ドラゴンクエストシリーズ関連の展示が並ぶ東京ゲームショウのブース=2023年9月22日、千葉市の幕張メッセ、田中奏子撮影

写真拡大

 来月14日に発売予定のロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)のリメイク版ソフトで、キャラクターの性別表記がなくなることが公表され、ファンの間で論争が起きている。

【画像】主人公の「男、女」は「タイプ1、タイプ2」に

 「最近は性別選択がないゲームが主流。名作ゲームも、多様な性のあり方に合わせて変わった方がいい」

 「ドラクエ界にもポリコレが来た。配慮しすぎると、原作のイメージが壊れてしまうのでは」

 SNS上でそんな賛否の的となったのは、1988年のファミリーコンピュータ用ソフト「ドラゴンクエスト? そして伝説へ…」のリメイク版。公式サイトの情報によると、主人公と仲間たちの「男」「女」という原作の表記がなくなり、「ルックスA」「ルックスB」に変更される。また、原作では「男」なら「むっつりスケベ」、「女」なら「セクシーギャル」というように、男女固有の「性格」などがあったが、今回の変更にともない、すべて共通になる見込みだ。性別表記の廃止自体はシリーズ初ではないが、今回は原作があるだけに、昔のイメージにこだわるファンも多かったようだ。

 論争の発端は、ドラクエ生みの親であるゲームデザイナー堀井雄二さんの発言。9月末の東京ゲームショウ内の対談で、今回の変更をめぐり「男女でいったい誰が文句を言うんだろう」と疑問を呈した。この対談の動画は非公式に英訳字幕がつけられ、X(旧Twitter)の英語圏でも拡散。Xのオーナーであるイーロン・マスク氏がこの投稿をリポストする事態にまで発展した。

■「多様なゲームユーザーの声を」

 今回の変更について、ドラクエシリーズを手がけているスクウェア・エニックスに取材を申し込んだが、辞退する旨の回答があった。ただ、背景には、2010年代以降に広がる多様性推進の動きがあるのは確かだ。近年、ドラクエに限らず、ポケットモンスターなど多くの人気ゲームで性別表記が廃止されている。

 性的マイノリティーの情報を発信する一般社団法人「fair」代表理事の松岡宗嗣さんは「男女の二者択一は、現実社会の多様な性のあり方を反映できていない」と指摘した上で、男女表記の廃止だけにとどまらず、キャラクターの選択肢を多様化していく必要があると訴える。「特にトランスジェンダーやノンバイナリーの人々のためにも、ジェンダーなどに関するステレオタイプを強化しないためにも、キャラの外見の種類などをできるだけ増やしてほしい」と語る。(小川尭洋)