白石麻衣は令和の“実写化クイーン”だ どんなジャンルにも溶け込める俳優としての強み
『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)や『恋する警護24時』(テレビ朝日系)など2024年も出演作が続いている白石麻衣。現在放送中の火曜ドラマ『オクラ』(フジテレビ系)でも新たな一面を見せており、俳優として本格化してきた印象がある。この先『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』(以下、『聖☆おにいさん』)や『アンダーニンジャ』など、原作作品への出演も増えており新たな“実写化クイーン”としての呼び声も高い。
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近年の出演作として、幼少より「一族のお姫様」として大切に育てられ、周囲を困らせるほど気の強い性格の犬堂愛珠を演じた『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)、初刑事役で髪型を大胆イメチェンし挑んだ警察官・鐘羅路子を演じた『風間公親-教場0-』(フジテレビ系)など、自身の世間のイメージに囚われない役柄を演じ、常に挑戦を続けてきた。
夏の風物詩ともいえる人気シリーズ『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2023』(フジテレビ系)で見せた“恐怖の演技”も印象的だった。7年ぶりに主演を務めた白石は、カフェの新規オープンを控え、責任者として開店に向けて奮闘する女性・向井絵美を演じた。白石は常に動じない芯の強いイメージのせいか、ホラーで見せる恐怖の演技はいつも新鮮だ。ロッカーからだれのものとも知らない声が聞こえてきた時のじわじわと表情が恐怖に侵されていく白石の演技には惹き込まれた。
『恋する警護24時』も白石の代表作として記憶されていくことだろう。同作で白石が演じたのは、Snow Manの岩本照演じるボディガード・北沢辰之助に警護される弁護士・岸村里夏。予告映像から白石「ボディーガードなんていりません」「目の前で素っ裸で踊ってやろうか!?」という発言が話題となったが、次第に自分の気持ちに気づき辰之助に思いを告げたり、殺人の容疑で逮捕されてしまった辰之助に「あなたを助けたい」とまっすぐな目線で伝えたり、ストーリーが進むにつれて複雑な感情を表現した。辰之助とのベタベタしすぎないツンデレ関係は本作の見どころ。白石は人間の微妙な感情の変化や他者との距離感を見極めて演じるのが本当に上手い。
10月8日よりフジテレビ系で放送がスタートした『オクラ』ではまた一味違う役に挑戦している。捜査一課特命捜査情報管理室・通称“オクラ”所属の女性刑事・結城倫子は元ヤンキーで、気もけんかも強い勝ち気な性格。白石本人は「倫子は曲がったことが嫌いな、まっすぐ生きている女の子なんですけど、私も結構寄り道をしないタイプなので、自分と似ている部分もあるなと。そういう自分がすでに持っている軸は倫子にも活かせるなとも思いつつ、言葉遣いなどは全く別なので、「強く伝わるように言わないと」と心がけています」と語っている(※)。
果たしてどんな強気な女性が見られるのかと楽しみにしていたら、『テッパチ!』(フジテレビ系)の桜間冬美とも、『風間公親-教場0-』の鐘羅路子とも違った意味で強烈だった。第1話から吉岡雷(前田旺志郎)に舌打ちをお見舞いし、飛鷹千寿(反町隆史)には「いいからさっさとやれ!」と辛辣な一言を繰り出す。ここまで喜怒哀楽をはっきりと表した役は珍しく、白石の新たな一面が見られたような気がした。かといって、嫌味ったらしく感じないのは白石の魅力である、自然体なセリフ回しや表情、所作だけではなく、そこで生まれるいい意味でドライな演技は作品で悪目立ちしない。どんな作品、どんなジャンルでも溶け込むことができるのは俳優・白石麻衣の強みなのかもしれない。
この先、『聖☆おにいさん』や『アンダーニンジャ』の出演が控えている。白石は過去にも『やれたかも委員会』(2018年/MBS・TBS)や『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』(Netflix)といった漫画原作の作品にも出演し、漫画的なキャラクターを実写としてのリアリティを持たせる白石の演技が高く評価されてきた。筆者は『聖☆おにいさん』を試写したが、白石の振り切った演技には驚かされた。まるで2次元のキャラクターが画面の中で生きているような存在感。それでいて、実写映画として違和感のないリアルな佇まい。この先いつか、新たな“実写化クイーン”と呼ばれる未来がやってくるだろう。
参照※ https://realsound.jp/movie/2024/10/post-1801982.html(文=川崎龍也)