台風25号で水位が上昇し、流木などが流れついた高滝ダム(9月30日、千葉県市原市で)

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 台風25号による豪雨に見舞われた9月21日夜、千葉県市原市の「高滝ダム」はかつてないほど水位が上昇し、「緊急放流」を行うことが一時決定された。

 結果として緊急放流は行われなかったが、実施すれば下流域に大きな被害が出た可能性があった。「ぎりぎりの決断」(熊谷知事)の舞台裏に迫った。(河津真行)

 ダム湖畔にある倉庫は屋根まで濁流につかり、1週間が過ぎた今も大量の流木が打ち上げられたまま--。

 高滝ダムが完成したのは1990年。大雨のたびに洪水を引き起こす「暴れ川」だった養老川の治水と人口増加に伴う水源確保などを目的に県が整備した。ダム湖は「高滝湖」として親しまれ、ボートでの湖面散策やワカサギ釣りなどが人気だ。

 県は台風25号の接近に備え、9月17~18日におよそ250万トンの事前放流を実施し、水位を36・9メートルから1・3メートルほど下げる措置を取った。

 だが、20日午前2時頃に降り始めた雨は強さを増し、21日午後1時から集中的な豪雨に。午後6時には1時間降水量が30ミリを超える激しい雨となった。

 一時、千葉豪雨時の最大量の1・7倍となる毎秒1036トンの水が流入する未曽有の事態となり、ダム機能は限界に近づいていた。

 県が午後9時半からの緊急放流を発表したのは午後8時半。高滝ダムでは、緊急放流の判断基準となる「操作開始水位」は39・7メートル、洪水時に水をためられる最高水位「サーチャージ水位」は40・3メートル、ダムの安全を保てる最大水位「設計洪水位」は41・5メートルと定められている。発表時の水位は39・13メートルに達し、操作開始水位を超えるのは時間の問題だった。

 養老川沿岸の市原市に通告したのは午後8時過ぎ。5万人以上になると見込まれる避難者を「全て避難させるのは限りなく難しい」(小出譲治・市原市長)状況だった。

 しかも、この時点で養老川の一部は危険水位を超えていた。緊急放流をすれば氾濫する可能性が高い。県水防本部は、降水予想とダムの水位を見比べながら、ぎりぎりの判断を続けた。

 県が一転して緊急放流の見合わせを発表したのは、午後10時50分。この時点でサーチャージ水位を超えていたが、雨脚が弱まり、設計洪水位には達しないだろうと判断した。

 地元関係者は「ダムが完成して以降、養老川の氾濫はほとんどなかったので避難していない人も多かった。緊急放流となれば数千軒が冠水し、人的被害も出ていたかもしれない」と話す。

 30日に高滝ダムを視察した熊谷知事は「ぎりぎりまで担当部署が見極め、結果的に下流の方々を守ることができた」と振り返った。

 台風による被害は深刻だ。水位上昇で倉庫に保管されていたボートのバッテリーや充電器が水につかり、160台あったボートは30台ほどが壊れた。高滝湖観光企業組合の根本敏夫専務理事は「被害額は少なくても1500万円を超えるだろう。これからワカサギ釣りでにぎわう季節となるが、相当流されたはず。営業再開はいつになることか……」とため息をつく。

 完成から35年以上がたち、堆砂(たいさ)でダムの治水機能が低下しているのではないかとの声もある。熊谷知事は「しゅんせつと貯砂ダムの整備を、スピードアップして実施していきたい」と話した。