多くの小選挙区が、まれに見る与野党の接戦となっている。

 有権者の選択が政権の枠組みを左右する、かつてない重い1票となる。

 第50回衆院選は、きょう投票日を迎えた。3年ぶりとなる政権選択の選挙は、自民、公明の与党を信任するのか、それとも、立憲民主党など野党に政局の主導権を委ねるのかが焦点だ。

 自民党は2012年の衆院選以降、国政選挙で8連勝し、「1強」の地位を保ってきた。だが、今回は政治とカネの問題などで逆風を受け、苦戦を強いられた。

 一方、野党は多くの選挙区で競合したが、立民や国民民主党は議席を上積みするとみられている。与野党が伯仲する可能性がある。

 石破首相は、内閣の発足から8日後に衆院を解散し、26日後を投開票日と決めた。いずれも現行憲法下では最短の日程だ。

 このため自治体の準備が間に合わず、「入場券」の発送が遅れるケースが相次いだ。その結果、総務省によると、20日までの期日前投票の利用者数は467万人で、前回衆院選の同時期に比べて2割程度減少した。

 選挙を急いだことが、投票に悪影響を与えたとしたら問題だ。

 衆院選の投票率はかつて70%前後あったが、12年以降は4回連続で50%台に低迷している。有権者の半数近くが棄権しては、民主主義の根幹が揺らぎかねない。

 特に20代、30代の若い世代の投票率の低さは深刻だ。前回衆院選では20代が36・5%、30代が47・13%にとどまった。

 少子化対策を含む社会保障政策や税制を政治がどう改めるかで、若い世代の暮らしや将来の負担は大きく変わるはずだ。選挙での意思表示を軽視してはならない。

 今回の選挙戦では、政治とカネの問題が大きな争点となった。

 自民党は公示の前、公認候補が代表を務める党支部に対し、税金が原資の政党交付金から500万円の「公認料」と、1500万円の「活動費」を支給した。

 ただその後、政治資金問題を理由に非公認とした候補者の支部にも「党勢拡大のための活動費」として2000万円を出したため、野党は「非公認というけじめは見かけ倒しだ」と批判を強めた。

 自民は、非公認候補が資金を選挙に使うことはない、と反論したが、選挙中に公認と同額を支給していては、有権者の理解を得るのは容易ではなかろう。