「液状化」で大阪府の建物「7万1091棟」が全壊するという「あまりに衝撃的な予測」

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脆弱地盤の液状化

大阪府の被害想定では、建物全壊は全体で17万9153棟だが、そのうち一番多いのが液状化によるもので7万1091棟と推計されている。半壊を入れると液状化による建物の全半壊は25万2657棟に上ると想定されている。大阪府の液状化被害がいかに大きいかがわかる。それだけ、大阪府には沖積低地や埋め立てなどによる脆弱地盤が多いということでもある。

液状化については、名古屋の項でも述べたが再掲すると、「液状化現象とは、地震の震動で個体であるはずの地盤が液体状になる現象。液状化は、主に同じ成分や同じ大きさの砂層からなる地盤が、地下水で満たされバランスを保っている場合に地震が発生すると、液状化現象が起きやすい。地震の振動によって、地下水の圧力が高くなり、砂の粒子同士の結びつきが弱まって地下水に浮いたような状態になる。その際、押し出された水が砂とともに地表に溢れ出し、地盤そのものが液体のようになる現象を『液状化現象』と呼んでいる」。

液状化が発生する条件は、(1)砂地盤であること(2)地下水が存在すること(3)地盤が占め固まってない、ゆるい砂、密な砂であること(4)砂の粒径がそろっていること(5)繰り返しの地震(揺れ・せん断力)を受けること。とされている。

液状化に見舞われると、地質・地盤・地形・地下水位などによって異なるが、一般的に重いものが沈下し、軽いものが浮き上がる傾向にある。噴砂による車両の埋没、建物の不同沈下(傾き)、電柱の倒壊、マンホールなどの軽い構築物が浮き上がり、道路と橋との取り付け部に大きな段差、深く杭を打った建物と道路との段差、マンホールや暗渠などの砂詰まり、下水管などの埋設物の浮き上がりや配管損傷など、液状化によって多様な地盤災害が生じる。重い建物ほど液状化で沈下しやすく、重い方(部分)が沈むことで建物が傾いてしまう。とくに戸建て住宅では、建物が損壊しなくても、少しでも床が傾いてしまうと、生活しているうちに健康を害することが多いため、そこに住み続けるのが困難になる。

液状化を防ぐには、建築士会、建築士事務所協会、地質調査業協会、自治体の土木課か建築課などに相談し調査を実施。液状化の危険があると判定された場合、主に次のような対策がある。「(1)地盤の転圧(地盤を締め固めること)、(2)支持層まで杭を打って建物を支えること、(3)地盤改良(流動化処理工法など)、(4)地中壁で敷地を囲い、地盤の揺れや側方流動を抑制する」など、いずれにしても、自治体が公開している「液状化危険度マップ」で確認し、危険度が高い地域にお住まいであれば、早めに前述の専門家に相談することをお勧めする。

大阪府面積の大部分を占めているのが、山地に囲まれ大阪湾に面した大阪平野で、かつては海だった河内湾が陸化したもので、淀川や大和川などが運んだ堆積物で形成された沖積低地。大阪湾の沿岸地域は昔から埋立て事業を進めてきた地域だ。埋め立て地が多い大阪は以前から液状化が懸念されてきた。国の被害想定でも大阪市から堺市にかけての湾岸部は液状化のリスクが高い地域とされ、大阪府の「液状化可能性マップ」でも大阪湾岸、淀川流域、大阪市域が液状化の可能性の高いエリアとされ、真っ赤に塗られている。大阪市にお住まいの方は「南海トラフ巨大地震による液状化予測図」で自分の居住地域を見てほしい。市域面積の約80%が液状化の危険度の極めて高い地域と予測されている。これまで液状化が起きた地域での人的被害は少ないが、下水配管の損傷などライフライン被害や道路や建物の傾動などが発生し、長期にわたり生活に深刻な影響を与える。

東日本大震災の時、震源から遠く離れた関東地方など13都県の広域で液状化が発生した。千葉県浦安市など東京湾岸地域だけでなく、内陸部でも利根川流域の千葉県我孫子市のJR成田線布佐駅付近で顕著な液状化現象が起きていた。液状化の多くが噴砂、電柱・ブロック塀・家屋の傾倒・沈下、地波現象(道路の波打ち)、埋設物(マンホール、上下水道、側溝)の浮き上がりや沈下、砂詰まりなどが発生する。中には液状化で隣家との境界杭が移動し、境界確定の話し合いに時間がかかった場合もある。下水管の損壊は損壊カ所だけでなく、一帯の配管・集合マス・側溝・マンホールなどの排水システム全体の設計や計画に係るので、復旧に長時間かかることが多い。

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