司法書士を選ぶ際のポイントや探し方について解説します (c)Getty Images

司法書士は不動産登記に加え、会社や法人登記の代理申請、裁判所に提出する書類の作成、訴訟代理、成年後見など、幅広く身近な法律問題に対応してくれる存在です。では、実際に司法書士に相談や依頼をしたい場合には、どのような基準で選べばよいのでしょうか。司法書士がいくつかの項目に分けてポイントを解説します。

1. 司法書士とは

司法書士は、登記業務を中心とする法律の専門家です。相続や売買による不動産の名義変更や、会社や法人に関する登記などを行う際に、法律の規定に基づき書類を作成して登記申請を代理できます。

また、認知症などで判断能力が低下した人を支援する成年後見業務や、法務局とやりとりする供託業務にも従事できます。特別な研修を受けて認定考査に合格した認定司法書士であれば、簡易裁判所において訴額140万円以下に限って訴訟代理を行うことも可能です。このように、司法書士は幅広く身近な法律問題に対応しています。

2. 司法書士を探す前に決めておくこと

司法書士に相談する前に、相談したい内容や理想とする結果を明確にしておくとよいでしょう。

ただし、相談内容によっては、解決に至る選択肢自体がわからないケースもあるでしょう。その場合は、司法書士にいくつかの方法を提示してもらい、それぞれのメリットとデメリットを聞いたうえで、司法書士のアドバイスのもとに決定するのがお勧めです。

いずれにしても、相談したい内容が具体的かつ明確に伝わるように、相談内容に関する資料や質問事項をまとめたメモなどを用意しておきましょう。

3. 司法書士の選び方のポイント

相談したい内容が固まったあと、実際に相談する司法書士を探します。司法書士を探す際のポイントは主に以下の7点です。

相談したい分野の経験が豊富かどうか

親身に話を聞き、丁寧な説明と的確なアドバイスをしてくれるかどうか

対応が早いかどうか

足を運びやすい立地に事務所があるかどうか

土日祝日や夜にも対応してくれるかどうか

料金体系がわかりやすくリーズナブルかどうか

弁護士や税理士と連携しているかどうか

3-1. 相談したい分野の経験が豊富かどうか

司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除き、正当な理由なく依頼を断ってはいけないと法律で決められています。そのため、相続登記などの依頼はすべての司法書士が対応できる前提となっています。それでも、すべての事務所が相続の手続きを得意としているわけではありません。

なかには相続分野の案件をあまり受託したことがない事務所もあります。ホームページの内容を確認したり、実際に電話やメールで問い合わせをしたりして、経験豊富な事務所に相談予約をしましょう。

3-2. 親身に話を聞き、丁寧な説明と的確なアドバイスをしてくれるかどうか

相談に行き、実際に依頼するかどうかを決める際に重視すべき点は、相談者の話をしっかり聞いてくれるかどうかです。なかには最初から主導権を握り、法律知識を駆使して話を進めようとする司法書士もいます。わかりやすい言葉を使い、相談者目線に立って話を聞いてくれるかどうかを見るようにしてください。

そのうえで、相性や話しやすさ、質問のしやすさ、説明の丁寧さなど、相談のなかで前向きに感じたものを重視してください。

3-3. 対応が早いかどうか

不動産の名義変更手続きの場合、どの司法書士に登記申請を依頼しても、登記記録に記載される内容は同じです。

だからこそ、話しやすい、信頼できるといった要素に加えて、いかにスピーディーに対応してもらえるか、こちらの連絡や要望に素早く対応してもらえるかといった要素は、司法書士を選ぶうえで重要なポイントです。相談予約や問い合わせをした際の対応スピードも一つの指針になります。

3-4. 足を運びやすい立地に事務所があるかどうか

一般的には、司法書士に依頼する前に直接会って相談し、その後は電話やメール、郵便などでやりとりをするケースが多いです。

最近ではリモート相談に対応している司法書士事務所もありますが、できれば一度は司法書士と直接、対面して相談するのがよいでしょう。人柄や雰囲気など、実際に会ってみないとわからない部分もあるためです。その意味では、自宅や勤務先から行きやすい場所にある事務所を探すのもポイントの一つです。

3-5. 土日祝日や夜にも対応してくれるかどうか

司法書士事務所の多くは、土日祝日を休業日としています。また、18時ごろに営業を終了する事務所も多く、いわゆるビジネスタイムに働いている人にとっては訪問するのが難しい場合があります。

しかし、司法書士事務所のホームページに記載されている営業時間の項目を見ると、土日祝日を休みとしつつも「ご希望があれば対応します」としている事務所もあります。希望の日時に相談に応じてもらえるか、電話やメールなどで問い合わせてみるとよいでしょう。

3-6. 料金体系がわかりやすくリーズナブルかどうか

司法書士の報酬は法律などで決められた一律の基準はなく、それぞれの事務所が自由に報酬基準を定めています。とはいえ、おおよその相場はあるため、事務所によって大幅に変わることはそう多くありません。

ただし、最初の段階で見積もりを提示してもらえるかどうかは、依頼をするうえで重要です。相談の段階でできるだけ具体的な資料を持参し、正確な見積もりを出してもらうようにしましょう。

3-7. 弁護士や税理士と連携しているかどうか

相続の相談の場合、司法書士だけで完結するケースばかりではありません。遺産分割の話し合いがまとまらない場合や相続争いがある場合には、弁護士の力が必要です。また、遺産総額がある程度大きく、相続税の申告が必要となる場合には税理士の力が必要となります。

このような場合に、それぞれの専門家を自分で探すよりも、依頼した司法書士から関係性のある専門家に話をつないでもらうほうが、相続手続きをスムーズに進められます。

遺産分割がまとまらないケースや、相続税の申告が必要などの課題が最初から明らかなケースでは、司法書士に相談する際にそれぞれの専門家につないでもらえるかを確認をしておくとよいでしょう。

4. 司法書士の探し方

実際に相談や依頼をする司法書士の探し方には、主に以下の6つの方法が考えられます。

ホームページやSNSから探す

司法書士ポータルサイトを活用する

知人や友人に紹介してもらう

司法書士会に問い合わせる

法テラスを利用する

無料相談を活用し、複数の事務所に足を運ぶ

4-1. ホームページやSNSから探す

ホームページを開設している司法書士事務所は多くあります。ほとんどのホームページに取り扱い業務や報酬、司法書士の紹介が記載されているため、おおよその雰囲気をつかむことができます。また、Instagram(インスタグラム)やブログなどで情報発信をしている事務所もあるため、それらも参考にするとよいでしょう。

4-2. 司法書士ポータルサイトを活用する

「相続会議」などのポータルサイトには相続に強い司法書士事務所が多数登録されています。「相続会議」はエリアや相談内容ごとに検索できるため、自分に合った司法書士事務所を簡単に見つけることができます。簡単に自宅近くの相続に強い司法書士を探したい場合は、このようなポータルサイトを利用するのもよいでしょう。

4-3. 知人や友人に紹介してもらう

過去に司法書士に依頼した経験を持つ知人や友人がいる場合は、依頼した感想を聞いてみて、場合によっては紹介してもらうのもよいでしょう。司法書士への依頼を経験した人の生の声ですので、かなり信憑性の高い情報であることは間違いありません。

4-4. 司法書士会に問い合わせる

各都道府県には司法書士が会員として所属する司法書士会が設置されています。電話やメールなどで司法書士会に直接問い合わせて、取扱分野や性別、場所など、自分の希望する条件に合う司法書士を紹介してもらう方法もあります。

ただし、司法書士会がすべての司法書士の特徴までを把握しているわけではありません。司法書士会のホームページにある会員検索ページから自分で検索するのと、得られる情報量はあまり変わらないかもしれません。

4-5. 法テラスを利用する

日本司法支援センター法テラスとは、国が設立した法的トラブルの総合案内所です。支援を受けるには資産や収入に関する条件があるため、すべての人が対象となるわけではありませんが、条件を満たしていれば弁護士や司法書士への無料法律相談ができます。

また、実際に依頼する場合には、法テラスが司法書士への報酬を立て替えてくれるため、依頼費用の捻出が難しい場合でも法的サービスが受けられます。法テラスには分割で立替金を支払っていくかたちになり、生活保護受給者には免除制度もあります。

ただし、法テラスは司法書士に依頼できる内容のすべてを支援してもらえるわけではありません。相続登記の依頼などは援助の対象外ですので注意が必要です。

報酬の支払いに不安がある場合は、自分が抱える問題が援助の対象となるか、一度法テラスに問い合わせてみるとよいでしょう。

【関連】法テラスとは? 無料相談の条件 相続について相談できること

4-6. 無料相談を活用し、複数の事務所に足を運ぶ

司法書士事務所では、初回の相談を無料としている場合が多いため、まずは事務所に直接電話やメールをして相談予約をしてみるのも一つの方法です。

また、司法書士会や自治体が主催する各地の無料法律相談を利用して、実際に司法書士と対面で話をしてみるのもよいでしょう。

5. 司法書士の選び方で後悔しないための注意点

司法書士を選ぶ際は、主に以下の4点を意識することも大切です。

5-1. 中小規模の事務所も検討する

大規模な事務所であれば、同じ事務所内であっても資格者ごとに経験や知識、力量に大きな差がある場合があります。そのため、ホームページを確認し、内容に納得したうえで訪問しても、実際に話を聞いてみると期待したほど頼りがいがないケースもあります。その場合は、経験豊富なベテランが中心となって対応してくれる小さな事務所を探すのも一つの方法です。

5-2. 口コミやレビューを確認する

司法書士事務所の口コミやレビューが確認できるのであれば、それらを参考にするのもよいでしょう。ただし、どんな司法書士であっても、すべての人の好みに合うのは難しいと考えられます。口コミやレビューは個人の主観にすぎないため、あくまで参考程度にとどめ、実際に会って話を聞いた際の感触を大切にすることをお勧めします。

5-3. 費用の安さだけを選考基準にしない

ホームページで確認できる報酬額は、報酬の総額が記載されているものばかりではありません。

たとえば「相続登記4万円」と書かれていても、それは申請代理分の報酬であり、通常は遺産分割協議書作成報酬や戸籍謄本の取り寄せ代行報酬などが加算されます。4万円だけ払えばいいと思っていたら、最終的な報酬は10万円を超えてしまったというケースもあります。

また、総額が安く設定されていても、報酬額だけを見てすぐに依頼をするのは避けたほうが良いと言えます。いくら安くても対応が遅かったり、仕事が雑だったりしたら元も子もありません。しっかりと話を聞いて相性や説明のわかりやすさなどを確認し、費用を含めて総合的に判断することをお勧めします。複数の事務所で相見積もりをとって比較するのもよいでしょう。

5-4. 相談内容と司法書士の対応業務が一致しているかを確認する

自分が抱えている問題と事務所の得意分野が一致しているかどうかも、問い合わせ段階で確認しておきましょう。

たとえば相続分野で言えば、司法書士が取り扱うのが最も多いのが相続登記です。次に、相続放棄の書類作成など、裁判所に提出する書類の作成業務があります。そのほかにも、相続財産となっている預貯金などを相続人に承継させる手続きの代行業務、遺言作成の援助業務などがあります。どの事務所でも比較的よく対応している業務もあれば、ほとんど経験がない業務もあります。

6. 司法書士の選び方でよくある質問

Q. 司法書士に依頼した場合の費用はいくらかかる?

相続分野の報酬については、依頼する内容によっても変わりますし、事務所によっても多少変わります。代表的な相続登記の報酬相場は、複雑なケースでなければおおよそ10万円前後に収まることが多く、それ以外に登録免許税やその他の実費がかかります。

Q. 司法書士に依頼を断られることはある?

司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除いて、正当な理由がない限り依頼を断ることができないと法律で定められています。正当な理由としては、病気、事故、業務多忙のため依頼を遂行することが困難な場合などが挙げられます。そのため、相続登記などの依頼は、恣意的に断られることはありません。

7. まとめ|司法書士を探す際はポータルサイトの検索サービスも視野に入れて

司法書士に相談や依頼をする際は、相談したい分野に精通しているかどうか、親身になって丁寧かつスピーディーに対応してくれるかどうか、弁護士や税理士と連携しているかなどのポイントを基準に選ぶことが大切です。

また、司法書士の探し方には司法書士事務所のホームページやSNSを参考にする方法や、実際に依頼したことのある友人、知人から情報を得る方法、司法書士会や法テラスに問い合わせる方法などがあります。

まずはこれらのポイントに沿って無料相談を通して実際に司法書士に会い、自分でさまざまな面を確認したうえで、信頼して任せられると思える人に依頼しましょう。

迷ったら、「相続会議」のようなポータルサイトを利用して、相談してみたい司法書士を探すのも一つの方法です。

(記事は2024年9月1日時点の情報に基づいています)