大応援団が駆けつけ、今日一番の声援を浴びた三浦伊織(京都)。試合前には、得意のダンス(?)も披露
 日本女子プロ野球リーグは13日、東海地区では初開催となるナゴヤドーム(名古屋市)での試合を行った。関西エリアを離れての遠征試合は、8月の西武ドーム(埼玉県所沢市)、明治神宮野球場(東京都)に続き3試合目。

 2勝7敗3分と後期戦も苦戦を強いられている京都アストドリームスは、先発の大倉三佳(25)が序盤に失点し、試合は押され気味に進んでいく。7回まで、兵庫スイングスマイリーズのエース、小西美加(27)に散発4安打と抑えられていたが、8回裏2死、相手のエラーから1点を返す。これで完封ペースから突如リズムを失った小西を攻め、エラーも絡んで一挙4点を取り逆転勝ち。兵庫は後期優勝(全20試合)へ「マジック2」だったが、京都が崖っぷちでとどまった。大倉三佳(25)は完投で4勝目。

 次戦は17日、わかさスタジアム京都(京都市)にて行われる。

兵庫 010 100 000=2
京都 000 000 04x=4
勝)大倉4勝3敗1S
負)小西7勝4敗

 両チームには東海地区に所縁のある選手が多く、この日の観客は、4,616人。西武ドーム、神宮球場の記録を超え、リーグ2番目の集客数となった(1位は京セラドーム大阪)。試合も所縁のある選手を中心に進んでいく。

 京都の先発、大倉は三重県四日市市出身。一時期は愛知県内の大学に通っていた。「たくさん応援に来てもらった。やっぱり地元は良いです」と笑う大倉はキャプテンとしても勝ちが欲しい。序盤に失点しながらも、信条の粘投を続ける。

 対する兵庫の先発は小西。彼女は京都府出身、プロ入り前は大阪を中心に活動していたが、名古屋のテレビ番組に出演。東海エリアではなじみの顔だ。また、その番組内でナゴヤドームのマウンドには何度も立っている。エースの貫禄で7回まで無失点の投球が続いた。

 2回表に併殺打ながらも3塁走者を迎え入れ、4回表には犠牲フライで、兵庫唯一の打点を挙げたのは、奥田実里(23)。奥田も大阪出身だが、日本で唯一、男子学生リーグに挑戦した女子大生チーム、愛知県にある中京女子大硬式野球部(現至学館大)のキャプテンであった。

 8回裏までは、2点に絡んだ奥田の第二の故郷での「シンデレラインタビュー」も見えていたが、2死後、ファーストの彼女の前に転がった何でもないゴロを、まさかのトンネル。「自分でも何が起こったのかわからない。ひとりで試合を壊してしまった」(奥田)エラーで1点を返される。

 京都の次打者は大倉。「追いつくなら、もう、この回しかないと思った」と、悪い流れを切ろうと力投する小西のストレートに詰まりながらも、センター前にテキサスヒット。同点打を放った。続く代打の梅本由紀(23)の2点タイムリーで逆転、試合が決まった。

 エラー絡みの得点が多かったとはいえ、終盤の逆転により試合が決着。地元所縁の選手が活躍し、初めての名古屋開催、おそらく初めて見た「プロ」の女子野球、4,600人の観客も満足したのではないだろうか。

■被安打8、失点2、4勝目を挙げた大倉三佳(京都)
 変化球が浮いていたが、粘って投げていれば、仲間が点を入れてくれると信じていた。投球内容では小西さんに負けており、5回ぐらいから焦りはあった。マウンドは傾斜がきつくて多少投げづらかった。(8回同点の場面では)もう最後の打席だろうから、ここしかないと思っていた。

■逆転2点タイムリーの梅本由紀(京都)
 自分が打つしかないと思った。スタメンを外れて悔しかった。今までないぐらいの執念と集中で打席に立った。(ここまで結果が残せず)苦しんだ分、喜びも大きい。

■愛知・椙山女学園高校出身、大声援を浴びた三浦伊織(京都)
 (5回の好機に併殺打)打てなかった…大声援がプレッシャーになったのかなぁ(笑)でも今日は大きな勝ちだと思う。中学や高校の友人がたくさん来てくれて嬉しかった。

■逆転負けを喫したキャプテンで4番打者、川保麻弥(兵庫)
 敗因は、エラーと4番!(自身4打数3三振)小西は悪くなかった。打たれてないですもん!(自責点0)エラーでリズムを崩した。こんな負け方はよくない…

■愛知・中京女子大(現至学館大)出身、奥田実里(兵庫)
 エラーは焦ったわけではない。何が起こったのかわからない。あれでチームのリズムを壊した。申し訳ないです。悔しい。本当に悔しい…

(取材・文=小崎仁久)

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