後悔しています…“娘と同い年”の25歳男性と不倫した年収120万円・50歳パート妻。「財産分与ゼロ」で家を飛び出した5年後の〈重すぎる代償〉【弁護士が解説】
「令和6年 司法統計年報 家事編」によると、離婚の原因として挙げられる「異性関係」のトラブルは、男性では3位、女性では5位となっています。不貞があった場合、離婚を求める側としては「一切の財産を渡したくない」と考えるのが本音ですが、こうしたケースで「財産分与」はどのように扱われるのでしょうか。本記事では、弁護士の山村暢彦氏が、事例をもとに財産分与のポイントを解説します。
娘と同い年の男性と不倫…離婚を懇願する50歳妻
「お願いします。離婚してください」
ヨウスケさん(仮名・56歳)にそう懇願するのは、妻のヒトミさん(仮名・50歳)です。原因は、ヒトミさんの不倫が発覚したことでした。
ヒトミさんは、パートとして近所のスーパーで働いており、そこで契約社員のケイタさん(仮名・25歳)と出会いました。母親とうまくいっていないというケイタさんの相談に乗るうち、だんだんと恋愛関係に発展してしまったのです。
夫婦関係は決して悪くなく、25歳の一人娘もすでに独立しています。ヒトミさんも穏やかに夫と生活していくつもりで、離婚など考えていませんでした。
ところがある夜、夫の就寝後にケイタさんから誘いの連絡が入り、ヒトミさんは家を抜け出して会いに行ってしまいます。
明け方帰宅すると、ヨウスケさんが待ち構えていました。
「なにか、隠していることがあるよな?」と詰め寄るヨウスケさんに、ヒトミさんはとうとうケイタさんのことを告白しました。
夫からの「許してやらないこともない」で溢れ出した積年の不満
それを聞いたヨウスケさんは、意外な言葉を投げかけます。
「いますぐに謝れば、許してやらないこともないぞ」
しかし、ヒトミさんの頭に浮かんだのはこれまでの不満ばかりでした。
ヨウスケさんは亭主関白で家事は一切ノータッチ。子育てもワンオペで、どれだけ助けてほしくても手伝ってくれることはありませんでした。
娘が独立したあとも、夫は平日の帰宅が夜23時過ぎになるため、ヒトミさんは夫の帰りを待って一緒に夕飯を食べ、毎日深夜25時過ぎに就寝。翌朝も弁当作りのために5時半に起床し、長年家族のために身を削る生活を送ってきました。
これまでの記憶がよみがえり、ヒトミさんは気づけば「許してもらわなくても構わない。お願い、離婚したい」と口にしていました。
財産分与なしで離婚に合意…5年経って気づいた「失ったもの」の重み
妻は謝って許しを請うと思っていたヨウスケさんは耳を疑い、怒りに震えながら答えました。
「わかった、それなら出ていけ。当然なにもやらないからな」
ヒトミさんも自分に非があるのだからと納得し、親にお金を借りて家を出ました。パート収入は年120万円ほどで生計は立てられないため、スーパーは退職。ケイタさんとの関係もいつの間にかギクシャクし、やがて自然消滅してしまいました。
もうすぐ離婚して5年。医療事務の資格を活かして病院で正社員として働いていますが、家計は楽にはなりません。
「財産分与とか、ちゃんと話し合っておけばよかった……」
ケイタさんとの関係が壊れたことで、自分の軽率な行動をようやく深く反省したヒトミさん。しかし同時に、勢いで家を飛び出し、なにも取り決めずに離婚してしまったことも後悔しています。
【弁護士が解説】不貞の事実と「財産分与」は別問題…感情で動くリスク
本件でまず押さえるべきなのは、「不貞行為をした側であっても、当然に財産分与を受けられなくなるわけではない」という点です。
財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を清算する制度であり、預貯金、不動産、退職金などが対象になります。夫名義の財産であっても、妻が家事や育児を担い、家庭を支えてきた事情は考慮されます。
もっとも、不貞行為をした側に一切影響がないわけでもありません。不貞は慰謝料の問題として整理されるのが基本ですが、実務上、慰謝料と財産分与を全体として調整する形で合意することもあります。そのため、「不倫をしたのだから財産分与はゼロ」とも、「不倫と財産分与は完全に無関係」とも単純にはいえません。
また、財産分与の請求期間にも注意が必要です。従来は離婚から2年以内でしたが、2026年4月1日施行の改正により、離婚成立の日から5年以内に延長されています。ただし、離婚時期や合意内容によって結論は変わります。
感情的に家を出る前に、離婚するかどうか、財産分与・慰謝料をどうするかなどを、分けて考えるべきだったと思います。不貞の責任があることと、婚姻中に形成した財産の清算をなにも確認せず放棄することは、別の問題です。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

