おすぎさん(左)とピーコさん(C)日刊ゲンダイ

写真拡大

【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】

芸能リポーターが明かす「ピーコさんの人情」…辛口コメントの裏には弱者に対しての深い愛情が

 双子タレント「おすぎピーコ」のピーコさん(享年79)が亡くなっていた。最近は仕事が減っていたこともあって、3年ほど前に個人事務所を閉鎖。連絡が取りにくい状況になっていた。本人は認知症が出ていると自覚して昨年の夏から高齢者施設に入居していた。その後、今年8月に体調を崩し、神奈川県内の病院で9月に帰らぬ人となった。

 僕はピーコさんにはあまりお目にかかったことはないが、弟のおすぎさんとは一緒に酒を飲んだことがある。

 ちょうど彼が福岡県に拠点を移し、福岡ローカルの仕事を中心に活動していた頃だ。僕が出張で宿泊していたホテルのバーで飲んでいたら、おすぎさんが僕を見かけ「あら、リポーターの人じゃない」と声をかけてきた。

 僕が「昔、コメントをもらったことがありますよ」と言うと、「覚えてないわぁ」といった、たわいない会話から始まった。

 その際、「ずっと福岡で暮らしたい」と真剣に語っていたことが印象に残った。残念ながら、おすぎさんはピーコさんより早く認知症を患っていて、ずっと神奈川県の高齢者施設に入っている。今回のピーコさんの葬儀にも参列することができなかった。

 そんなおすぎさんは福岡での生活を「おいしい。暮らしやすい。楽しい」と言っていたが、昨今は地方での生活を選ぶ俳優、タレントが増えてきている。現在、公開中の映画「室井慎次 敗れざる者」に主演している柳葉敏郎(63)はその代表格だろう。子供の教育環境を考え、早くから故郷の秋田に戻り、仕事のたびに上京したりする出稼ぎを続けている。また、杉田かおる(59)は体調を壊したころから福岡に移住していた時期があった。そこで母親と一緒にオーガニック野菜を作り、仕事が入るとこれまた出稼ぎに来る。母親の介護の後、今は再婚した夫と神奈川県内で暮らしている。

 さらに、お笑いタレントの井手らっきょ(64)は故郷の熊本で野球学校を開設したりしていたが、数年前には完全に熊本在住となり、地元や大分県のローカル番組を中心に活動している。

 芸能人は自由な時間を多く持つことができる。自分のスタイルで暮らしたい場所に移り、そこを拠点に活躍するというスタイルは今後も広まるだろう。

 横浜に生まれ、都会で生活してきたおすぎさんが、一時的にでも自分の安住の地を見つけられたことは幸せだ。これからもピーコさんの分も長生きしてほしい。

(城下尊之/芸能ジャーナリスト)