1トップで先発濃厚な小川。目に見える結果で勝利に導きたい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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 2026年北中米ワールドカップの早期出場権獲得を現実にしたい日本代表にとって、11月のインドネシア&中国のアウェー2連戦は重要な意味がある。ここで勝点6を挙げられれば、2025年3月シリーズでの突破決定が濃厚になる。

 W杯優勝という大目標を果たすうえで、準備時間は長ければ長いほどいい。高温多湿のゲロラ・ブン・カルノ・スタジアムで7万8000人の大観衆に囲まれるであろう15日のインドネシア戦は、最初の関門と言える。

 そこに向け、日本代表は12日に27人全員が集合。練習メニューはフィジカル調整中心だったが、各選手がポジションを取った状態でのシュート練習も盛り込まれ、本番への本格的な準備が始まった印象だった。

 そこで注目されたのが、今シリーズは怪我で選外の上田綺世(フェイエノールト)不在の攻撃陣。1トップには小川航基(NEC)、大橋祐紀(ブラックバーン)、古橋亨梧(セルティック)の3人が入ったが、これまでの実績を重んじる森保一監督は、小川を2戦続けて先発起用するだろう。
 
「僕の強みにはヘディングがあると思うんですけど、今回の試合は間違いなく相手が引いてくる時間帯が絶対に出てくる。そのなかで何が有効かと言うと、クロスになってくる。自分がボックスの中で何ができるかが本当に重要なカギになってくる。そこは味方としっかりコミュニケーションを取って仕留めたいと思います」と、本人も自身のストロングを活かしつつ、プレーする構えだ。

「インドネシアがどう来るか分からないし、もしかしたら前から来るかもしれないんで、いろんな準備が必要になりますけど、航基は『崩し切る前に上げてくれ』とかシンプルなプレーを僕に要求してくる。ボックス内の嗅覚は凄いものがありますし、そこは信頼しています」と、クロスを上げる側の堂安律(フライブルク)も語ったが、小川のストロングを積極活用しつつ、外からの攻めを意識的に仕掛けていくことが肝要だろう。

 小川が高さで競り勝ってくれれば、2列目に入るであろう南野拓実(モナコ)や鎌田大地(クリスタル・パレス)、久保建英(レアル・ソシエダ)といった面々もこぼれ球に反応しやすくなる。小川自身も「シャドーの選手たちに前向きにプレーさせることが大事」と強調していた。

 今の森保ジャパンを見ると、2列目アタッカー陣が重要な得点源になっているのは周知の事実。彼らの能力を引き出すような黒子の働きもFWには強く求められる。小川も重要な役割をよく分かっているはず。リスタート時の工夫も含めて、やるべきことは少なくないのだ。

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 一方で、今年1〜2月のアジアカップの対戦時のように、インドネシアが前がかりで挑んでくる可能性も否定できない。前回のゲームでは、相手守備陣の背後にスペースが生まれ、堂安や伊東純也(S・ランス)が素早い動き出しからそこを突き、上田のゴールにつなげていた。そういう展開になれば、小川は前線でボールを待つターゲットマン的なプレーだけではなく、献身的なアップダウンも要求されてくるのだ。

 ジャカルタの12日17時半の練習開始時の天候は曇りで、気温26・5度、湿度91%。相当な蒸し暑さだった。試合当日はスコールの可能性もあり、もっと過酷な環境を強いられるかもしれない。

 ぬかるんだピッチ上で走力を発揮するのは大変なことだが、小川はそういう多彩な役割もこなし、絶対的エースになれる選手だということを示す必要がある。
 
 もともと東京五輪世代のエースFWは彼だったが、ジュビロ磐田に在籍していた2018〜21年にかけて足踏み状態を強いられたことで、上田の台頭を許し、後塵を拝する格好になっていた。長いビハインドを取り戻すのは今しかない。舞台は整ったと言えるのだ。

「僕自身、ここに来るまでに本当に長い時間がかかってしまったけど、この時間を取り戻すくらいの活躍をしないといけないと思っているので。自分の過去もしっかりと吸収して、次の試合に準備をしたいと思います」と本人も神妙な面持ちでコメントしていたが、様々な思いもエネルギーにして、まずはインドネシア戦でチームを勝たせるゴールを奪うこと。それが彼に託される最重要タスクと言っていい。

 小川を軸とした新たな攻撃陣がどんなバリエーションを見せてくれるのか。そこに注目しつつ、インドネシア戦を慎重に見極めたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)