【藤 和彦】強まる米の圧力、ベネズエラも中国離れ、そしてネパール大災害も…中国を苦しめる「四方八方の逆風」の正体
首脳会談前、米中の攻防
9月24日の首脳会談を前に、米中両国の動きが活発化している。
ロイターは4日、「習近平国家主席がワシントン訪問時に大規模な企業代表団を同行する準備を進めている。習氏が企業トップを外遊に帯同させることは珍しいことだ」と報じた。
中国側は中間選挙を控えたトランプ大統領に経済面で一定の成果を提供し、首脳会談の成功を勝ち取りたい腹積もりなのだろう。
これに対し、米国側は中国への圧力を高めている感がある。
米ノースカロライナ州で8月31日から2日間にわたって開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後に発表された議長声明の中で、米国は貿易不均衡や重要鉱物の輸出規制に関して中国を名指しして牽制した。中国の昨年の貿易黒字が1兆1800億ドルに達したことが背景にある。
ベネズエラも中国離れ
トランプ政権が8月末にベネズエラの原油埋蔵量約650億バレル(同国の埋蔵量の5分の1)を支配下に置く計画を発表したことも中国にとって痛手だ。
中国は融資の見返りにベネズエラの原油を安価で確保してきたが、米国の横やりにより、これがご破算になってしまうのは確実だ。
ベネズエラで、6月24日の大地震を契機に中国資本に対する不満が広がっていることも気がかりだ。中国企業などが手掛けた住宅群が瓦礫と化したため、「手抜き工事だ」との批判が高まっており、「中国離れ」が広がる可能性は排除できなくなっている。
中国側の米国への反応は抑制的だが、内心忸怩たる思いでいることは間違いない。
ネパール大災害とくすぶる火種
ネパールの大災害も中国にとって頭の痛い問題だ。
災害現場となった国境付近のインフラの整備は、習近平政権が進める巨大経済圏構想「一帯一路」のプロジェクトの一つだからだ。
今回の大災害の直接の原因は地球温暖化による氷河の崩落だが、「温暖化防止に資する再生可能エネルギー開発事業が同地域で急速に進められたことも一因だ」との声も強まっている。
インドと国境紛争を抱える中国は、ネパールを南アジアへの窓口として重視してきたが、今回の大災害のせいで、両国を結ぶヒマラヤ横断鉄道などの重要プロジェクトが頓挫するリスクが生じている。
ネパールに隣接するチベット自治区の動向も要注意だ。亡命チベット人や人権団体らが「中国政府が被害を過少に報告している」と非難しており、政情が不安定化する危険も生まれている。
ネパールの大災害を受けて、中国がヒマラヤの東で建設中の世界最大規模のヤルンツァンポ川下流の水力発電事業にも再び注目が集まっていることも厄介だ。
中国は昨年7月、チベット自治区ニンティで総投資額1兆2000億元(約28兆6000億円)規模の水力発電事業に着工した。2000メートルの落差を利用して年間3000億キロワット時に上る電力を生産する計画だ。発電量は現時点で世界最大の湖北省の三峡ダム(年間882億キロワット時)の3倍以上になる見込みだ。
だが、ヤルンツァンポ川の下流は、今回の被害に遭った地域と同様、地殻活動が活発であるため、大災害のリスクが高いと多くの専門家が警告を発している。ヤルンツァンポ川の下流に位置するインドは、中国の水力発電事業に懸念を表明してきたが、その懸念を一層強くしたことだろう。
後編記事『劣化・故障の恐れのある車が260万台に…世界を席巻したはずの中国製EVに待ち受ける深刻すぎる問題』では、2か月連続で50を割った製造業、株価急落を招いた不動産規制、そして中国の新エネルギー車に浮上した深刻な問題を取り上げる。
