ドル、予想外に弱い米雇用統計も終盤にかけて買い優勢に ドル円は153円台に戻す=NY為替概況

 きょうのNY為替市場、この日発表の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が1.2万人増と予想外に弱い内容となったことから、発表直後は米国債利回りの急低下と伴にドル売りが強まった。ドル円も151円台に急速に下落する場面も見られたものの、売りが一巡すると買い戻され、終盤にかけて逆にドル買いが強まっている。

 NFPについては、ハリケーンとボーイングのストの影響が出た可能性が高い。通常であればドルにとって大きなダメージとなる報告で、FRBの大幅利下げの可能性も議論されそうなところではあるが、特殊事情ということもあり、市場も今回はやり過ごした模様。エコノミストからは、ハリケーンやスト、そして更なる調整の影響がなくても、10月のNFPは13万人程度だったとの推計も出ていた。

 弱い米雇用統計を受けても、市場は来週のFOMCは0.25%ポイントの利下げで確実視している。「FRBはこの数字に目を通すだろうが、米大統領選の結果の方が遥かに重要であることから、この数字でFRBがシナリオを変えることはない」といったコメントも聞かれた。

 投資家は、来米大統領選の投票を前にリスクヘッジを活発化させていた模様。オプション市場ではドルの変動に対するヘッジ価格が、パンデミックが衝撃を与えていた2020年4月以来の高値に上昇。ドルの1週間物インプライド・ボラティリティは選挙に向けて急上昇している。

 ユーロドルは米雇用統計を受けて一旦1.09ドル台まで買い戻されたものの、1.09ドル台は維持できずに1.08ドル台前半に伸び悩んだ。本日の200日線が1.0870ドル付近に来ているが、その水準を回復できにいる。ユーロドルは10月下旬以降、リバウンド相場の兆候を見せているが、ドル高期待が根強い中で、本格的な動きになるか注目される。いまのところは、200日線を完全回復できるかが目先のポイントとなりそうだ。

 市場ではECBの利下げ期待が高いが、ECBは利下げを前倒しする可能性があるとの指摘も一部から出ている。ECBは来年の夏まで、理事会ごとに利下げを実施する可能性があると述べている。ユーロ圏の景気回復が遅れていることから、ECBは保険領域まで利下げを行う可能性があり、そうなれば、今回の利下げサイクルのターミナルレート(最終到達点)は1.50%まで低下するという。それでも、来年のインフレと成長の予測には大きな不確実性が残るとも付け加えている。

 ポンドドルは一時1.2980ドル付近まで上昇し、100日線に顔合わせする場面も見られたものの、終盤にかけて1.29ドル台前半に下落する展開。今週のリーブス英財務相の秋季予算案を受けて英国債に売りが強まるなど、今週は不安定な動きが見られ、ポンドも売りが強まっていた。週末になってその動きは一服していたものの、ドル高期待も根強い中でリバウンド相場を形成しようという動きまではない。

 一部のエコノミストからは、英中銀は11月に利下げを実施する可能性が高いが、12月は実施しないかもしれないとの見方が出ている。英中銀は11月7日の金融政策委員会(MPC)で0.25%ポイントの利下げを実施し、政策金利を4.75%とするだろう。しかし、今週のリーブス英財務相の予算案で公共投資拡大がコミットされたことから、12月の追加利下げの可能性は低そうだという。

 英中銀の委員の中には、政府の追加支出がインフレを高めるのではないかと懸念している者もいると語った。短期金融市場では12月末までに計0.30%ポイント利下げを織り込んでいる。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美