ひよりさんは「30代前半」「年収800万円」の男性を理想としたが、男性側にももちろん「理想の条件」はあるのだ

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結婚相手は年収2000万円が一番幸せ」--。2026年7月、フジテレビ系「ぽかぽか」での、女子アナによる発言が炎上した。一般女性であっても「1000万円はほしい」といった発言はしばしば見られ、物議をかもしている。相手に高収入を求めるのは「身の程知らず」なのか、「インフレが進む首都圏では当然」なのか。FPの上原千華子さんが、婚活女性が知っておくべき「幸せになるため条件」を紐解く。

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【Case】「30歳になったから妥協したのに…」年収350万の事務職女性が直面した婚活の現実

 都内の専門商社で働くひよりさん(仮名、30歳)は、数ヶ月前にとある結婚相談所に登録したものの、お見合い自体がなかなか成立せず、いら立っていた。

ひよりさんは「30代前半」「年収800万円」の男性を理想としたが、男性側にももちろん「理想の条件」はあるのだ

 ひよりさんの年収は約350万円。決して多くはないが、実家暮らしということもあり、ヘアメイクやファッションにそれなりの金額を投じてかわいらしい雰囲気を保っている。20代半ばごろは、合コンやマッチングアプリで声をかけられることも多く、「年収1000万円超の男性との出会いも夢ではない」と考えていた。

 しかし、気づけば独身のまま30歳になってしまった。周囲の友人が次々に結婚を決める中、焦りはじめたひよりさんは、結婚相談所に入会。登録時のカウンセリングでは、「私ももう30歳になりましたし、高望みするつもりはありません。同世代で年収800万円くらいの、普通の会社員男性を紹介してください」と申し出た。

 担当者から返ってきたのは思いがけないアドバイスだった。「30代前半の男性で年収800万円以上となると、ご紹介できる方は限られてしまいます。年齢層か年収の幅を広げては」というのだ。ひよりさんは「まずは800万円以上で登録します」と押し通したものの、実際にその後、お見合いそのものになかなかたどりつくことができなかった。

「子どもを2人くらい、早めに生んで、子育てに専念したい。東京で子どもを2人育てるとなると、最低限それくらいは必要だと思うんです」とひよりさんは納得いかない様子だ。

【FPの助言1】稼ぐ男性も「専業主婦希望」を避ける時代

「ひよりさんの気持ちもわからないではありません。東京23区の新築マンション価格が平均2億円を超える中、23区在住の子育て世帯の過半数は世帯年収1000万円以上ですから。妥協してもせめて800万円は、といいたくもなるのかもしれませんね」

 FPの上原千華子さんはそう苦笑しつつ、ひよりさんの「高望み」についても指摘する。

「ただし、この世帯年収1000万円以上というのは、その多くが妻も正規雇用で働いて実現している数字です。夫だけに背負わせるのは重過ぎるのでは?」

 転職サービスdodaの「平均年収ランキング2025」によると、日本の30歳男性の平均年収は472万円、女性は387万円。30代全体でみても、年収800万円以上の男性は6%弱にとどまる。「800万円でいい」というのは現実が全く見えていない条件設定というわけだ。

 これまでさまざまなマネー相談にのってきた上原さんは、高収入男性がパートナーに求める条件の変化も指摘する。

「昔であれば、年収の高い男性は『家庭を守ってくれる専業主婦』を求めるイメージがありました。しかし近年は、年収の高いハイスペックな男性も、女性に対して稼ぎや自立したキャリアを求める傾向が強くなっているのを感じます」

 額面の給与が高くても、社会保険料や税金の負担が重い現代においては、1人で家族全員の生活費や重い住宅ローン、教育費を背負い続けるプレッシャーは計り知れない。

「今や、30代カップルの約8割が共働きという時代です。仮にルックスや性格が同レベルの女性が2人いたら、仕事を辞めて自分の稼ぎに依存しようとする人よりも、しっかり働いて世帯収入を一緒に増やしてくれる『パワーカップル志向』の女性を選ぶのは、男性側からすれば合理的な判断です。専業主婦願望そのものが、現代の婚活市場では大きなディスアドバンテージになってしまうわけです」

【FPの助言2】「1人で1000万円」より「2人で500万円ずつ」が年間51万円も手取りが多い

 上原さんは、別の面からも、ひよりさんに共働きを目指すよう説く。

「日本は、稼ぐほど税率が上がる累進課税制度が、世帯ではなく個人に適用されます。そのため、夫が1人で年収1000万円を稼ぐ世帯と、夫婦それぞれが年収500万円ずつ稼いで世帯年収1000万円にしている家庭では、課される税率が異なるのです。そのため、手取り額でも大きな差が生まれます」

 上原さんの試算によると、夫が一人で1000万円を稼いだ場合、年間の手取り額は約725万円になる。一方、夫婦2人で500万円ずつ稼ぐ場合、世帯合計の手取り額は約776万円になる。共働き家庭のほうが、年間で約51万円、月額にして4万円以上も手取りが多くなるのだ。

 共働きによるメリットは、毎月の手取り額の差だけに留まらない。夫の収入にのみ依存している家庭で、その夫が病気や会社の倒産で働けなくなったりすれば、その瞬間に世帯収入は、傷病手当金や失業手当頼みになってしまう。しかし、夫婦それぞれが自立して稼いでいれば、どちらか一方が倒れても世帯収入が完全に途絶えることはない。妻自身が経済的な自立を保ち、キャリアを継続できること自体が、変化の激しい現代を生き抜くための最強の保険になるのだ。

 上原さんは、婚活に行き詰まるひよりさんのような女性たちに向けて、発想の転換を促す。

婚活で望ましい相手の年収を考えるときは、『自分自身の収入と、相手の収入を合わせていくらにできるか』という世帯年収の視点を持つことが何よりも大切です。もし自分が年収350万円を稼ぎ続けられるなら、相手の男性は年収450万~500万円前後という、ごく平均的な同世代の年収で十分に目標の800万円台に到達できます。平均的な給与水準の男性なら、婚活市場には数多く存在しており、マッチングの確率は一気に上がるかもしれません」

「ハイスペック男性に養ってもらいたい」という幻想を手放し、自らも社会と繋がりながら、パートナーとともに「2人で1000万円」を目指していく。そんな2人でリスクを分け合うチームづくりをめざすことこそが、30代の女性が幸せな結婚を掴み取るための近道と言えるだろう。

※プライバシー保護のため、記事で紹介する事例は、具体的な状況の一部を変更しています。

今回のアドバイザー/上原千華子さん
金融教育家/ファイナンシャル・セラピスト。欧米投資銀行勤務歴17年、個人投資家歴25年以上。AFP、証券外務員一種、NLP(実践心理学)マネークリニック(R)認定トレーナー。2018年、ウェルス・マインド・アプローチ創業。資産運用講座を実施し、2022年より「3ヶ月マネー実践講座」を提供開始。心理学を取り入れたライフプランと資産運用をアドバイスしている。現在は企業・大学でも登壇し、延べ5000名以上に金融教育を届けている。著書に『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)。

取材・文/鷺島鈴香