推進派のトランプ大統領、AIは「自主規制」 中間選挙迫り…“AIとデータセンターへ非常に懐疑的”な世論などにポーズ?
AIの名称をSIに変更する、とトランプ大統領が大統領令に署名しました。SIは、「Super Intelligence=超知能」ということですが、何が狙いなのでしょうか。
ここからは、アメリカの特派員などを経験し、現在のトランプ政権誕生の際には日本テレビ報道局の国際部長を務めていた小林史・日本テレビ解説委員の解説です。
■「超知能」あくまで米政府内での呼び方
AIのAは「Artificial=人工的」と、ややネガティブなイメージもありますが、これを「スーパー」、つまり「人の知能を超える」という表現に変えることで、マイナスイメージを払拭する狙いもありそうです。
ただ「SI」はあくまでアメリカ政府内で、この呼び方を使うということで、私たちまでSIと呼ばなければならないわけではありません。
これまでトランプ大統領は「AIが人類を滅ぼすというのはデマだ!」などと発言していて、AI開発を強力に推し進めたい立場です。
■AI規制“とりあえずやってる感”?

その一方で、今回、AI界をけん引する企業トップらをホワイトハウスに招き、AIの管理や監査の強化を求める合意書に署名しました。
ただ、今回の合意書をみてみますと、AIが人間が意図した通りに動作するよう社内の監視体制を整備することなどが謳われていますが、国や政府による強制力を持つ規制ではなく、罰則規定などもないため、あくまでも「企業側の自主規制」にとどめた内容になっています。
また、トランプ大統領はこの署名の際、「AI開発には、勝者と敗者しかいない」と発言していて、中国などを念頭にAI開発を急ぐ姿勢を崩していません。
アメリカ政治に詳しい小谷哲男教授は、トランプ大統領の根底には「規制すべきではない」との考えがあり、今回の自主規制についても実効性は「不十分」で、AIの規制について“とりあえずやってる感”を出したかったのではないかと指摘しています。
■高まる規制強化の声を無視できず

--“とりあえずやってる感”を出したいとしたら、どのような思惑?
それには2つの理由が考えられます。
1つは、「高まる規制強化の声を無視できなくなった」点です。
9月の動きだけをみても、国連の安全保障理事会の場で、オープンAIのCEOらAI企業のトップたちから、AIの暴走などを懸念して安全性をめぐる国際的な基準を求める声が相次ぎました。
中でもオープンAIは「許可されていない行動をとる」などの問題が確認されたとして、AIの最新モデルの公開を急きょ中止しています。
また、アンソロピックも、投資家向けの資料で「人類に壊滅的な被害や存亡に関わるリスクをもたらす可能性がある」と自社製品の安全性について警告しているのです。
■AIとデータセンター「共和党内でも半数近くが反対派」

そして2つ目が、「中間選挙への意識」です。
中間選挙がおよそ1か月後に迫るなか、アメリカの世論調査では、「AI開発のスピードが速すぎる」と感じる人が67%にものぼっています。
小谷教授も、「今、アメリカの世論はAIと、AIを動かすのに必要なデータセンターに対して非常に懐疑的で、共和党内でも半数近くが反対派になっている」と指摘しています。
トランプ大統領としては支持率が低迷するなか、有権者の懸念にしっかり向き合っているというポーズを見せる必要があったと言えそうです。
(9月30日放送『news zero』より)