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現代フェイスデザインのトレンド

カーデザインは面白いもので、同時期に同じようなデザインのクルマが一斉に出たりします。

【画像】マイチェンのポイントはVモーションとグリル 画像はこちら 全13枚

これは、もちろん誰も似せようと思ってる訳では無いのですが、何かきっかけになるコンセプトカーなどの印象が、全世界のデザイナーに焼き付くんでしょう。


ノートのフロントビュー。Vモーションとグリルが、グラデーションでボディに繋がっている様なイメージに見える。    日産

カーデザインのパターンは、実はそれほどありません。多くは今あるものの組み合わせでデザインされるんですね。そんな中フレッシュなデザインが出ると、日々新しいデザインを考えている私たちは「この手があったか!」と心に刻み込まれるのです。

さて、現代カーデザインのトレンドを牽引しているEVは、カーデザインに影響する特徴のひとつに『ラジエターのための開口部が無いこと』が挙げられます。いや、開口部は必要なのですが、エンジン車に比べてだいぶ小さくて済むのです。

その結果、グリルは要らなくなりました。グリルは車格感の象徴としてとても都合が良いものだったのですが、EVが急速に発展している現在、従来的なグリルに古い印象を持つ方が多くなりました。

しかしエンジン車は開口部が無いと成立しません。そんな中、生まれたデザインが『開口部のグラデーション』です。
これまでグリルとボディは明確に分けていたものですが、境界線を曖昧にすることでグリルの存在を和らげ、ボディ全体の塊感で見せようとする手法です。これが顔まわりのトレンドのひとつになっています。外国車ではプジョー、日本車ではレクサスが積極的に取り入れていますね。

表現はやや異なりますが『デジタルVモーション』も、それらの発展系だと感じます。

多くの制約がある、マイナーチェンジの難しさ

ノート、オーラのヘッドランプは共に、マイナーチェンジ前と同形状の様です。

マイナーチェンジ開発の際、社内では前モデルに対して『変化感』を求められるものですが、その為にはまずヘッドランプを変えることが一番簡単なんですね。しかし、ご想像の通りヘッドランプの変更は、ものすごくコストがかかるんですよ。


オーラのフロントビュー。ヘッドライト下の3本のパーツは、Vモーションの縦方向の残像のような効果を狙っていると思われるが、意図した見え方になっているか。    日産

バンパーとグリルのみの変更で、『デジタルVモーション』を表現しないといけないというのは中々難しそうです。でもノートは、元々ヘッドランプの形状がシンプルだったので、その点は違和感なくまとまっていますね。ヘッドライトと、その下2本のシルバーパーツでデジタルVモーションを表現しています。

近くで見るとややぶっきらぼうについているように見えるシルバーのパーツが、遠目で見るとグラデーションに見えます。ただお客さんがショールームで見る際は距離が取れないので、もしかしたら理解が難しいかもしれません。

それに対しオーラの方は、元々ヘッドランプにVモーションのシグネチャーランプがついているので、ヘッドライトの外形自体がかなり複雑な形状をしています。こちらのデザインはハードルがとても高かったのではないかと思います。

私が注目した点は、スポーティ志向から、高級志向へ表現が変わったという事です。

元々薄いヘッドランプを生かし、下のボディ色部分との対比でとてもスポーティに見せていました。そこが今回、ボディ色と黒色部のバランスが大きく変わったので、マイナーチェンジ前に比べて顔が高く、大きくなったと感じます。

『デジタルVモーション的高級感』とは?

私は『小さな高級車』という概念が、今後のトレンドになるのではないかと思っています。日本国内では原材料の高騰や最近の円安などの多くの要因で自動車の価格が上昇していますが、その価格に見合う付加価値を示さないといけないからです。同じクオリティのものを高い価格で販売しても、ユーザーは戸惑いますからね。

また、ダウンサイジングの意識もこれまで以上に芽生えてくるのではないでしょうか。高齢化社会に進む日本においては、従来の高級車から乗り換えるに相応しい車がより必要になると感じています。その点、レクサスLBXはやはり上手いところを突いたなと思いました。


新型ムラーノ。グリル横桟の延長上にVモーションのシグネチャーランプが品よく収まっている。    日産

2021年にモデルチェンジしたノートは、そんな時代を意識してか、先代のやや丸くボリューム感あるイメージのデザインからシャープで質感の高いデザインに大きく変わりました。さらに派生車であるオーラは、全幅が40mm拡張されてしっかりしたスタンスが感じられるプロポーションになり、まさに『小さな高級車』と言ってよい優れたデザインのクルマです。

マイナーチェンジされたオーラの高級志向は、方向性としてこれからのニーズに合っていると思いますが、もう少し明快に価値を伝えても良いかなとも思いました。

ヘッドライトを変えなかった事でメッセージが曖昧になってしまった印象を受けてしまいますが、この辺りがやはりマイナーチェンジの難しさですね。

先日北米で発表された新型ムラーノを見て、本来やりたかった『デジタルVモーション的高級感』はこのようなクールなものだったのではないか、と感じた次第です。